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地球最後のほのぼの家族  作者: 若草伽藍
2/2

 14歳の新しい感情

 ペースが遅れてしまいました。すみません。

頑張りますので、ぜひ読んでみてください。

 《日本》

 

 我が家にテレビがやってきた。スマートフォンに引き続きやってきたが、私はスマートフォンの次にやってきたテレビに近未来的なものをより求めていた。しかし、父が接続を完了させると、画面が濁り光った。ただ、それだけだった。なにを見せられているんだろうと疑問に思ったが、録画リストを見ると何十本か映像が録画されていた。その中のひとつに旅番組というものがあった。


 「なにこれ」


 「黙って見ていなさい。」


 何度も疑問を口に出す私を母はなだめた。だから、私は黙ってそれを見ることに決めた。最後まで見終わってようやく理解した。これは外の世界の話なのだ。緑色の草花はプールにあるそれの何千倍にも見えたし、旅を進行する人以外に何十人も道をすれ違っていく。見たことのないご飯、見たことのない風景。これが外なんだと理解するのに時間がかかった。父は私が何かを感じるまで、ずっと側にいた。


 「これが外なの?」


 「そうだよ。」


 「外はこんなにも綺麗なの?」


 「そうだよ。」


 「私は外に出られないの?」


 「そうだね。」

 

 さっき諭されたはずなのに、我慢できずに私は質問を繰り返した。父はそうだとしか言わなかったが、適当に答えている様子ではなかった。だから、私は質問し続けたのかもしれない。外にでれないのと聞いた時に父は食いぎみにそうだと言った。両親はなんためにこの動画を見せたのか分からなかった。私に外の世界への興味を持たせるためなのか。そうだとしたら、彼らの期待には答えられない私がいた。私の心には外に出たいという好奇心が微塵も生まれなかったからである。


 「ここはどこなの?」


 テレビを指差して質問した。すると父もテレビを指差して答えた。


 「日本だよ。」


 《拉致監禁》


 録画のなかには映画と呼ばれるものも含まれていた。その中でも一本の映画にものすごく衝撃を感じた。ある家族が家の中に住み続け、外には一歩も出ないという内容の映画だった。そして、その家族の長である父親は子供に人類は既に滅亡していると吹き込み続けたのだ。ある種の催眠に思えた。

 その家族の存在が第三者にばれてしまい、いよいよ警察沙汰になってしまった。子供はそこで初めて家族以外の人間を目にする。

 私は異様なほどの親近感が襲い、身震いが止まらなかった。


 「怖かったね」


 「そうだね。」


 そんな簡単な会話しか出来ないほど、余裕のない状態になってしまった。それは、眠ってしまうのと同じような人間の本能に思えた。


 「映画についてどう思った?」


 わざと母に尋ねた。


 「面白いと思ったよ。」


 母はおどけるように言ったので、少し腑に落ちなかった。父にも聞こうと思ったが、なぜか父はキッチンの方から立ってこの映画を見ていたので、聞くに聞けなかった。


 「私達もこの家族と同じなのね」


 恐ろしいことは敢えて軽い調子で言いたくなる。それも人類に植え付けられた本能なのかもしれない。


 「似ているわね。」


 「似ている?」


 「ええ、私達、家の中で全てを済ませているでしょ。」


 「そうね、ここでなんでも出来ちゃうしね」


 「それにこの人達みたいに外には出られないでしょ。」


 母は本当のことを言っているだけだった。だけど、母は何か避けて話しているのかもしれない思った。それは、14歳になって芽生えた疑りから出た発言かもしれない。


 「この映画みたいに私達家族の元にも警察が来るかもね?」


 「それはないわね。」


 「どうして?」


 「言ったじゃない、他の人類はもういないのよ。」


 「でも、映画みたいに父の作り話かも!?」


 「本当の話なのよ。」


 母の目は誰よりも綺麗で真っ直ぐだった。もちろん、比較対照が私と父しかいないので、誰よりもと使うのはおかしいことかもしれないが、もし他の人類が生き残っていたとしても母よりも綺麗な瞳は持っていないだろう。

 それだけが私が彼らの話を信じる根拠だった。

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