帰り道に
クエスト終了後、リリスは用事があるからと言ってさっさとどこかに行ってしまった。
「エイルさん、助っ人に来てもらってありがとうございます。買ったアイテムは結構余っちゃいましたけど…」
「アイテムは今度また使えばいいけど、そのローブって今回の報酬なの?」
「はい、そうですね。白色のローブだから私の装備と色の相性もいいですし、装備の性能もいいですからね」
シルクはそう言いながら自分の身体より少し大きいローブの質感を確かめるようにフードをかぶってみたりした。
「それで、シルクちゃんはこれからどうするの?僕はリリスの勧誘があったから店の準備がまだだから3層に戻るけどそのローブの性能を試しにでも行くの?」
「いや、終わったらログアウトする気でいましたけどこのローブの効果を見て寄るところができました」
「寄るところって?」
「本屋ですよ。私もルーンやエイルさんたちランカー並の魔法使いに、いや賢者になりますから」
そう言うとシルクはエイルと別れ、1層の本屋がある方向に向かった。
一方その頃現実では奈月が清香と用事を終え、帰路についているところだった。
「ありがとうございます清香さん、せっかくの日曜日なのにわざわざ一回忌の打ち合わせに参加してもらって」
「いや、別に問題ないよ。私は今なにもしてないんだから日曜日でも月曜日でも変わらないし」
(あぁ、そうだ。そういえばこの人無職だった…)
「あはは…そうでしたね…」
奈月は少し気まずそうに笑いながら、清香の言葉を流そうとした。
「まぁ、私は大人として奈月ちゃんのできない責任を負うために行っただけで、私はなにもしてないしね」
(確かにほとんど私が話し合いをしてたし、清香さんは書類の判子を押してただけだけど…)
「そうだ。来週末くらいにどこか一緒に遊びに行かない?奈月ちゃんとはあまりそういうことしてこなかったし」
奈月は清香の突然の誘いに戸惑っていたがクランの入会試験があったことを思い出した。
「いや、来週末はちょっとやらなきゃいけないことがあるんでごめんなさい」
「あーあ、ふられちゃったかぁ。しょうがない、じゃあ今週もずっとFLOのなかに居ようかな」
「FLOって…あのVRMMOゲームの?」
「うん、そうだよ。実は結構前からやりこんでてさ、自分で言うのもアレだけどかなり強い方だよ」
奈月には清香がゲームをするようなイメージが全くなかったのでかなり驚きの一言だった。
「いや、私のやらなきゃいけないことっていうのはFLOのクランで入会試験をやろうって話になってるんですよ。これでもクランリーダーやってるんで」
「へぇー、じゃあ私もその試験受けてもいいかな?今どこにも所属してないから」
「別に問題ないけど知り合いだからって優遇して入れるなんてことはしないからね」
「それくらい分かってるよ。その入会試験も他のプレイヤーと一緒の条件で受けるよ」
そんなたわいもない話をしながら2人はそれぞれの家に帰っていった。




