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第七章:2丁拳銃VS2丁拳銃

「ちくしょう・・・・何が2丁拳銃だ。いきなりロケランを撃ち込みやがって」


ヴィンセントは汚れた衣服を叩きながら、木の影に隠れていた。


小屋が爆発する前、ヴィンセントは脱出ルートで下に通じる階段を伝い逃げた。


二人も一緒だ。


それのお陰で難を逃れたが、衣服が爆風などで汚れた。


「たっく、“ベルサーチェ”のスーツを台無しにしやがって・・・・・・・・・」


ベルサーチェ・・・イタリアのファッション・デザイナーであった“ジャンニ・ヴェルサーチ”のブランドだ。


そんな衣服も爆風などで見るも無残な汚れ塗れ。


愚痴の一つや二つ零したくもなる。


しかし、報復に行くのにわざわざ高級ブランドの服を着て行くのもまたどうか、と思うが・・・・・・・


「必ず叩きのめしてやる。俺の一張羅を台無しにしたんだ。簡単に死なせるか」


ヴィンセントは一人、怒りを露わにしながら懐からマニューリンMR73を取り出した。


長さはコンバット・シューティング向けに作られた3インチ。


フランスのマニューリン社が開発したリボルバーで、357マグナム弾を撃てる6連発だ。


元はGIGENのサイド・アームとして使用されていたが、その堅牢な造りと芸術的な仕上がりが人気を呼んだ。


言うなればフランス製のコルト・パイソンと言えるだろう。


「どうするんだよ?あいつ今度は、アサルトライフルで撃って来たぞ。・・・・・・・・うわぁ!?」


男は木の影から顔を出して相手の出方を見たが直ぐに引っ込んだ。


二丁拳銃の殺し屋が今度はFAMASを取り出したのを撃って来た為で、何発か木に食い込む。


二人は頭を両手で掲げると膝に顔を押し付けて震え始めた。


「ちっ。あの野郎、舐めた真似をしやがって」


二人を尻目にヴィンセントはMR73を改めて持ち直した。


「お前ら、ここを動くなよ?」


ヴィンセントは二人に話し掛けてから木の影から躍り出た。


マニューリンMR73が火を吹いた。


弾は38スペシャル弾で殺し屋の肩を掠めた。


だが、怯んだりはせず逆に自分の居場所を教えてしまった。


「ほぉう。この闇の中でよく当てられるな」


殺し屋は笑いながらFAMASの銃口をヴィンセントに向けて引き金を引いてきた。


「おい、2丁拳銃。お前の噂は聞いて入るぜ?ベレッタを2丁操る殺し屋で、もう引退したんじゃないのか?」


ヴィンセントは弾丸をギリギリで避けながら、またMR73を撃った。


弾は2丁拳銃の頬を掠め、掠り傷を負わせる事に成功した。


「あぁ。だが、今を時めく“切り裂きジャック”と戦え、と言われたんだ。ここで死ぬにしても良い土産だ」


2丁拳銃は空になったマガジンを捨て新しいマガジンを装填しながら答えた。


余裕が満ち溢れており、それがヴィンセントの癇に障った。


「ちっ。この変態野郎が!!」


ヴィンセントは舌打ちをして今度は連続で引き金を引いた。


何発か手応えを感じたが何か変だ。


「防弾ベストか。・・・・・味な真似を」


ヴィンセントは弾を喰らっても血が出ない感覚を感じて、防弾ベストを着ていると判断した。


防弾ベストを着ていても肋骨が幾つか折れている筈だし、近くに命中していれば致命傷を与えられる筈だ。


それなのにそれが起きない、という事は2枚重ねで着ているのか薬をやっているのかのどちらかだ。


「経験の賜物だ」


2丁拳銃は勝利は目前といった口調で答えた。


「ふんっ。狡猾の間違いだろ?爺が」


再び木の影に隠れたヴィンセントはMR73をスイング・アウトさせてエジェクター・ロッドを後ろに押して弾を排出した。


そして新しい弾を6連発まとめて装填可能なスピード・ロッダーで装填した。


「リボルバーか。ヨーロッパの殺し屋のくせに“野蛮”な物を使う奴だ」


「少なくとも2丁拳銃って渾名を持ちながら、まったく使わない奴よりマシだぜ」


ヴィンセントは挑発するように笑いながら、シリンダーを手で押すようにして戻した。


アニメや映画などでは、大きく振り被るようにして戻すが、あれでは弾が途中で抜けたりするし、ちゃんと収まらない。


だから、本来は手で押さえるようにして戻すのだ。


ヴィンセントはMR73を左手で構えて、木の影から狙いを定めFAMASの銃口を狙い撃った。


2丁拳銃は即座にFAMASを手放した。


FAMASは暴発して使い物にならなくなった。


「銃口に当てて暴発させたか・・・・・・貴様のような小童には、愛銃を使う程ではないと思っていたが・・・冥土の土産だ。見せてやろう!!」


2丁拳銃の懐からベレッタM92FSを取り出した。


通常のマガジンを更に延長させた20連発マガジンだ。


セーフティー・レバーを外して、引き金を引いた。


何とフルオートで撃って来た。


「ちっ。違法改造かよ。だが、集弾率は最悪だな」


拳銃でフルオートをやっても集弾率を求めるのは無理だ。


必ず散らばる。


案の定というか2丁拳銃のベレッタも集弾率が悪かった。


あれならセミ・オートで撃った方がよっぽど命中率が良いだろうに・・・・・・・・・


「いっちょ勝負に出るか」


ヴィンセントは懐からスコーピオンVz61を取り出した。


右手にスコーピオンVz61を持ち、左手にMR73を持つ。


こちらも2丁拳銃となった。


木の影から躍り出たヴィンセントは2丁拳銃に突進した。


「はっ、死ぬ気か?馬鹿が!!」


2丁拳銃は、笑い引き金を引いたが、カチッ、と乾いた音しかしなかった。


「弾切れか」


急いでマガジンを排出して、装填しようとした。


しかし、それよりもヴィンセントの足が速かった。


スコーピオンを2丁拳銃の足から膝に狙いを定めて引き金を引いた。


パパパパパン


小さい音がして2丁拳銃の足と膝を撃ち抜いた。


「くっ・・・・・・・」


2丁拳銃は血を流しながらも新しいマガジンを装填したベレッタを向けようとした。


だが、そこで息絶えた。


防弾ベストを貫く大きな弾。


38スペシャル弾ではなく357マグナム弾だった。


大型獣などと遭遇しライフルが使用できない時の護身用としてマグナム弾は重宝されているが、80年代は法的機関もリボルバーを愛用していた。


そのため357マグナム弾を撃てる拳銃を使用していた。


ヴィンセントのMR73も357マグナム弾を撃てる。


あの時、38スペシャル弾ではなく357マグナム弾にしていたのだ。


相手が防弾ベストを使用しているなら、マグナム弾を使用しよう考えたのだ。


しかし、マグナム弾でも防げるベストが出て来ているから、3発を同じ個所に撃ち込んだ。


3発も同じ個所に撃たれれば、流石にマグナム弾を防ぐベストでも意味を成さない。


案の定、2丁拳銃のベストを貫き命を落とした。


「今時の2丁拳銃ってのは、こういう風に使うんだよ。爺さん」


ヴィンセントはスコーピオンから出る煙を息で消して呟いた。


2丁拳銃は既に息絶えているから何も答えない。


「ん?」


スコーピオンとMR73を仕舞い、背を向けようとしたヴィンセントだが首に何か光る物を見て、屈んで見てみた。


光る物は小さな鎖で繋がれた銀貨だった。


「三途の川の渡し賃か。銀貨なら釣りが来るぜ。まぁ、あの爺も一緒に葬るから釣りの心配は無いか」


ヴィンセントは2丁拳銃の両手を合わせて拳銃を胸元に置いてやった。


彼なりにかつては名を馳せた老殺し屋に対する敬意の積りかもしれない。


「じゃあな。爺さん。何れ地獄で会おうぜ」


そう言い残し、ヴィンセントはMi5の二人を連れて闇へと消えた。


後に残されたのは瓦礫の山となったアジトと壊れたFAMAS、そして血まみれで倒れる年老いた殺し屋だけだった。


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