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召喚獣はランク圏外  作者: さやか
1/11

我は蜥蜴ではない!

リアルでは蜥蜴なんて絶対触れない作者がお送りします。

無数の国を滅ぼした。

理由?

そんなものはない。

人間など、放っておけば勝手気ままに増えていく。

間引くのは神格種族の役目だと嘯く。


我は最強。

漆黒の翼は広げれば天を覆い尽くし、我が爪は

一掻きで大地を砕く。

我が声に魅了される下級種族は万にも及び、

我がために命を捧げる事に躊躇いなし。


それが我だ。

だが、下級種と侮っていた人間から、勇者なる者が現れた。

どうやら国を滅ぼし尽くしたのが逆鱗に触れたらしい。

剣を振るい、魔法を操り、年単位の時間を費やし、

この最強の我を!

亜空間に封印したのだ!!

実に愉快!

この最強たる我を封印するとは見事也!

我は認めよう!

そなたこそが最強と。

最も、我が声は二度とそなたの耳に届くことはないのだろうが。






ここはどこだ。

長い長い眠りから覚めたら、森の中にいた。

おかしい?

我は亜空間に封印された身。

何故、普通の森の中にいるのだ?

いや、普通の森ではない。

おおきい森だ。

木一本一本が凄まじくおおきい。

転がる石は全て岩のようにおおきい。

我の体は天を覆い尽くす程の巨体。

その巨体をもってしてもおおきいと評さざるをえない程この森はおおきい。

それ以外は普通なのに…


がさり

何かが草むら…この草むらも異様におおきい…を動かす。

自然、視線を向ける。

蛇?

見た目は蛇だ。

地面を這っている。

こげ茶の体、赤い目とチラチラ見える舌。

とるに足らない生き物だ。

だか…おおきい。

我を飲み込めると自信を持っていえる。

これは、唯の蛇ではない。

我よりおおきいのだ。

だが、我とて、最強と言われた事もある神格種族だ。

神格持ちはおおきいだけの蛇など恐れぬ。

我は翼を広げようとして…違和感を感じた。

…翼が…ない?

どういう事だ?

我は事態を飲み込めず、混乱する。

そんな事は関係ない蛇は我に素早く迫り来る!

おおきな口を我に向けて…!

喰われる!?

我の体は硬い岩のようになり、避ける事などできそうもない。

できる事はきゅっと目を閉じる事のみ。

国を滅ぼした神格種族たる我が、なんと情けない。

我は来るべき痛みを想像する。


ガサガサ!!!

凄まじく煩い音がする。

地面が揺れる。

我は閉じた目を開いた。

「!!」

愕然とする。

人間だ!!

これは人間だ!!

間違いない!

我がかつて気ままに屠り、嬲り殺し尽くした人間だ!

だが、巨大だ。

我より巨大な人間などあり得ぬ!!

「オロチ!!ダメだよ!」

人間は意外に高い声で話し、蛇を手づかみする。

もしや、幼体…?

「ちゃんと、ご飯あげてるだろ?拾い食いはダメだよ!」

子供は言いながら蛇を腰にぶら下げていた籠に入れる。

そして、こちらを見た。

我は呼吸が荒くなる。

こんなに巨大な人間など見た事ないのだ。

かつて彼等にした事が頭をよぎる。

どんな無体をされるのか?

「ほら、しっしっ!」

足を踏み鳴らし人間は言う。

地面が揺れる。

どうやら人間は我をどこかに追いやりたいらしい。

逃してくれるならありがたい。

我は人間に感謝して逃げる事にして、後ろを振り向き…

失敗する。

唯立っているだけなら問題なかったのだが、動こうとした途端、

バランスを崩し、ひっくり返ってしまったのだ。

無様の一言に尽きる。

「あはは!面白い蜥蜴だな!」

人間は笑う。

…まて、人間よ。

今、なんて言った?

「蛇に食われかけて腰を抜かした蜥蜴など見た事ない!」

腹を抱えて笑う人間はやはり、我の事を蜥蜴と言った。

「アルバート!」

どこからか、声がする。

低い、男の声だ。

「ジルク!」

アルバートと呼ばれた人間は声の主に応える。

「オロチはいたのですか?」

ジルクと呼ばれた人間は雄の成体だった。

やはり、アルバートと呼ばれた人間は幼体のようだ。

「うん、いた。てか、あの蜥蜴、みて!」

アルバートは我を指差す。

「…なんでひっくり返っているんです?」

「オロチに食べられかけて腰を抜かしたみたい!」

「…蜥蜴が?」

「うん!面白いでしょ!?」

何が面白いものか!

そうは思うが、いまだひっくひかえったままなので、しまらない。

ジルクと呼ばれた成体が我に近づく。

く、くるな!

慌ててジタバタして元に戻ろうとする。

ひょい。

つ、掴まれた!!

ジタバタ!!

ぼす。

お、置かれた!

あ、元に戻してくれた?

我はジルクと呼ばれた成体を見つめる。

「さあ、蜥蜴なんて構ってないでいきますよ。」

「わかってるよ」

アルバートと呼ばれた幼体はむすっとしながら言う。

「バイバイ、蜥蜴さん」

アルバートと呼ばれた幼体は我に手を振り去っていってしまった。

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