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召喚獣はランク圏外  作者: さやか
7/11

我、説明を受ける

威嚇…それは魔法などではない。

例えば、犬だって敵と出会えば歯向かう前にまずは唸り敵を威嚇するだろう?

我は犬で言うところの唸り声をあげたに過ぎぬのだ。

ただ、我の力と人間共では力量に差がありすぎた。

人間が気絶で済んだのは、隷属していた魔物が守ったからであろう。

魔物が狂い死にしたのは、人間を守った故まともに我の威嚇をくらい恐怖したせいであろう。

我、こんな格下の者を威嚇した事なかったからこのような事態になるとは思わなかった…。

困ったのぅ。

周りは静かになったが、この後、我はどうなるのだろう?

アルバートと呼ばれた幼体はやはり目覚める様子もないし。

べしっと頬をはたくも身動ぎ一つしない。

『のう、サンダーバードよ』

ギルバートと呼ばれた幼体の体に止まりブルブル震えていた魔物唯一の生き残りに声をかけた。

『なんとかしろ。』

言われたサンダーバードはひたすらギルバートと呼ばれた幼体を起こしにかかった。



ギルバートと呼ばれた幼体はよく働いた。

目が覚めてすぐに事態を把握。

真っ先に我をハンカチでぐるぐる巻きにして木につるした。

威嚇を目の当たりにした癖に中々の蛮勇ぶりである。

次にアルバートと呼ばれた幼体を蹴っ飛ばして叩きおこす。

アルバートと呼ばれた幼体はずっと寝ていたので、ギルバートと呼ばれた幼体の話を信じる事が出来なかったようだ。

まあ、木に吊るされた蜥蜴が魔物をほぼ全て殺し、人間は気絶させたというのだ。

信じろというのが無理というものだ。

次に二人がかりで気絶していた幼体、成体を起こす。起きた者から順に自身が呼んだ魔物の死を悟りアルバートと呼ばれた幼体に食ってかかる。

中には我を処分しようと声を上げるものもいた。

しかし、意外に冷静な成体が威嚇という魔法でも物理攻撃でもないもので魔物の大半を死滅させた魔物を殺す事は実力的に無理と判断を下した。

木に吊るされた我を憎々しげに見ていた。

魔物の死骸はそのままにされ、我はアルバートと呼ばれた幼体によって吊るされた状態から助けてもらう。アルバートと呼ばれた幼体以外の者はかなり離れた所から見守っていた。

我はハンカチでぐるぐる巻きの状態のまま、アルバートと呼ばれた幼体の胸元で抱かれる。

そして、城のような建物に戻った。


その後、我をどうするか、となったようだ。

我をしまえる魔道具なるのものが用意されたが我が触れると悉く壊れる。

結局、普通の虫かごが一番安全とわかり、そこが我が寝床となった。

皮袋やハンカチぐるぐる巻きよりずっとよい。

アルバートと呼ばれた幼体は我と共に一つの巣に移る事になったらしい。

同じ巣に籠る人間に万が一があってはまずいとの判断のようだ。

アルバートと呼ばれた幼体は嬉しそうだ。

うむ、我も彼奴らは嫌い故、巣を一つ使えるのは望ましいぞ。

我は、アルバートと呼ばれた幼体から林檎を貰い満足していた。


そして、夜。

丑三時に我は動く事にした。


『サンダーバード!聞こえるかのぅ』

どこにいるか知らぬが思念伝達を行う。

音波に頼る意思伝達ではないので、例え話相手が目の前にいなくても思念は伝達できる。

魔物ならばどんな弱小でも可能な行為だ。

これも威嚇同様魔法ではない。

犬で言う所の尻尾の降り具合で感情を伝えるあれだ。

『あ、あ、あ…』

暫し待つと思念が帰ってきた。

随分、遠くにいるようだ。

『ちょっと、話があるから来い』

『えっ、でも、おいら今裏側の世界にいるんすけど…』

『ウラガワノセカイ?なんだ、それは?』

『え、こちらの世界ではない別世界です。』

『別世界?亜空間の事か?』

『アクウカン?ちょっとわからんです』

『そうか。まあ、とにかく来い。方法は任せる』

『えっ!?そんな無茶ぶり!』

サンダーバードは悲鳴をあげるが、無視である。

我は絶対強者故小物の意見など耳に入れる必要はないのだ。

我は思念伝達を切り暫く待つ。

トントン!

ノックが響いた。

『鍵は掛かってない故、入るがよい』

ガチャリ

入ってきたのはギルバートと呼ばれた幼体とサンダーバードだった。

『なんで此奴がいるんだ?』

『おいら、ご主人様の力がないと裏側の世界から出れないっす!出してもらうのに事情説明したら当たり前についてきたっす!』

『ほう?』

我は改めてギルバートと呼ばれた幼体を見る。

寝巻きのまま、肩にサンダーバードを止めた銀髪の幼体だ。

林檎が入った虫かごから出れない我を見てなんとも言えない表情をしていた。

『ふむ、まあ、よい。とりあえず色々話そうではないか。ここではこの幼体が起きてしまう故、別の場所で話そう。場所は任せる』

言われたサンダーバードはギルバートと呼ばれた幼体に伝え、我が意を汲み取りカゴを持ち部屋から出た。

向かった部屋はかなり広かった。

たくさんの台や椅子がある。

そのうちの一つの台に我を置き、椅子に腰かける。

『それで、話とは?』

『言うたろ?我は知らぬ事が多い故教えろと。

その人間に聞けばわかるよの。』

『でも、貴方はご主人様とは話せないっすよね?』

『お主がいるんだ。問題ない。』

我は思念伝達の仕方を少し変える。

『おい、ギルバートとやら。聞こえるか?』

『!?』

混乱の思念が頭に響く。

おー、届いた。

『えっ!?ご主人様とつながった!?どうして?』

サンダーバードも驚いている。

普通の思念伝達はどんな魔物でもできる。

しかし、少し複雑なものはある程度歳をとって知恵をつけないとできない。

このサンダーバードでは無理だろう。

どうやったかというと、サンダーバードを中継したのだ。

直接語るのはできずとも、サンダーバードの頭を中継して語る事はできる。

サンダーバードがいなければできないが、今は問題ない。

『まあ、方法はおいおい伝えるとして、ギルバートとやら、落ち着け。』

『そんな!?隷属してないのに!?』

『その気になればなんとでもなる。

それより、そなた、我に物を教える栄誉をくれてやろう…って、お主、カゴを振るでない!』

無言でカゴを振るギルバートと呼ばれた幼体。

我の静止で止まったが、ちょっと気持ち悪くなったわ。

いきなり何をする。

『ご主人様…』

『あ、なんか。上から目線でイラッときて。』

『気持ちはわかりますけど、魔法の類が効かない相手なんですから、無茶しないでください。』

『と、いうか、聞きたいのはこっち。

お前、なんなの?』

『そう聞かれてものぅ。』

我は反応に困る。

正直に勇者に封印された神格持ちの魔物だと言ってもいいが、いかんせん、虫かごに入った状態では威厳がなさすぎる。

この状態で神格持ちを名乗るのは勇気がいる。

仕方ない。

『我が何者かは我にもわからぬ。

気がついたら、アルバートとやらに拾われた身よ。』

『何者かわからないって、魔法は全然効かない魔物なんて聞いた事ない。それにあれは覇気?

凄まじい威力だった!普通の魔物じゃない!』

『覇気じゃない。ただの威嚇よ。我、魔法が効かぬ変わりに行使も出来ぬようだ。』

『はっ!?あれがただの威嚇だって!?

じゃあ、覇気なんて使用したら学校内で死者が出る!』

我が使った威嚇に魔法を乗せると名前が変わる。

乗せる魔法の強さによって名前は変わり、弱い魔法を乗せれば威圧、強い魔法を乗せれば覇気となる。

ギルバートと呼ばれた幼体は昼のアレを覇気と思ったようだが、ただの威嚇と知り驚きを隠せない様子。

『落ち着け。我も昼間に気づいたのだ。

我はそこらの魔法は効かぬ変わりに行使も出来ぬ。故に魔道具での封印は出来ないが、この通り虫かごからは出れぬ。』

『強いんだか弱いんだか。』

呆れたようにギルバートと呼ばれた幼体は言う。

『だから、我はそなた達の脅威ではないだろう。』

我は魔法では殺せない。

しかし、ハエ叩きでひっぱたけば即死する。

それが今の我だ。

最強にして最弱とでもいうか。

なんとも情けない。

『ところで、我も知りたき事がある。

ここはどこなのだ?』

『ここは、召喚士養成学校だよ。』

『なんだ、それは』

『召喚士はわかる?』

『いや?』

首を振る我にギルバートと呼ばれた幼体は説明する。


すなわち。


人間の持つ魔力は少ない。

故に、魔法を行使しても、スライムやコボルトを倒すのが精一杯だ。

しかも、少ない魔力故、すぐに尽きるし、回復も遅い。

人間とは本当に魔法を使う事に関しては向いていない生き物だ。

だが、この世界は魔物が蔓延る危険な世界。

戦えなければ死あるのみ。

人間は魔力が少ない変わりに、英知あるもの。

遂に長い時間をかけ、新しい魔法…召喚術(サモン)を開発した。

少ない魔力を絵図…魔法陣というらしい…で一時的に増幅し、人間より遥かに多くの魔力ある魔物を召喚する事に成功した。

何度も召喚する事は出来ない故、一度召喚した魔物をやはり新しく開発した魔法隷属(スレイブ)で縛り普段は裏側の世界に閉じ込めているらしい。

裏側の世界とは、ギルバートと呼ばれた幼体もイマイチ理解していないらしく、おそらく、我が封印されていた亜空間の事だと思う。

で、召喚術を使う人間を育成する学校の事を召喚士養成学校というらしい。

どうやら、人間の世界というか、彼らが暮らすこの国では、召喚士がかなり優遇されるとの事。

才能あるもの、特定の事情あるものがこの学校で三年の月日をかけ召喚士を目指すらしい。

『アルバートに才能があると思えぬな』

言われてギルバートと呼ばれた幼体は頷く。

『アルと僕ともう一人は特別な事情でここにいる。』

『その事情とは?』

『この国の立太条件を満たす為。』

『リッタイ?』

もしや

『僕達はこの国の王子だよ。』

『なんと!?』

さすがに驚く。

『アルは第三王子、僕は第二王子。第一王子も別クラスにいる。』

この三人は召喚術を学び卒業時最も習得率の高い者が次期王となる。

『アルは贔屓目に見ても立太の可能性は無い。

実質僕か第一王子のどちらかが王になる。

だから、アルは王宮に帰るべきなのに、頑なに、かえらない。』

ギルバートと呼ばれた幼体は言う。

意地悪を言っていた理由はこれか。

『兄弟だから、痛い目見て欲しくないと?』

『ち、違う!僕達は血は繋がってないから厳密には兄弟じゃないし!』

『ほう?』

『僕と第一王子は王家本筋。対してアルは傍流。同じ次期に生まれ、王宮で育ったから兄弟と言ってるだけ!あれは、疑惑の血筋だから!』

『その、疑惑の血筋とはなんぞ?』

『自称、勇者の子孫』

なんだって!?

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