序章 探求者《シーカー》と世界管理組織
綺羅 荒太、初の投稿作品となります。
初投稿故に至らぬ点が目立つと思いますが、その点はどうかソフトに指摘をおねがいします。
探求者
それは一つの太陽系を、銀河を、宇宙を突き破った先に存在する時空世界の住民である。
彼らは無限と呼ぶには余りにも大きな時と空間――――時空の海をねぐらにし、数多の世界に侵入するのだ。その目的は様々、無限の世界への限りなき探求、強者を探す修羅の道を歩むため、自身の安住の地を求める。彼らの生き方は様々であった。
だが、彼らの生き方はひどく不安定であった。全ての世界が自分達に適しているとも限らない、中には灼熱の世界がいくつも連なる世界や異常重力帯に覆われた星ばかりの世界だってある。それに大半の生命体は命を繋ぐために食料等の糧が必要となってくる、彼らの大半は志半ばに朽ち果てていくのが当然だった。
だがそれでも、探求者達は捨てられぬ夢を胸に抱き、無限の時空へとくり出すのだ。たとえその身が傷つき、朽ち果てるとしても。夢と浪漫を求める者は後を絶たず、この時にもまた一人、新たな探求者が生まれていることだろう。
だが、その生活に一つの変化が現れたのだ。
この時空には星の数以上の世界が存在し、それと同じかそれ以上の物語が存在している。そしてそれに値する程の数多の並行世界が発生するのだ。
例えて言えば、一つの世界で一人の少年が一つの林檎を口にしただけで、その林檎の味の変化でそれだけの並行世界が生まれる。そしてその並行世界からは少年の次の行動次第で更なる分岐を生み出し、その分岐からまた多くの分岐が生み出されるのだ。言うなれば並行世界は常に、爆発的に生み出されているのだ。
そこまで世界が生み出されれば、その中には本来の世界『オリジナル』とは全くかけ離れた世界が生み出される。そしてそれに目を付け、その世界を侵略し始める者達が現れたのだ。
一人がそれを行えば、周りの者達も同じような事を行う。他の世界の技術を与え、戦争を起こさせるもの。その世界の実力者達を拉致し、クローン兵士を作り出して他の世界に売り込む者。その世界の美女達を自身の欲求の為に犯し、更には奴隷として売り出す者もいた。
そして、時空世界の秩序は無いに等しきものとなった。そこにあるのは腐れた信念と愚者共による侵食と腐敗が万永し始めたのだ。
だが、それを指を加えて見過ごす者だけでは無かった。時空世界には時空管理組織と呼ばれる巨大な組織が存在していた。それは読んで字の如く、時空に点在する世界を管理する組織であった。基本的にはその世界に来る時空旅行者への対応、その世界に流れてくる他世界の技術等を事前に除去するのが主であった。だが年々増え続ける時空犯罪者達の影響で、時空旅行者は減り続ける一方であった。旅行者の数が減れば、それだけ管理組織の儲けが減るのは誰でも分かることだった。管理組織が保有する軍事力で犯罪者に対抗していた時期もあったが、管理組織の戦力は管理する世界に置いてバラバラであり、幾つもの戦力の混合した犯罪者達には遅れを取ることも少なくなかった。故に時空管理組織は衰退の一方を辿るだけであった。
だがある時、上層部の人間が一つの案を思いついた。それが『シーカーズギルド』の設立である。
探求者の人生で最も起きる出来事はやはり戦いであった。その相手の大半は同じ探求者であったが、時にはその世界の住人と交戦することがある。世界の住人の中には軍事力で戦う者も入れば、超能力や魔法、さらにはそれらに当てはまらない力を持つ者さえいた。
それ故に時空に住まう探求者の大半は特殊な能力を身に付け、その世界の強者達と同等かそれ以上の実力を持っていた。管理組織はそこに目を付けたのだ。
『シーカーズギルド』は所属した探求者達を、その世界に侵入した時空犯罪者達を討伐させようと言ういたって単純なシステムであった。だが、これには管理組織側の策略があったのだ。それもそれが適用する世界は管理組織に属する世界のみ、つまりどこの管轄に入っていない世界には探求者を派遣する事は無いのだ。それに管轄下の世界は実質的管理組織に財経は疎か、軍事すらも管理しているのだ。故にその世界のトップ等から莫大な金をせしめる事が出来き、探求者には一%にも満たない報酬を与えているのだ。それは組織にとっては大変都合の良いシステムなのであった。
さらに、時空犯罪者達も同じ位の力を所有していた、中には大規模な時空マフィアと呼ぶに相応しい勢力を持った者達もある。下手な世界であれば一瞬の内に武力的侵略すら可能であった、それを敵に回すと言う事はどれだけ愚かな行為かは誰が見ても理解できる。
だがどれだけ危険であろうとも、探求者達は僅かながらも確実に得ることが出来る糧と資金には、首を縦に振るしかなかった。それ程時空間で生き抜くとは過酷な物であった。
そして現在、探求者の大半は管理組織の『シーカーズギルド』に所属し、数多の世界を忙しなく駆け巡っていた。
探求者達はギリギリの糧と僅かな金を求め、時空管理組織達の使い捨ての兵器当然の扱いを受けてきていた。管理組織側からしてみれば、使い捨てといくらでも補充の利く探求者はやはり便利な兵器であったのだ。
その扱い故に、探求者の中には管理組織に属さぬ者達もいた。彼らは自分達でギルドを立ち上げ、所属する探求者達に平等な報酬を与えていた。だが、それでも圧倒的力を持つ管理組織には遠く及ばず。中には管理組織所属の探求者達に壊滅させられたギルドもあった。
それだけでは無い、管理組織はギルドによって得た莫大な資金を使い更に勢力を広めていった。その結果、管理組織はこの時空において最も勢力のある存在となったのだ。それに伴い時空犯罪者達も管理組織に対抗する為に勢力を広げ、更なる犯罪を起こす事となる。管理組織と時空犯罪者は互い同時で争い、それに伴い世界から貪欲な蛭の如く、金と言う生き血を吸い上げていた。
どちらにせよ、今やこの時空世界は混沌の渦の真下へと巻き込まれていた。今や生き残るには、どちらかの勢力に属し、服従していくしかなかった。
只一つ、一つのギルドに所属する二人の探求者以外は。