2人の悪魔と女郎蜘蛛
ルーンは女郎蜘蛛との距離がかなり近かったため、反応が遅れてしまった。
(やばい、避けられない…)
「【ソニックショット】」
「ぐっ…」
「相手はそっちだけじゃないよ。女郎蜘蛛さん」
ルーンの脚を狙っていた女郎蜘蛛の動作を確認できたチェインは自身の武器を弓矢に変え、女郎蜘蛛の腕を矢で貫き、動きを止めた。
「こっちにもいるよ!【ホーリーランス】」
リリスは動きを止めた一瞬を見逃さず、女郎蜘蛛を三ツ又の槍で貫こうとしたが、ギリギリで回避された。
「ありがとうございます。チェインさん、リリス」
「うぐっ…これは数的不利というやつか。そちたちは妾に食われることが嫌なようだな」
「当たり前でしょ!そんなこと」
「なら、こうするしかないようね」
女郎蜘蛛はそう言うと、蜘蛛の脚のような腕を人間のものに戻し、口から糸を出しあやとりのように蜘蛛の巣を作り、シルクの方に投げつけた。
「なっ、うっ…!」
「し、シルク大丈夫?」
シルクは女郎蜘蛛に投げつけられた蜘蛛の巣に当たってしまい、壁に張りつけの状態になってしまった。
「大丈夫、大丈夫。ルーン、これ斬って」
「わかった。チェインさん、リリス、女郎蜘蛛のヘイト一瞬だけ集めて!」
「りょ、了解です【黒翼】【ブラッティランス】」
「ふっ、これくらい避けるなんて造作もないわ」
女郎蜘蛛はリリスの攻撃をバックステップでかわすが、リリスのニヤッと笑った顔が見え、嫌な予感がした。
「【フレンドリーコピー】【ブラッティランス】」
「グハッ…!」
女郎蜘蛛の避けた先ではあらかじめ回りこんでいたチェインが弓矢をリリスの槍に変化させて胸元を貫いた。
「リリス、離れて!」
「了解!あとは任せた!」
「な、何をする!」
「こうするんだよ。【武器変化:ダイナマイト】【ファイヤーボール】」
チェインは女郎蜘蛛の胸元を貫いていた槍をダイナマイトに変化させ身体に埋め込んだ状況にすると、ダイナマイトの導火線に火をつけた。
「こ、これは…」
「じゃあ、俺はこれで。生きてたら相手してやるよ」
「イヤァァァ!」
チェインは導火線が無くなる前に女郎蜘蛛から離れ、爆発に巻き込まれないように退避した。そしてチェインが爆風のとどく範囲から離れた瞬間、女郎蜘蛛の身体のなかにあるダイナマイトは爆発した。
「しっかし、チェインもヤバイ殺し方するよねぇ。これじゃあ、どっちが悪魔かわからないじゃない」
「まぁ、そうかもね」
チェインとリリスが軽口で話していると、シルクの蜘蛛の巣を処理しているルーンが焦ったように大声で助けを求めてきた。
「チェインさん、大変です!シルクを張りつけにしている蜘蛛の巣が切れないんです。魔法で焼き切ってください」
「わかった!【ファイヤーボール】」
チェインの放った魔法は蜘蛛の巣を焼き切ることなく、シルクのローブに吸収された。
「あっ、そういえばここに来るとき正面の蜘蛛の巣を焼き切るために火属性魔法つかっちゃってた」
「もぅ、シルク何やってくれてるの!」
「しょ、しょうがないでしょ」
「ふっ、妾の糸がそのような小さな炎の玉で消えることなどないわ」
爆発でやられたはずの女郎蜘蛛は自慢気に話しながらチェインの目の前に現れた。




