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デッド・オア・ハーレム  作者: 来夢
デッド・オア・ラブ
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放課後ゾンビ

「──連絡は以上。部活に精を出すのもいいが、期末試験に向けて勉強もしておくように」

「起立」

 

日直の掛け声に従い、一斉に立ち上がる2―Hの面々。クラスメイトたちが直立して顔を前に向ける中、俺は中腰のままそっと鞄に手を伸ばした。


「礼」

「ありがとうございまし──たっ!」

 

号令に合わせて周りが頭を下げた瞬間を狙って、全力で床を蹴る。

よしっ、良いスタートが切れた。これなら……!


『柏くううううん!』

『どこへ行くのかなあ?』

「ぎゃあああああああああああああああっ!?」

 

もう少しで教室を抜けられるというところで、俺の肩にぶっとい腕が回された。

なんだこいつら、反応が速すぎる!?


「離せバカ野郎!」

『イヤだな~離すわけないじゃないか』

『僕たちと楽しいことをしようよ』

 

映画に出てくるゾンビのように、わらわらと俺の方に集まってくる男子たち。

皮膚の色こそ健康的な小麦色だが、全員目とか心が腐っているのが一瞬で分かった。


「お前ら、何をやっとるんだ」

「せ、先生っ! 助けてください!」


すぐ側から呆れ顔でこちらを見ている担任に助けを求める。体育科を仕切っているこの屈強な男なら、あるいは力づくでゾンビたちを引っぺがせるかもしれない。


『先生、俺たちは柏で楽しく遊びたいだけなんです』

「俺“で”ってなんだよ」


『リアル処刑ごっこ、先生も一緒にどうですか?』

「いや、俺は遠慮しておく。お前らも程々にな」

「おいっ!?」


程々の処刑ってなんだ!? 命は残るのか!?

思わず声を荒げると、歩き去ろうとしていた担任が再びこちらを振り返った。

良かった、まだ助かる可能性が──


「柏、俺も一応聖職者なんだ。悪いが処刑には参加できない」

「そこじゃねえよ!?」


なんで執行人サイドに混じろうとしてんだ、このオッサン。


「柏、何度も言うが俺は聖職者だ。悪いが面倒くさい」

「聖職者関係ねえじゃねえか!?」

「それじゃあ達者でな」


俺の思いも虚しく、筋骨隆々の担任はクラスの数少ない女子たちと共に足早に教室を去って行く。


「えっ、ちょっ、お願い待って!」

『かしわあああああ』

『あそぼおよおおお』

「ひいいいいいぃ!?」


邪魔者がいなくなり、より一層活き活きするゾンビたち。もうそれゾンビじゃねえな。


……くっ、こうなりゃヤラれる前にヤッてやる。


「はいはい、すとーっぷ!」


そんな切って落とされた火ぶたを拾い上げたのは、唯一人教室に残っていた女子だった。

部活用のエナメルバッグを肩に掛け、宮本は腕を組んでゾンビたちに声を掛ける。


「ごめんね。生徒会室に行かなきゃならないから、柏くんを離してくれない?」

『みっ、みみみみみ宮本さん!?』

『でも、俺たちは世界の平和のために柏を縛らなくちゃいけないんです!』


大半のゾンビは宮本に声を掛けられただけで固まってしまったが、一部の意志の強い生き残りが宮本に抗議する。


「でも、一人に大勢で掛かるのはどうかと思うよ?」

『じゃあ、俺たちはどうしたら……?』

「うーん……皆で縛り合って、最後まで勝ち残った人が柏くんを縛ればいいんじゃない?」

『『それだ!』』


宮本の提案を聞くや否や、俺を放り出して互いを縛り始めるゾンビたち。

解放された俺の肩を、したり顔の宮本がかるく小突いた。


「私にかかればこんなもんだよ」

「し、死ぬかと思った……」


どうせ襲われることは分かっていたのでスピード勝負に出たのだが、結局助けられてしまった。なんで教室を出るだけでこんな苦労しなくちゃならないんだ。


「ほら、ベストシバリストが決まる前に早く逃げようよ」

「お、おう」


シバリストってなんだよとツッコミつつ、俺は宮本に続いて教室を飛び出した。

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