中の人会議5
死神の国にキラリスという新たな死神の女王が誕生したその夜、運営側にもそれは伝わっていた。
「あーあ、死神の国のクエスト一発でクリアされちゃいましたよ。せっかく大がかりなクエストを作ったのに」
「まぁまぁ、相手が悪かったよ。死神のクエストを受けたのがエイルと知り合いで第2回イベントでランカー相手に実質コンビで勝利したあの2人がいたんだから」
絹塚はクエストをクリアされぼやいている同期でプログラマーの田嶋をなだめていた。
「でも絹塚、かなりレベルの高いクエストにしたはずだったのになぁ。これならソロ指定すればよかった」
「そう落ち込まないでくださいよ。これから3層とプレイヤーには知らせていないアレの実装もあるんですから」
「そうだぞ。このFLOのプログラムリーダーであるお前がそんなへこんでたら周りもへこむぞー」
後悔してさらにへこんでいる田嶋をみて絹塚の部下である森田は同じように励まし、絹塚は軽くプレッシャーをかけるように言った。
「わかったって、愚痴るのはやめるからもう励ましたりするな。励まされるとなんか更にへこむ気がする。てか、なんでお前がここにきたんだよプロジェクトリーダーさん」
「いや、アレのプログラムは進んでるのかなぁって思って、あと2週間も無いからさ」
「それなら心配するな。見てみろよ。これがお前の望んだアレだよ」
田嶋がそう言って絹塚と森田にパソコンの画面を見せるとどちらとも驚いた表情をしていたが2人の驚いた表情のニュアンスは違っていた。
「うわぁ、結構こってるんですね。やっぱり多人数になるとこれくらいの大きさになるんですか」
「あぁ、そうだな。ゲームでは外見より遥かに中を広くできるのが良いし、デザインも結構こだわったんだ。どうだ絹塚、俺がここまでやるなんて驚いただろ」
「いや、驚いたよ。酷いときは他のゲームでメンテナンスの前日にやっとゲームに組み込める状態になるなんてこともあったお前がここまで成長したことに」
「うるせぇなぁ。まぁ、俺もここでリーダー任されたから率先して動いてるだけだよ」
森田は絹塚がタメ口で話しているところを見たことが無かったのでこの光景を少し新鮮に感じていた。
「それより良いのか?あのトップ8いや、トップ12にまたプレミアチケットあげて」
「田嶋も知ってたのか。確かにゲームバランスが崩壊するなんてこともあるかもしれないけどこれから開放される第3層、そしていずれ第4、5の層を追加されることを考えないプレイヤーなんていないだろ」
「あぁ、コワイコワイ。絹塚の未来を見ているようなその不思議な顔」
「要するにそれもプレミアチケットに入っているからそう前回みたいにそれぞれが取りたいものを取れないってことだよ。僕のお気に入りは迷わずそれを選ぶだろうけど」
絹塚の見ている未来が本物か偽物なのかそれはそのときがくるまで誰もわからないだろう。




