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7話 『銀色の輝き』

 初めての敵である龍を前にして俺と戦士を前列に。

 勇者と魔法使いと僧侶を後列にして隊列を組んだ。


 勇者はどちらかといえば前列向きだがこの勇者を見るに

どうも前列でばりばり戦える、って感じではなさそうなので

後列に置いた。


「さて、勝算はあるのか?」


 隣に立つ戦士が小声で問いかけてくる。


「どんな戦いにも必ず勝機ってのはある。問題はそれを見つけ

られるかどうかさ」


「頼もしいな。!?」


 戦士が龍を向いて目を見開く。俺は戦士の顔を見ていたので急いで

前方の龍に視線を移す。龍は大きく口を開けていた。その様子から

して奴の取る行動は……



「まずい、ブレスだ!回避行動をとれ!!」


 急いで隣にいる戦士と後列にいるメンバーに叫ぶ。

 俺たちはバラバラに散る。とてもじゃないが後列の仲間をかばう

ためにあのブレスを受け止めるなんてことはできないだろうから。


 直後。龍の口から灼熱の炎が吹き出す。


『ゴオオオオオオオ』と轟音を響かせて先ほど俺たちのいた場所

を焦がす。



 どうやら皆直撃は避けられたようだ。


「大丈夫か?」


「あぁ、俺はな!だが勇者と僧侶が気を失ってる!」


 おいおい、まじかよ。僧侶はともかく勇者までロクに回避行動

が取れないってのは問題だぞ。



「はぁ……はぁ……。っつ……」


 どうやらほぼ無傷なのは俺と戦士だけらしい。後列に位置している

奴らは回避行動を取ることが少ないから慣れていないのだろう。


 龍が爪を俺目掛けて振り下ろす。


「ちぃ!」


 俺は爆宙でそれを躱す。しかし追い討ちを欠けるかのようにもう一方の

腕の爪を振り下ろしてくる。まずい、間に合わないー



「おらぁ!!!!!」


 金属と金属が打ち合う甲高い音が辺りに響く。俺と龍の間にロアが割って

入ったのだ。しかし均衡はそう長くは続かなかった。圧倒的な力を持つ

龍にロアが力負けし吹き飛ばされたのだ。


「っっく……」


 背後で木と衝突しロアが呻きを上げる。


『グォォオオオ』


 龍が低く、重たい声を漏らす。


 勝てないのか……。くそぉ。


『ユキ、あなたは私の『右腕』よ』



「!?」


 かつて『勇者』に、あいつに言われた言葉が頭に響いた。


 そして『あの時』のように体中に力が巡る感触を感じる。

 あの時、というのはかつて勇者とともに冒険していた時

のことだ。まるであの頃に戻ったかのような。

 

 まさか。俺はちらっと『勇者』を見る。気を失って倒れている

頼りない『勇者』を。もしかしたらこいつが気を失っていること

によって一時的に俺の『勇者』があいつに戻っているのか?

 にわかには信じられないことだが俺の力は完全に『勇者依存』だ。


 ありえないことではない。もしそうなら……


 俺は右手を前にかざす。そして唱える。


「剣よ。我が呼び掛けに応え出現せよ」


 直後、俺の右手が『銀』の光に包まれる。光が剣の形を作り

実体化する。


「鎧よ。我が身を守るために出現せよ」


 先ほど右手を覆った時のようにこんどは体全体を光が包む。

 太陽の輝きを反射し煌めく鎧。



「っな!?」


 背後でロアが驚きの声を上げるが今はそちらに気を配る余裕はない。



「まさか本当に『白銀の剣』と『白銀の鎧』が使えるとはな」


 勝てる。俺はこいつに勝てる。


『グォォォォオオオオ』


 龍が雄叫びを上げながら先ほど同様にブレスを俺目掛けて吹き散らす。



「輝け。『銀花一閃』《ぎんかいっせん》」


 『銀』の光を纏った剣を居合抜きの要領で振り抜く。そのことによって

生まれた銀色の線状の衝撃波がブレスを切り裂く。


 

「相手が悪かったな、龍よ。お前の負けだ」


 俺は大きく息を吸って唱える。


『銀世界』


 あたり一面が銀の輝きに包まれる。『勇者依存』というハンデを

唯一無効化できる空間。この空間内だけが俺にとっての『自由』だ。



『グォォォオオオ』


 もう一度ブレスを吐こうとする龍に向かって告げる。


「やめとけ。この空間内では敵のあらゆる魔法の威力は半減される。

さらにこの白銀の鎧も相手の魔法の威力を半減する効果を持つ。つまり

お前の魔法の威力は本来の四分の一程度しか発揮できないってわけだ」


 果たして人語が理解できるのかわからないが俺は龍に丁寧に

説明してやった。


 どうやら俺の話がなんとなく理解できたらしく龍はブレス攻撃をやめ

爪による物理攻撃に切り替えた。


「まぁ、何をやってもこの状態の俺に勝目はねぇよ」



『奥義・銀嶺蒼華ぎんれいそうか


 剣の輝きが何十倍にも増す。両手で剣を握り音速を超える速さで

八回剣をあらゆる方向から振り切る。


 さきほどの一閃とは比べ物にならないほどの八つの衝撃波が龍の

体を切り裂いた。


『グォォオ・・・・ォォオオオオ』


 断末魔を上げながら龍は息絶えた。その体は八つに切り裂かれていた。



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