表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

どうしても涙が出ない僕を許してください!

作者: 七瀬



僕は物心つく頃から、涙を流した事がないんだ!

だから、神様に僕の願い事を、毎日するんだよ。


【どうしたら、、、? 涙が出るの? 泣けるようにしたい!】



僕が10歳の時に、お父さんが交通事故で亡くなってしまった。


お通夜の日、、、。



親戚やお父さんと付き合いがあった人たちがゾロゾロと

お父さんのお通夜に現れた。


僕のお母さんも弟も妹も、おじいちゃんおばあちゃんもみんな

お父さんが亡くなって泣いていたのに、、、。


周りの人たちもみんな泣いていたんだ、、、!


勿論、僕だってお父さんが亡くなって悲しかったけど、、、。

涙は一滴も出なかった...。




そんな僕を見て、周りの人たちはこんな事を言っていた。


『お父さんが亡くなって、典人クン、、、涙を流さないのよ! あの子、

全然悲しくないのかしら、、、?』

『お父さんが亡くなったと言うのに、涙も流さないなんて! 薄情過ぎないか!

典人だけだぞ! 泣かないのは!!!』

『あの子? 人の痛みが分からないんじゃないの、、、?』

『あの子は、親不孝者だ!!!』



でも、お母さんは違った。


『典人! 無理に涙を流す必要はないのよ! 貴方がお父さんが亡くなって悲し

んでいるのは、お母さんが一番分かっているからね!』

『...ごめんね、僕はなんで悲しいのに涙がでないのかな、、、?』

『ちゃんと貴方は泣いているわよ! ほらここで泣いている!』


そう言うと、、、お母さんは僕の胸をコツコツと優しく右手の人差し指

で叩いた。


『ありがとう、お母さん。』

『うん! いいのよ~』



お母さんは僕をギュッと抱きしめてくれた。

頭を優しく撫でてくれた。

僕は嬉しかった。



あれから10年が経って、僕も20歳になった。

今度はお母さんが病気で亡くなってしまった。


あの時のように、お通夜が行われた。

あの時とまったく一緒だった。


この時も、僕は涙が出なかった。

みんなが僕を見る目が冷たかった。


弟も妹も、僕が泣けない事を知っているからフォローしてくれたのだけど、、、。

僕はまた、あの時と一緒で涙が出なかった...。


『お母さん! ごめんね、泣けないよ!』



でもふと、お父さんが亡くなった時に僕に言ってくれたお母さんの言葉を

思い出した!


『ちゃんと貴方は泣いているわよ! ほらここで泣いている!』


僕の胸をコツコツと優しくお母さんの右手の人差し指で叩いた。

あの時の事を、、、。


思い出した瞬間、僕は一粒の涙がぽろりと出ました。


『...お兄ちゃん! ひょっとして泣いているの、、、?』

『兄貴! 涙出るじゃん!』


弟と妹の言葉で、ハッと気づいた!


『ごめんね、お母さん! やっと僕の心と体が一つになれたのかもしれない!

悲しいのにずっと泣けなかった、本当にお母さんが亡くなって悲しいんだよ!

お父さんが亡くなった時も同じだった! やっとお母さんの為に涙が出たよ!』




悲しい時に泣けないのは辛い!

心は痛くて苦しいのに、、、泣けない!


『今まで、どうしても涙が出ない僕を許してください!』





最後までお読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ