過去の出来事2
今から約1年前の出来事、それは私にとってそして両親や祖父母を失った奈月ちゃんにとってツラいものだった。
私、氷上清香いや、雪村清香はその日愛する夫を玄関まで送ると、すぐにゲームの世界に飛び込んだ。
元々はフェンシングでゆくゆくはプロになるとまで注目されていた私だが、高校2年生のときに怪我をしてフェンシングをやめることになった。
幸か不幸かまだ高校2年生だったこともあり、もう好きなことができないことを呪うかのように必死に勉強してそこそこの大学に進学することができた。
大学で他のスポーツをやることも考えたが怪我した箇所が脚であり、自分の思うようなプレーをできないことを思い知らされ、それも断念した。
そんな何もやることがない脱力感から私を救ってくれたのはVRゲームだった。
怪我をしてから思い通りのように動かなかった身体が怪我をする前と同じように動かせるようになり、それが快感になった私はずっとゲームのなかに入り浸るようになった。
そんな感じで何作も何作もやっていく内に出会ったのが奈月ちゃんの父の弟であり、後の夫となるあの人だった。
あの人とはあるVRファンタジーゲームで知り合い、意気投合してからは何個かのゲームを一緒にやり、その内リアルでも会うようにもなって私が大学を卒業したときに結婚をすることとなった。
それから3年間、私は主婦をしながらVRゲームをやるようになったため、入り浸ることはなくなったが夫婦でゲームをすることには変わりなかった。
しかし、そんな普通の生活は長く続かなかった。
あの人やその家族が乗った飛行機が事故で墜落し、その飛行機に乗っていた人全員の死亡が確認された。
私はその日、墜落した飛行機に乗っていなかった。
なぜなら、夫婦で応募して私だけ抽選で当たったFLOのベータテスト最終日、つまり私がトップ8の次席になったベータ版大会が行われた日だったからだ。
私は悪運が強いのか今プレーしているFLOに命を救われたと言っていいだろう。
そして私1人になったと思っていたこの不幸な一族に生き残りがいると知ったときは少しホッとした自分がいた。
しかし、泣きじゃくっていた奈月ちゃんを見たとき私はどうしても無視できなかった。
私は周りの大人が全員いなくなった奈月ちゃんを引き取ることにした。
しかし、私は特に親代わりとして奈月ちゃんになにかをしてあげることをできずにいたのがもどかしかった。
だから私は奈月ちゃんにFLOのクランに誘われたときらすごく嬉しかった。
奈月ちゃん、いいやルーンちゃんの隣で私の命を救ってくれたこのゲームで少しでも私は親代わりになれるようなことをできれば良いかなっておもったから。




