せめて
せめて、せめて目の前の命だけでも。
「ありがとう。」
そう言って君は、僕の前からいなくなるのかい?
そうやってまた、僕を一人にしてしまうのかい?
解き放たれることのない時の中で、ただひたすらに待っている。
暗闇から解き放たれる時を。
記憶という名の過ごした時は、二度と帰ることはない。
その代わり、解き放つための鍵をくれる。
新たな生という、新生の命という鍵を。
そこで過ごすであろうその時も、また生け贄にし、また新たな鍵をくれるだろう。
ああせめて、せめて私の愛した人たちの時には、記憶には、私はいてほしい。
これが私の願う最もであり、全てだ。
鍵をそれに使うことができるのなら、時を持ったまま愛する人たちが鍵を使えますように。
新たな新生を託されたとき、私との時を忘れないように。
私もできることなら死にたくないです。
この主人公は人のために自分自身をこの世から消したのです。
人のために自分を犠牲にできる人こそ、幸せになれるというお話です。
たまたま読んでいただいたのであれば有難うございます。