キラリスの出生
4人はキラリスが戦闘をしているはずの3階にある大食堂の大きな扉を開けた。
「キラリス!こっちは終わったから手伝いに…」
「どうしたの?もしかしてキラリスが負けたとか…っ!」
大食堂にはキラリスでも近衛兵の死神でもなく、黒く長い髪を肩にかけている白く透き通るような肌が特徴的な大鎌を持った女性がいた。
「あ、あなたは?」
「お嬢様、こちらは私が片付けておいたのでご心配にはおよびませんよ」
「お、お嬢様ってもしかして…」
「あぁ、こっちの姿で会うのは初めてですね。私はキラリスですよ。こっちの姿の方が力を十二分に出せるのですが体力消費が激しいので普段は死神の姿なんです」
キラリスと名乗る女性はニコッと笑うと黒いオーラを全身に纏うといつもの死神に戻った。
「あっ、いつものキラリスだ」
「私のように異種族の姿になり力を発揮するなんてことは案外珍しくはありませんよ。私の場合、お父様からおそわりましたから」
「キラリスのお父さんって…」
「はい、そういえばエイル様には話すと約束しましたし、このタイミングで話しておいた方がいいですね」
キラリスはそう言うと大食堂の入口の鍵を閉め、邪魔が入ってこないようにして話し始めた。
「私の生まれた家は裕福ないわゆる貴族の家で父は曽祖父の代から続いている王の政治的分野においての右腕として大臣をしていました」
「へぇ、なんとなく分かってたけどやっぱり良い家の生まれだったんだね」
「はい、裕福な家とあってなに不自由なく父や母、姉に弟と楽しく暮らしていましたが、前国王の死に退位し現国王デストラウンドが王位についたとたんこの国の雰囲気と私の人生は変わってしまいました」
キラリスの悲しそうな雰囲気になんとなくルーンは予想がついてしまっていた。
「まず、現国王は前国王の葬儀が終わったあと前国王の側近をほとんどを処刑しました。もちろん私の父も含まれていて父は人間の姿になれるので人間に寝返った裏切り者だったからなんてむちゃくちゃな理由で殺されました」
「それでキラリスはアヤメに助けを求めたの?」
「いえ、その時点で王に反逆はしようとは思ってませんでした。そのときは父が裏切り者だと信じられなくてどうしても真実を知りたかったので知り合いに頼んで内部調査をしてもらっていました」
キラリスの声がどんどんと暗くなるにつれ、少しずつ周りの空気も重くなっていた。
「それがあるとき内部調査を知られてしまい協力してくれた知り合いとそれを指示したとして私が捕らえられてしまいました」
「で、でもここにいるってことは処刑はまぬがれたんだよね?」
「まぬがれたのではなく私の場合脱獄したんです。しかし、私が脱獄したことにより家族全員が脱獄翌日には処刑されてしまいました。だから、私は人間界に行きお嬢様に共に現国王を倒すために手伝だってもらったんです」
なんとも言えない空気が4人と1体の死神のあいだを流れていた。




