炎の妖精
ルーンのスキル【暗殺者】発覚から約2時間、3人はモンスターから逃げながら妖精イベントを探していた。
「ふぅー、シルクの箒って案外快適なんだね。ずっと座ってるとお尻が痛くなるかと思ったけど」
「そんなのんきなこと言ってないでルーンみたいに自分の足で走ってよ」
アニはシルクに掴まりながら箒に乗って逃げ、その横をルーンが全速力で走っていた。
「しょうがないじゃん。ボクこれでも魔法使いの系統だからAGIにはステータス全然振ってないんだよ」
「じゃあ、今までどうしてたんですか!」
「うーん、会ったときに言ったドタキャンされたリア友の方が火力あるから一掃してもらってたんだよ。そもそもボクはそのリア友のサポートのために回復とか味方の強化を優先して上げてたからね。RPGの僧侶みたいな感じだよ」
「そのリア友さん、ランカーより火力出すってどれだけ特化させてるんですか…」
「いや、そのリア友の方も…」
アニがなにかを言いかけたとき、3人をずっと追っていたモンスターたちが突然引き返していった。
「モンスターが引いた…?」
「いや、これは…」
「ルーン、アニ見て!赤い妖精がいる!」
モンスターが引いていったことに驚いているルーンにシルクは指をさして妖精のいる方向を示した。
「今日は炎の妖精か…いいじゃん」
「あれが妖精ですか。かわいいですね」
「シー、今妖精と話してるから黙ってて」
「妖精と話してるって、私にはなにも聞こえないけど…」
シルクがそう言ってアニを見るとアニは箒から降り、地面に両膝をついて祈っているようだった。
「ルーン、アニは一体何を…」
「シー、多分アニの【妖精女王】の能力の1つだと思う。二つ名のスキルはまだ1つだけって決まってないから」
「そうだね。でも、なんか神秘的で絵になりそうな感じ」
シルクの言う通り森の中で妖精に祈りを捧げているキトン姿の女性は確かに絵になるとルーンも感じている内にあっという間に時間が過ぎアニが立ち上がった。
「ふぅ、今回は割りと楽に見つかって良かったよ。ヘタしたら1日探しても見つからないから」
「じゃあ、見つからなかったら私たちもずっとこの森にいることになったんですか!」
「うん、まぁそうだね。ここには何度も来てるけど帰り道もろくに覚えられないから人と一緒に入って人と一緒に帰れと、リア友に言われちゃって…」
「案外鬼畜…ってか、やっぱりアニは方向音痴だったんだ」
「まぁ、それはもういいや。ここまで仲良くなって隠す気にもなれないし…あっ、時間あるなら私の店にこない?」
アニの突然の誘いにルーンとシルクは戸惑ったが、特に何にも用事も無いため行ってみることにした。




