偽りの本
アニを正式にクランに迎い入れてから1日後、ルーンとシルクの2人で賢者の小屋に向かっていた。
「シルク、なんで今さらあのお婆さんの小屋に行くの?1人救ったってことの報告?」
「いや、違う。ルーンに預けてる本と今回の暴食の悪魔の一件、気になることがあって…お婆さんなら何か知ってるって思ったから」
シルクの何か神妙な面持ちにルーンはアイテムボックスから例の本を取り出した。
「だから、私を誘ったって訳か」
「まぁ、ルーンの方が解釈とか理解とか早そうだし。ほら、もう着いたよ」
そう言いながらシルクは小屋の扉を開け、小屋のなかに入るとそこには椅子に座っているお婆さんの姿があった。
「おぉ、お前さん見ていたよ。ニトを呪いの装備から解放してくれて。お陰でニトの魂がすくわれた、礼を言う」
「うん、まぁ私も一回死んだんだけど…」
「それで、今日はなんの用だい?」
「はぁ…わかってるクセにいつまでそんなしたたかな顔ができるんですか?あの呪いの装備でもなんでもない異形の悪魔を見ても」
シルクが静かなトーンでそう言うとお婆さんは高笑いしながら膝元に置いてあった本の表紙を見せつけてきた。
「黒いお前さんが持っているその本と同じ本じゃ」
「シルクあれって、禁術の本だよね。なんでここに…」
「正確には同じ表紙の本であって中身は違う。それは、偽りの禁術を記したもの。こっちが本当の呪いの装備を払うことができる術式が記されたものじゃ」
「ど、どういうこと…?」
ルーンとシルクが考えをめぐらせ答えを探そうとしたときにお婆さんはあっさり答えを教えてくれた。
「簡単じゃよ。お主らが持っているのは元々わしが研究していた術式、それこそ賢者の資格を剥奪されるきっかけとなった悪魔召還術をわしが記した本じゃ」
「それがなんだって言うんですか?」
「まぁ、話を最後まで聞け。ある時を境に弟子達が怪しげな行動をしていることに気づいたわしは、この本とその本を大切に別々の場所に保管していたんじゃよ。どちらも同じ表紙なのはこの呪いを祓う方の本もわしが書いたものだからじゃよ」
「も、もしかしてこの本はお婆さんが保管していた場所から盗まれたもの…」
ルーンがそう呟くとお婆さんはニヤッと笑ってルーンの方を指差した。




