一直線
ルーンとシルクが蜘蛛の糸を処理してシュウの方に向かうと蜘蛛は一匹も残ってなかった。
「シュウさん、モンスターは…」
「あぁ、もう全部倒した。とりあえず、ブロンズコイン2枚ドロップしたから、ほら」
シュウはそう言うと2人に1枚ずつ今手に入れたブロンズコインを渡した。
「もらっていいんですか?って、それ以前にコインの譲渡って不可能でしたよね」
「どうしてかは知らないけどブロンズは譲渡不可って表示が無かったからな。おおかたバグか手に入りすぎるから直前に仕様変更されたかだな」
「私は後者の方が合っていると思いますけど」
「まぁ、それは置いといてここからたくさん蜘蛛が出てくるから気をつけろよ」
シュウがそう言うと前からカサカサという音が聞こえくると、さらに蜘蛛が向かってきた。
「ルーン、さっそく前から蜘蛛来たよ」
「うん、わかってる!アイテム【火炎ビン】」
ルーンはアイテムボックスから【火炎ビン】を出して投げると、目の前の蜘蛛が大炎上した。
「うわっ、何だよこれ。リーダー、【火炎ビン】みたいなアイテムどこで手に入れたんだよ」
「えっ、エイルさんになにか投擲できるアイテムないかって言ったら作ってくれたんですよ」
「エイルさんに言えばアイテムや装備なら結構なんでも作ってくれますよ」
「へぇー、じゃあ俺も剣を作り変えてもらうかな。そろそろこの剣もレベルに合わなくなってきたし。それよりも今日のメインはボス部屋だから早く行くぞ」
シュウに言われシルクは箒を出し久々に杖からグローブに装備を変えた。
「シュウさん、後ろに乗ってください。一応これ2人乗りなので。あと、直線に進めば良いんですよね」
「えっ、あっ、うん」
「じゃあ、ルーン行くよ!」
「オッケー!【加速】」
シルクの合図でルーンは【加速】で上げたAGIで走り、シルクは後ろにシュウを乗せて箒で直進した。
「うぁぁぁーー!何この速さ!落ちる、落ちる!」
「我慢してください。まぁ、この箒の速さはINT依存なので今の私だと結構速いですよね」
「大丈夫ですよ。シュウさんのVITなら1メートルも浮いてない箒から落ちてもノーダメージですから」
「いや、そう言うことじゃなくて!」
ルーンとシルクが一直線に走りながら蜘蛛を牽制して進み、3分後にはボス部屋の安全地帯に着いた。
「はぁはぁ、気持ち悪…うっ…」
「だ、大丈夫ですかシュウさん」
「いや、うん大丈夫。昔から乗り物酔いが酷かったから反射的に気持ち悪くなっちゃっただけだから」
シュウはそう言うと自分の顔をぺちぺち叩き、気合いを入れ直すような動作をした。
「よし、じゃあここのボスについて説明するけどまず覚えていてほしいのはボスには攻撃をするな」
「えっ、それってどういうことですか?攻撃しなきゃ倒せないじゃないですか」
「たしかにそうだが俺たちはここにコイン狩りに来たんだろ。なら、なんでわざわざ道中の雑魚無視してボス部屋に来たと思う?」
「もしかして雑魚を召還してくれるボスですか?」
シルクがそう言うとルーンも納得したような表情して、同時にシュウの方を見た。
「あぁ、その通りだ。ここのボスは雑魚を3体ずつ召還して3体倒すとさらに3体雑魚を召還するの繰り返しになるんだよ」
「なるほど、だから召還元のボスを攻撃しちゃいけないってことなんですね」
「そうだな。じゃあ、ボス部屋に入るぞ!」
シュウはそう言ってボス部屋の大きな扉を開くと【月狼の洞窟】のボス部屋のような空間に一匹の大きな紫色のボス蜘蛛がいた。




