幻の満月
2人が別行動して、一晩があけて2人は揃ってエイルの店に向かっていた。
「あっそういえばエイルさんに昨日会ったんだよ」
「えっ昨日はいないって…」
「何か焦って森の方にいってたんだよ」
2人はそれぞれが昨日起こったことを話しながらエイルのお店に入っていた。
「あっ、2人ともおはよう」
「おはようございます。エイルさん昨日は…」
シルクが言いかけたとき、エイルは思い出したように話し始めた。
「2人には話すけどここからのことはくれぐれも内緒に…」
「えっはい。何ですか」
エイルは2人にささやくような小声で続きを喋り出した。
「昨日シルクちゃんがやられたガイコツって言うのは死神っていう敵で厄介なやつらしいんだよ」
「どういうことですか?」
「まず死神はどこのマップにも現れる。そして、死神の強さはどこでも統一されていてその基準としてこのゲーム最高レベルのプレイヤーと同等のレベルになる」
「えっ、つまり…それって…」
シルクとルーンは何かを察したかのように、言葉をつまらせた。
「うん。殆どのプレイヤーはまずソロでは勝てないし、一撃与えるのも難しい。実際僕もHPの7割は削れたけど結局勝てなかったしね。」
「えっそれであの時、森に向かってたんですか」
シルクは今までの話に合点がいったのか話を先読みするように質問をした。
「まぁ、そんなところだよ。でも僕が着いた頃には仲間が死神を倒してたんだけどね」
「その人もエイルさんと同じトッププレイヤーなんですか」
「いいや、昨日始めた2人より多分年齢の低い僕の姪っ子だよ」
2人はその事実を聞いて驚き、声が一瞬でなかったがルーンは1つ質問をした。
「じゃあ、その姪っ子さんは今どこに…」
「ゲームにはログインしてるけど今日は見てないよ。あっ、そういえばシルクちゃんはクエストのクリア報告しなくて良いの?」
「あっ、確かに。でもその前に【霊木の木材】です。これで杖を作ってください」
そう言って、シルクはエイルに杖が作れる数の【霊木の木材】をアイテムボックスからとりだしてわたした。
「ルーンも行こうよ。昨日は一緒に行動できなかったし」
「いいよ。今日の午前中はシルクと一緒にどこか行こうと思ってたし」
2人はさっそく森に行くために開店前のエイルのお店を出て町で少しアイテムを買うことにした。
2人はアイテムショップでポーションなどを買い、森に行く道で話しながら歩いていると、シルクがふとあることを思い出した。
「そういえばルーン、昨日の夜に送ってきてた写真なんだけど…あれってなんなの?」
「何なのって、どこからどう見てもキレイな満月じゃん」
「満月ってどれのこと?」
シルクの疑問形の返答にルーンは戸惑いながらも、シルクがからかっているのだと思い話を続けた。
「ほら、ど真ん中に満月があるじゃん」
「えっ、本当にどれ?」
そう言って、シルクはルーンが送った写真を見せるとその写真のなかには満月なんて無く、ただ暗い夜空が広がっていた。
「えっ、何で?確かに昨日はキレイな満月が出てて、それを撮ってシルクに送ったはず…」
そう言いながらルーンは保存してある写真を見返していくがどれ1つとして満月は写っていなかった。
「ルーン、疲れてて幻覚でも見てたんじゃないの」
「えっ、そんなはずはないのに…」
ルーンが写真に写っていない満月に戸惑っていると、すぐに賢者の小屋に着いた。




