5話 『新パーティー』
魔法陣が輝いたのは一瞬ですぐさま光は消えた。光だけでなく魔法陣も姿を
消していた。見間違いと言うにしては多くのものが見すぎている。
「!?」
突然俺の体が発光し始める。周りのクラスメイトたちが俺をみて騒いでいる
がそんな声は俺の耳には届かなかった。突然のことすぎて状況について
いけなかったからだ。そして光が完全に俺を包みこんだ瞬間俺の体は教室から
移動していた。
「!?」
さっきから驚いてばかりだが今回の驚きが一番大きかった。
目の前には見知らぬ男と女が計4人。内訳は男が一人女が三人だ。
この四人も俺のように飛ばされてきたらしくキョロキョロと辺りを見回して
状況を整理しようとしている。飛ばされた場所は『森』の中だった。
といっても光が木々の間から差し込んでいるので不安はない。ここから
学校は見えないしもしかしたら『日本』じゃないのかもしれない。
「えーっと」
四人の中でも最も幼い雰囲気を出している少女が声を出す。
「あの、みなさんその、」
「あたしは魔法使いのミラ。ランクはAよ。よろしく」
少女の言葉を遮り俺と同い年(俺は高校二年生で17歳)
くらいの女が自己紹介をした。Aランクか。かつて俺が倒した魔王の
ランクがSランクだったからそこそこの実力を持ってるってことか。
「俺はロア。職は戦士でランクはBだ。力には自信があるぜ」
俺より年上っぽい男が気さくなかんじで自己紹介する。いわゆる
頼れる兄貴キャラってやつか。
「僧侶のソラです。戦力にはあまりなれませんがみなさんの傷を癒す
ことならできます。よろしくお願いします」
おお。僧侶というだけあって非常におおらかな性格だ(僧侶の適正
があるものはだいたいこんなかんじなんだ)。
「あの、わ、私が勇者のレイです!!よ、よろしくおねがいします!
ランクはEです……」
え、こいつが勇者!?残りの職的に予想は付いてたけどさ。性格も
頼りなさそうだがランクのほうも心細すぎるぞ……。つかEってまずい
だろ。俺の『能力』的に。俺と同じように勇者のランクを聞いて不安
げな顔をしているパーティーの面々だったがひとり残る俺のほうを見る。
「俺は九条 雪季。ユキでいい。ランクはたぶんSだな。」
「はぁ!?何言ってんの?あんた」
ものすごい勢いで魔法使いのミラに突っ込まれる。なんか面白い
こと言った?
「見栄張りたい気持ちも分からなくはねぇがお前さんのランクはEだぞ」
「え!?」
え。E!?いやいや、それはないだろ。だって俺、Sランクの魔王
倒したんだぜ?どう考えてもSだろ。むしろ他に何があるよ。
「あんたねぇ。あたしらは勇者の持ってた『コレ』見たんだからあんたの最低限の
情報は分かるんだよ」
ミラが手にして掲げているのは一枚の紙だった。何か文字が書かれて
いるようだ。
「なんだそれ?」
「これはパーティー全員のランクや得意魔法なんかが乗ってるのよ。
この勇者持ってたの」
じゃぁなんでお前が今持ってるんだよ。絶対取り上げただろ。
しかしなるほど。つまりその紙には俺のランクはEと書いてあるわけか。
さっき勇者がEランクと言ってたし俺の力は『勇者依存』だがどうやら
ランクのほうも勇者に依存してしまうようだ。
「まぁ気にすんな。このパーティーにゃぁ俺とAランクの魔法使いが
いるからよ」
「あ、あの、すいません。頼りない勇者で……」
相変わらず頼りないな。まぁこんな戦士と魔法使いがいたらそりゃぁ
肩身が狭いよな。俺も同じ気分だよ。
「んじゃぁまぁ自己紹介はこんくらいでいいか。それぞれ前の冒険で
いろいろ思うところもあるかもしれねぇがこのパーティーで仲良くやろう
じゃねぇか」
「あたしは馴れ合う気なんてないわ」
ロアのムードを和ませようとする気配りに反するようなことをミラが言う。
こいつ協調性ってものがないのかよ。ピリピリしすぎだろ。もしかして前の
世界で何かあったのか?勇者パーティーっつってもいろいろあるからな。
俺のパーティーのように始めは険悪な雰囲気でも冒険を通して変わってくる
こともあるし、中には冒険が『途中』で終わってしまったパーティーも
存在する。
「馴れ合う気はないにしてもチームの統制を取ることは大切なはずだ。
このパーティーのリーダーは勇者だ」
俺は静に、されど堂々と言い放った。大事なことだ。勇者が自信を
失くせばパーティーは崩壊してしまう。
「確かにユキさんの言うとおりですね。これからの行動は勇者さんの指示
の元行っていきましょう」
「俺もそれで問題ないぜ。それでいいよな、魔法使い」
「……ええ、かまわないわ」
絶対文句あるだろ、という台詞は飲み込む。まぁ俺も現段階ではパーティー
の統制は魔法使いか戦士が取ったほうが安定するとは思うが最初が肝心だから
俺たちがサポートするくらいでちょうどいいはずだ。
にしてもランクEの勇者、ね。昔どんな冒険をしてきたのか気になるところ
だが最初の暗い顔といいもしかしたら…・・・
なんにしても俺の新しい冒険は前途多難なようだ。