どうしても涙が出ない僕を許してください!
僕は物心つく頃から、涙を流した事がないんだ!
だから、神様に僕の願い事を、毎日するんだよ。
【どうしたら、、、? 涙が出るの? 泣けるようにしたい!】
僕が10歳の時に、お父さんが交通事故で亡くなってしまった。
お通夜の日、、、。
親戚やお父さんと付き合いがあった人たちがゾロゾロと
お父さんのお通夜に現れた。
僕のお母さんも弟も妹も、おじいちゃんおばあちゃんもみんな
お父さんが亡くなって泣いていたのに、、、。
周りの人たちもみんな泣いていたんだ、、、!
勿論、僕だってお父さんが亡くなって悲しかったけど、、、。
涙は一滴も出なかった...。
そんな僕を見て、周りの人たちはこんな事を言っていた。
『お父さんが亡くなって、典人クン、、、涙を流さないのよ! あの子、
全然悲しくないのかしら、、、?』
『お父さんが亡くなったと言うのに、涙も流さないなんて! 薄情過ぎないか!
典人だけだぞ! 泣かないのは!!!』
『あの子? 人の痛みが分からないんじゃないの、、、?』
『あの子は、親不孝者だ!!!』
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でも、お母さんは違った。
『典人! 無理に涙を流す必要はないのよ! 貴方がお父さんが亡くなって悲し
んでいるのは、お母さんが一番分かっているからね!』
『...ごめんね、僕はなんで悲しいのに涙がでないのかな、、、?』
『ちゃんと貴方は泣いているわよ! ほらここで泣いている!』
そう言うと、、、お母さんは僕の胸をコツコツと優しく右手の人差し指
で叩いた。
『ありがとう、お母さん。』
『うん! いいのよ~』
お母さんは僕をギュッと抱きしめてくれた。
頭を優しく撫でてくれた。
僕は嬉しかった。
▽
あれから10年が経って、僕も20歳になった。
今度はお母さんが病気で亡くなってしまった。
あの時のように、お通夜が行われた。
あの時とまったく一緒だった。
この時も、僕は涙が出なかった。
みんなが僕を見る目が冷たかった。
弟も妹も、僕が泣けない事を知っているからフォローしてくれたのだけど、、、。
僕はまた、あの時と一緒で涙が出なかった...。
『お母さん! ごめんね、泣けないよ!』
でもふと、お父さんが亡くなった時に僕に言ってくれたお母さんの言葉を
思い出した!
『ちゃんと貴方は泣いているわよ! ほらここで泣いている!』
僕の胸をコツコツと優しくお母さんの右手の人差し指で叩いた。
あの時の事を、、、。
思い出した瞬間、僕は一粒の涙がぽろりと出ました。
『...お兄ちゃん! ひょっとして泣いているの、、、?』
『兄貴! 涙出るじゃん!』
弟と妹の言葉で、ハッと気づいた!
『ごめんね、お母さん! やっと僕の心と体が一つになれたのかもしれない!
悲しいのにずっと泣けなかった、本当にお母さんが亡くなって悲しいんだよ!
お父さんが亡くなった時も同じだった! やっとお母さんの為に涙が出たよ!』
悲しい時に泣けないのは辛い!
心は痛くて苦しいのに、、、泣けない!
『今まで、どうしても涙が出ない僕を許してください!』
最後までお読みいただきありがとうございます。