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6話 『雄叫び』


 ふぅ。しっかしランクEかぁ。俺のランクは勇者依存だから低い

としてもランクの基準はなんだろうか。考えられる要素としては

今現在の勇者の強さ。もう一つはかつての冒険における功績。

 

 まぁどっちにしてもこの勇者のランクが低いままだと俺の力

のほうも制限を受けるんだろうし強くなってもらわないと困るな。

 つってもそっちのほうは高ランクの魔法使いや戦士がいることだし

ゆっくり時間をかければ少しずつ上がっていくだろう。

 チームワークの件も含めてこのパーティーにはまだまだ時間が

必要みたいだな。


「!?」


 俺はさっと後ろを振り返る。なんだ、今の気配。俺と同じように

魔法使いと戦士が同じ方向を見ている。『何か』がものすごい速さ

でこちらに向かってきている。敵か味方か。いや、最強の勇者パーティー

を決めるって言ってたしこの世界じゃ他の勇者パーティーも敵になる

のか。つまり自分のパーティー以外は全て敵ということ。何にしても

気配的にどうもやばそうな相手だ。俺の勘が逃げろと伝えている。


「おい、ここからいそいでー」


『グォォォォオオオオオオオオオ』



 俺の言葉は雄叫びにより遮られた。雄叫びの方向を見て俺は絶句

してしまった。そこに、空にいたのは『龍』。あらゆる魔物の頂点

に立つもの。

 


「な……、龍だと!?」


 ロアも目を見開きながら呆然とつぶやいている。


 おいおい、しょっぱな敵が龍とは、演出的には盛り上がるけどよ。

 ロアやミラの慌て具合を見るにこの龍に余裕で勝つってのは無理

そうだ。それどこから恐らく……


「勇者、どうするの!?」


 ミラが急かすように勇者に指示を求める。


「え!? えっと、その……」


 そりゃぁテンパるよな。俺も一瞬我を忘れて呆然としちまったし。

 それでもすぐに冷静を取り戻せたのはかつての冒険で何度も修羅場

をくぐり抜けてきたからだろう。戦いにおいて一番大事なことは

勝つこと。言い方を変えれば『勝てる戦い』をすること。だが

このように突然降ってわいたような危機においてパーティーが

取るべき行動は一つだ。『勇者』を生かすこと。



「ミラ、それにロア!勇者を連れて逃げろ!」


「え!?」


「っな!?お前囮になるつもりか!?」


「そうするしかないだろう! この状況で最優先しなければならない

ことは『勇者』を逃がすことだ! 分かったらさっさといけ!」


 あぁーあ。まさか最初のエンカウントで命を散らすことになると

は思ってもいなかったよ。まぁでもここぞって時には勇者のために

命を懸けるのが勇者パーティーの務めだ。魔法使いや僧侶の代わり

はいても勇者の代わりはいないのだから。




「……っけ!お前一人が残ってどうする。俺も残ってやるよ」

 

 ロアがぽりぽりと頭を掻きながら背中に担いでいる剣を抜く。


「お前俺の話聞いてたのか?」


「ああ、聞いてたよ」


「だったらー」


「お前は勇者を殺したくないと思った。そして俺はお前をここで

一人で死なせたくないと思った。それだけだ」


 いや、それだけだって……。勇者を守れよ、勇者を。しかも

お前の中では俺が死ぬこと確定だったのか。まぁランクEの

雑魚野郎が最上級の魔物に勝てると思うほうがおかしいしな。



「はぁあ。仕方ないわね。あたしも戦うわよ」


「はぁ!?だからお前なぁ!さっさと勇者をー」


「あんたらの足止めなんて大した時間稼ぎにもならないでしょ。

どのみち龍があたしらを追ってきて噛み殺されるのがオチよ」



 たしかに。今の俺じゃぁ瞬殺されてもおかしくない相手だ。

 ミラは少しでも生存率を上げようとして皆で戦かうと

言っているのだろう。


「わ…わたしも戦います!」


 足だけでなく声まで震わせて勇者が頼りなく言う。

 気の強かったかつての勇者とは真逆の性格だが、芯は同じくらい

強そうだ。


「おし、いくぞ!」



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