1つの家族
ルーンはフィアの少し長い昔話を聞きながら、アイスティーを飲んでいた。
「それでフィアさんは責任をとるために、親代わりになるために私のクランに入ったってことですか?」
「確かにそれもあるけど、結局一番は血のつながりが無くても、戸籍上のつながりが無くなっても私の大切な姪っ子と仲良くしたかったからかな」
「ふーん、そうですか~」
ルーンは窓の外に目をそらしながら照れ隠しをするように呟いた。
「う~ん、私が質問してたのになんだかんだで私の心境まで語っちゃったね」
「そう言えばそうでしたね」
「だから、ルーンちゃんもなにか質問してよ」
「フィアさんがそう言うなら…あっ、じゃあなんで魔法使いになったのか教えてください。フィアさんならフェンシングみたいな細剣とかそれでなくても近接武器の方でも活躍できるだろうし…」
ルーンは頭に浮かんだふとした疑問、というかフィアという人物を知っている人なら当然の疑問だった。
「それはアニにも言われたけど、もちろんゲーム始めてすぐは近接武器、特にルーンちゃんも言ったように細剣を使うことの方が多かったけど、今では他のゲームでも弓とか杖とか大剣とか色々と使うよ」
「へぇー、でも細剣使った方がフィアさんは100%の力で戦えるんじゃないんですか?」
「そうかもね。でも、細剣を使っちゃうとあまりにもヌルゲーになっちゃうゲームとかもあったから。私は勝つよりも楽しみたい、いわゆるエンジョイ勢だよ」
「えっ、えぇ…」
ルーンはこのゲームのトッププレイヤーがただのエンジョイ勢気分でプレイしてることに少しひきつつも、なんだかそれがフィアらしいとも思えた。
「まぁ、いいや。そんなことよりそこで盗み聞き、しながら泣いてる人たちも出てきたら?」
「そういえば始めの方からいましたね。私の後ろのテーブルに座ってる団体さんたち」
フィアとルーンの後ろのテーブルにはバレないように盗み聞きしていたシルクや他のクランメンバーもいた。
「あーあ、バレちゃってたか」
「さすがルーンとフィアさんって言うべきか…。バレないっておもってたんだけどなぁ」
エイルとシルクはそう言いながら変装していたのかサングラスとマスクを取った。
「それくらい私たちじゃなくてもわかるよ。っていうか、なんでアニは泣いてるの?」
「うっ…うっ…ぜんぱいが…ぞんなにっ…ヅラい思いをじでるなんで…じらながったがら…ボク…」
「いやいや、別に私の方はもうそこまで思いつめてないから。大丈夫だから」
泣いているアニをなだめるフィアを横目に今度はルーンにアヤメが話しかけてきた。
「まぁ、私はルーン先輩がどうしてもクランを作りたかった理由が聞けてよかったですよ」
「そう?なんか変だなとか思わなかった?」
「いや、リーダーの過去にそんなことがあったらそう思うのも無理ないと思うぞ。ここにいるメンバーは別にこのクランを作った理由がそれでも気にしないだろうしな」
「じゃあ、クランとして家族として私たちはいつでも1つってことで!」
ルーンがそう言うと他のクランメンバーも笑いながらそれに応じてくれた。




