プロローグ
勇者。光の加護を与えられし者。
戦士。強靭な肉体を持つ者。
僧侶。癒しの力を持つ者。
魔法使い。魔法に精通せし者。
勇者のパーティはこの四人で成る。しかしとあるパーティには
さらに一人、『勇者の右腕』と呼ばれる者がいた。
あらゆる職の適性を持ちながらも召喚された世界に彼よりも適性
を持った者がいたという事実によりどの職にも付けなかった者が。
勇者が『光』なら魔王は『闇』の属性に特化する。
されどその男はそれら全ての属性を超越する属性『銀』を持っていた。
ある世界で一人の魔王の命の灯火が消えようとしていた。
「っふ、さすがだ。誰がなんと言おうと、俺にとっての『勇者』は貴様だ」
「っへ、ありがとよ。『魔王』のお前にそう言ってもらえると嬉しいよ。まぁでも
この『世界』じゃ俺はどこまで行っても『勇者の右腕』だけどな……!」」
「それではこれで最後にしようではないか」
「ああ」
そう言って二人の男が互いに剣を握りしめ走り始める。
二人は一気にトップスピードに乗り、そしてその直後。
一閃。『魔王』と呼ばれた男の首が宙をまい、そして地面に鈍い音を立てて
落下した。
『勇者の右腕』と呼ばれた男は『銀』の輝きを放ちながら綺麗な一閃を描き
魔王の首を切り落としたのだ。
「終わったな」
異世界『アルベルツ』の魔王が死んだ。