キラリスの迷い
ルーン達は十分に休憩し静まりかえった城の中を歩き、ついに玉座の間の前までたどりついた。
「結局ここにくるまで一体も死神に会わなかったね」
「うん、やっぱり全滅させたってことなんじゃない」
「キラリスの言うことが本当ならこれでも問題無いけどちょっと罪悪感があるっていうか…」
「心配ありません。あの国王は今でこそ暴虐のかぎりをつくしていますが昔は天才と言われるほどの魔法の腕を持った死神でしたからその辺は大丈夫です」
キラリスがルーンの不安を払拭するかのように言いきると、アヤメは目の前の玉座の間の扉に手をかけた。
「お嬢様、最後に頼んでもいいですか」
「なに?今できることならなんでもやるよ」
「私を指輪に戻してください。あの国王なら私を洗脳することくらい簡単です。私はお嬢様たちと戦いたくありませんし、もし私がお嬢様達を殺したらもう一度私は全てを失うことになりますから」
「なに言ってるの?国王を倒すためにはキラリスが必要だし、キラリスなら洗脳に抗えるはずだから。それに例え戦闘することになってもキラリスに負けるほど弱くないし」
アヤメのこの言葉はキラリスを信頼しているからこそ出てくる言葉だった。
「で、ですが…」
「キラリスはなんのためにここまで来たの?はじめ私はこの大事を頼まれたときはびっくりしたけどキラリスの言葉を信じてここまできたんだよ」
「はい、だからこそお嬢様達に迷惑をかけたくありません。私の恨みをはらすためだけの戦いに…」
「そんなの正直どうでもいいよ!確かにキラリスの恨みから始まったかもしれないけどキラリスは今のこの死神達の国を変えたいんでしょ!」
キラリスはアヤメの言葉を黙って聞いているだけでなんにも返答をしなくなった。
「なら、最後まで一緒に戦おうよ。最後の最後にこの面倒で大がかりな頼みごとをした張本人がいなきゃ意味ないし、私はキラリスと戦いたいと思ってるよ」
「…はい、分かりました。でも、もしも私が洗脳されてお嬢様達に危害をくわえるようなことがあればお嬢様の大鎌で私のことをおもいっきり斬ってください」
「まぁ、それははじめからそうしようと思ってたから心配いらないよ。スパッと斬ってあげるから」
「お嬢様?それはそれで少し傷つくんですけど…」
キラリスの拍子抜けの一言に周りには少し笑いがうまれ明るい雰囲気になった。
「じゃあ、今度こそ玉座の間にはいるよ」
「うん、こっちは問題ないからアヤメが良いと思ったタイミングで開けて」
「それなら今がその良いと思うタイミングなんで開けさせてもらいますよ」
アヤメはそう言うと、ギギギと音を出しながら玉座の間の扉を開けた。




