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<6章>女神の素顔編

<6章>

女神の素顔編



時計が夜中の12時をまわった頃、おばあちゃんがみんなで飲みなさいとお酒を持ってきてくれた。そして「何もないところだけどゆっくりしていきなさい」と言い残して、2階へ上がって行った。


「サンキュ、おやすみ」


おばあちゃんを見送った後、たかしは

「泊まってくだろ?明日日曜だしいいだろ、付き合えよ」と言って、酒をチャプチャプっと揺らして見せた。


そういえば、言語同時解析装置を修理できたことにより、文字も判読が可能となったため、文字も言語と同じく直訳された状態で読みとることができる。


パッケージには「鬼ころし」と書かれている。

この液体は日本の酒であり、米を発酵させた飲料らしい。

酒はけっこう色々な宇宙で見かけるため、我々にも親しみがある。

たかし殿のお気に入りの銘柄の代物らしいが。


なになに鬼ころし?・・・その意図は・・・

何っ?鬼を絶命させる様のこと・・・だと!?


「あの、ひとつよろしいでしょうか。なぜ鬼を絶命させる様のことをわざわざこの酒の名称にする必要があるのでしょうか?鬼とこの酒に何か深い因縁でもあるのでしょうか?」


「そもそもなぜ鬼を絶命させる必要があるのでしょう。鬼が人に何か害を与えたということなのですか?」


「ブツブツ・・・それが事実だとすると、これとはまた別に鬼のほうの生態調査が必要になってくるかもしれませんねえ・・・ブツブツ・・・」


「知るか、旨けりゃ名前なんかどうでもいいだろうがよ。」


「あなたは意図が解らないものを解らないまま、特に疑問も感じずに日頃から食物を摂取されているというのですか?」


「はあ?めんどくせぇ~~~。鬼ころしについてこんだけつっこまれるとは思わなかったわ。」


なんか2人が無表情で顔を見つめてくる・・・。やだぁ、助けて。


「わかったよ!今ワキワキペディアで調べてやるって。」

仕方がないのでスマホで調べてあげることにした。


「待ってろ、えっと・・・・・・・・・・・鬼をも殺すくらいの辛い酒ってことらしい・・・ぞ。」


「ところでこの木彫りの熊はなかなかの代物だとは思いませんか?」

「この照り、深い色合いがなんかこう匠の技を感じさせますね。」


「そもそもなぜ熊がシャケを咥えている場面を模写しようと思ったのでしょうね。」

「狩りの参考にしているのではないでしょうか。」

「なるほど~」


たかしが顔を挙げると、既に2人は玄関近くにあった木彫りの熊に釘付けになっているようだった。



聞いてよ・・ねえ。



なるほど。人の考えること、作り出すものはなんとも不可思議で実に興味深い。

是非私の部屋にもひとつほしいものだ。


「ところでお前年いくつだ?そっちのデカイほうは大人だろうけど、お前飲めないよな?お酒はハタチを過ぎてからだからな。20歳以上か?」


「いやだなあ、20年以上なんて余裕で生きているに決まっているじゃないですか。

そもそも20年なんて生まれたての湯気ほやほやの状態ですよね。僕がそんな生まれたての鹿のように手足ガクブルしているように見えるんですか?」


アロンはとっさにルカの耳に手を当てて声を潜めた。

「あの、ちょっと、人の寿命は長くても100年程度ですよ。」


あっ、そうでした。


「ぷっ!わかったよ。おまえも大人だって言いたいんだろ、外人さんは見た目じゃ歳がよくわかんないからな。」


「まあ、おまえみたいなのはある意味二丁目とかでモテそうだから、気をつけろよ!な。」

とポンと肩を叩かれた。


2丁目?・・・その場所には何か罠でもあるのかしら?

う~ん、忘れないようにメモをしておいたほうがいいかもしれませんね、ふむふむ。



さて、たかしと酒を飲みながら話をする中でこの家の者達の暮らしが徐々にわかってきた。


まず、この人達は兵士でもなんでもない。

ニッポンに暮らすごく普通の家族のようだ。


おばあちゃんは朝早くから畑に出て、帰ってきてからは食事の支度・掃除・洗濯を一人でこなすそうだ。

わたしどもの所では老人が働くなぞとんでもないことなのですがね。


たかしのほうは、夜はバンドの練習に出かけるも、昼は運送の仕事をしているらしい。

あ、ちなみにバンドといっても結束具のことではありません。数人の意気投合した者たちが皆で唄を歌い、楽器を演奏するということだそうで、おそらく私どもでいう讃美歌隊のようなものなのでしょうね、きっと。


そしてもう一人、たかしには看護師をしている姉がいるとのこと。

仕事柄、今時珍しい3交代の病院のため、準夜勤後はたいてい帰宅が真夜中になってしまうとのことで、今も家にいないのはそのためだそうだ。


しかしどういうことなのだろうか。

今のところこの者達には極悪非道な戦闘種という印象は全くない。

いや、まだ被験者は2人だけなのだ。そう判断するには材料不足と言わざるを得まい・・・。

アロンが考え込んでいると、玄関の方から声がした。


「ただいま~。あ~疲れた!ふくらはぎパンパン。」


・・・???


「あ、ねえちゃん、知らない外人来てるよ。」


「えっ?あら、どこの子?」


「なんかばあちゃんがつれてきたみたいよ。この辺を観光中に迷ってたんだってさ。」


「まあ、そうなの?大変だったね、私はたかしの姉ちゃんです、よろしくね。」



例のたかす殿の姉という人物が現れた。

おばあちゃんとたかす殿よりも身に着けている装備はずいぶん少ないように見える。

ぱっと見る限り危険度は低いように思えるが。



立ち居振る舞いを見る限りでは温和な印象を受けますね。

3人目。

ちょうどいいタイミングですし、次の被験者になっていただきましょう。



「ところでねえちゃん殿、唐突ですがあなたの望むものや手に入れたいものはありますか?」


「え?何いきなり、何の話してたの?

え~と欲しいもの?そうね~別に・・・ないかなあ。

エコバッグもこの前自分で買っちゃったしなぁ。」


「野望などもないのですか?」


「ん~・・・しいて挙げれば、ドラクエで言ったら、個人的にはガンガン行こうぜが好きなんだけども、老後を考えてMP無駄遣いしないで堅実にバッチリがんばれ作戦で行ける人で、一緒に洞窟とか探検してくれるような人で、顔が舘ぴろしなら即結婚するかも。きゃっ♡」


「まったく、姉ちゃんは昔っから舘ぴろしとゲームのことばっかり考えてるからなぁ~あっはっは~。」


「ミスターぴろしとは少々望みが高いようにも感じられますが、これだけの美貌があればその条件でも理解はできますね。言語表現が若干個性的なようで翻訳がしづらいのですがね。」

「はい、睫が長く彫りが深くてビーナスのような美しいかたです・・・」


ほわ~~~~~ん

ルカはちょっとポワンとした顔をしている。



「さっ、もう顔洗わなきゃ肌に悪いわ。」


ブチッ!!




えっ?




お姉ちゃんは立ち上がりながらつけまつげをブチっととり外した。




!!んな``っ・・・

なんか外れたっ!!?




そしておもむろに洗面所で顔をジャブジャブと洗い出した。


洗面所から戻ってきたお姉ちゃんの顔は、のっぺりとしていてそれでいて、さっぱりとしていて、何と言うか、その・・・別人のようだった。



「・・・・・・。」

「・・・・・・。」



「じゃ、私もう寝るから、二人ともゆっくりしていってくださいね。」

 さいねっ・・

 ねっ・・・

 っ・・・

 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・

 


なんとなく見てはいけないものを見てしまった気がした2人であった・・・。


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