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<7章>犬を愛する老人編

<7章>


犬をこよなく愛する老人編



結局この日はさんざん飲まされて、そのまま寝てしまった。

ああやっぱりやわらかないつもの羽のベッドじゃないとダメだ、背中が痛い。

体中が酒臭い。


「水浴びでもさせていただいたらどうでしょう。たかす殿、恐れ入りますが水浴び用の水瓶をお借りしますね。」


「むにゃむにゃ水瓶?・・・風呂?ああ、そこの右ね。」

たかす殿はまだ当分起きそうもない。


「ああ頭が痛い。お先にどうぞ。」


「はい、ではお先にお借りします。」



ジャ~~~~~~

勢いよくお湯が出る。

ひねっただけで快適な温度の湯が出るとは。

素晴らしいですね。



ガラッ!

突然勢いよく風呂の窓が開いた。




「よっ!たかし! 」

「バウッ! 」



!!!


「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


なんか茶色いヤツが出てきた~~~

UFOみたいなのが光ってるぅ~~~!!



よ~く見ると、白いランニングを着て頭頂部の光った痩せている老人が、薄茶色の柴犬を肩車して立っている。


老人は目を丸くして犬を肩から降ろして抱っこすると、

「あれあれ~・・・この時間に風呂入るのはたかすしかいねえからよお・・・すまねえな~」

と言って頭を弱々しく掻いて見せた。


むこうからアロンとたかす殿が急いで走ってくる音が聞こえた。

「何事です!?」

「あれ、しげさん来てたの?」



「回覧板のついでにトマト持ってきたんだよお。

ピンポン押したのに誰も出てこないから、ま~た飲んだくれて朝風呂しとるのかと思ったんだけど。旅の外人さんとはね、・・・そうかいそうかい。」


風呂場の窓から現れた薄毛の老人しげさんは隣人であり、そこの薄茶のやつは愛犬の五衛門らしい。


「よ~しよし、ほら、五右衛門きゅうり好きだろ?」

「バウ!」


どうやら五右衛門さんはきゅうりがお好きなようだ。

五右衛門はきゅうりをしゃくしゃくとかじっていたが、

ふとルカのほうを見て、

「おっと、気がきかなくてすまんな、あんたもどうだ?うめえぞ。」と声をかけてきた。


えっ?

ああそうか、言語同時解析装置が働いているからヒトも犬も等しく話ができるんだった。


「あっ、ど、どうも、じゃひとつ。・・・しゃくしゃく・・・うまい・・・です。」


「だろ?この辺は気候がいいからな、うまい野菜がたくさん採れるんだ。

せっかくだからゆっくりしていけや。」


他種からのヒトへの印象を聞くのも重要な調査の一つである。

「あの、五右衛門さんからみたヒトというのははいかがでしょう?」


「変なこと聞くねぇ~。というよりもあんた、俺の言葉がわかるのか?

すげえ、こんな人間は初めてだ。それとも外人は基本俺らの言葉が話せるものなのか?」


五右衛門さんはヒトと会話していることに若干驚いた様子を見せるも、

こう教えてくれた。


「そうだな、ここいらは気のいい奴ばかりだぜ。

お互い助け合って、こんな風に分け合って暮らしている。

まあ、都会じゃこうはいかねえんだろうがな。」


なるほど。


「それにしても、しげさんは随分五右衛門さんのことを大事になさっているようですが。

やっぱり毎日お散歩に連れていっていただいているのでしょうか?」


「あん?じじいが俺を散歩に連れていくかだと?

逆だな!

俺がじじいを散歩させてやってるのよ!(キリッ!)

じじいの奴、最近足腰がめっきり弱くなってきてるからな。」


「耳も遠くなってきて、チャイムと電話、それと湯沸しの音まで

気づかないときは俺が吠えて教えてやってるんだぜ。

じいさんはやっぱり俺がいないとダメなんだよな。」


「俺は飼い犬だから自由気ままにあちこち動くわけにいかないが、食べるものも雨風が凌げる寝床だってある。ガキの時みたいに訳も分からずに知らない奴らから蹴られることだってなくなった。じじいに拾われて感謝しているよ、俺は犬の中では恵まれているほうだな。」


「それに、俺はここが気に入ってんだ。

じいさんとはこれからもうまくやっていくさ。」


しげさんと五右衛門さんの関係って・・・なんか素敵ですね。

言葉は通じなくとも深い信頼で繋がっているのですね。


ええ。犬から見たヒトの印象は良いと言わざるを得ないですね。

調査結果に大きく影響する証言のひとつになります。


しげさんはそろそろ帰らなければ、と帰り支度を始めた。


「おお、そうだ、忘れとった。孫がくれたものを自慢しに来たんだった。

ホレホレ、最近なんだか流行っているという犬用の服なんだってよお。

せっかくだから外人さんがいるうちに五右衛門に着せて見せてやったらどうかなあ。」


「ほらこの帽子・・・・この服もなかなかいいんじゃないかなあ。」


・・・・バウ?(「・・・えっ?」)


バウバウ~ン!(「おいじじい、犬は服なんか着ねえよ!アンタ俺の言葉わかるならあのじじいに何とか言ってやってくれよ!」)


「・・・すみません五右衛門さん。通訳してあげたいのはやまやまなのですが、

あいにく規則で、それはしてはいけないのです。お役に立てず・・・。」


バウバウバウ~~~~!!

(「わ~やめろ~くそじじい!そんな恥ずかしいモン着せるな、お前の母ちゃんでべそ~!」)


「おお、おお~五右衛門もすごく喜んでいるみたいだな、ほいじゃあまたくるよ。」



バウバウバウ~~~~~~~~~~~~~~ン!

(「やめろお~~~~!」)


~~~~

~~~




・・・前言撤回。


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