第四章 完璧美少女JKは家庭的!
私は完璧美少女JK諸刃剣だ。
完璧美少女JKとは成績運動神経容姿性格、とにかく全ての能力が完璧な美少女女子高生のことを指す……ってやめろこら!藁人形を編むな!
私の写真と五寸釘を持って、神社に向かうな!こら!ご丁寧に目の部分に釘を刺すんじゃない!
……コホン。
気を取り直そう。
要するに完璧美少女JKというのは完璧であるが故に、様々な物事を完璧にこなさなくてはならないということだ。
成績運動神経容姿性格。
そして、そう。
それは――裁縫なんかも。
「何を縫えばいいか分からない、ねぇ……」
「そうそう。何でもいいから次の家庭科の授業で実生活で役立ちそうなものを何か一つ、裁縫で作らなくちゃいけないの、何がいいと思う?」
昼休み。
食堂。
スマホをいじりつつ、私と同じように冷やし中華の麺をすすりながら興味なさげに呟く神戸らのに、私はそう返した。
神戸らの。
らのという珍しくも可愛い名前を持つこの少女は(本人は呼ばれるのを嫌がっているのだが)数少ない、というか、唯一、たった一人の、中学の時からの私の友人だ。
というのも、私とらのが所属している第一高校というのは当然、私が入学しているくらいなので偏差値がものすごく高い(プライドも無駄に高いとか頭が高いとか言わないで)。
そのため、そもそも私の成績についてこれる人がらの以外、中学の時はおらず、結果、同じ中学校でこの高校に入学できたのは私たち二人だけになってしまった、というわけだ。
ちなみに、そんならのなので、当然私同様頭がいい(すいません読者の皆様、銃口をこちらに向けるのはやめていただけないでしょうか)。
が、それは実際の成績と言うよりは、あくまで素の能力についての話。
成績自体は私のだいたい三十くらい下の、中の上くらいなのだが、所謂らのは地頭と効率の良さで乗り切るタイプで、それ故に成績も中くらいにとどまっているというだけ。
実際は私なんかよりも数倍頭がキレると思っている。
そしてそんな性格は見た目にも現れるのか、顔は眠たげな眼をした気だるげな美人という感じ。
髪型もさもテキトーに切りそろえましたと言わんばかりの黒髪のショーットカット。の、はずなのだが、そんな一切努力を感じられないビジュアルなのに、それがまたやけに似合っている。
賢いと言うより、スマート。
それが神戸らのに対する私の、約三年強、彼女と共に過ごしてきて得た印象だ。
なるほど。だから胸の大きさもスマート――
「なぁ」
「何?今、読者の皆様に私とらの輝かしい紹介文を提供するのに忙しいんだけど」
「読者の皆様とか言うなよ……いや、私の紹介はともかく、何で、お前、自分のことを完璧美少女とか嘘ついてんの?」
「ぶ!?」
思わず冷やし中華をどんぶりの中に吹き出してしまった!な、な、なにを言っているのだこのおなごは!
「う、嘘じゃないでしょ!私が完璧なのは、らのを含めこの世界の全ての人間が認める事実でしょ!衆知の事実でしょ!秀知院学園でしょ!らのも私が完璧美少女JKって認めてるから最高に気の合う友達でいてくれてるんでしょ!」
「秀知院学園って……どっかの書記みたいに言うなよ……。衆知っていうか、お前はどっちかって言うと羞恥だろ。よく恥ずかしげもなくそんな台詞を吐けるもんだ。それに私たち、そこまで大それた友人でもねぇし。お前と知り合ったのは、お前が完璧だったからじゃなくて、中学でお前だけが百合系のアニメ見てたからだし。あと、お前のことを今更完璧と思っている人間なんて読者の中にもこの世界の片隅にもいねぇ」
「やめてよ!皆薄々気が付きかけてることを言わないで!そこは合わせてよ!私は完璧じゃないかもしれないけれど、それでも読者を騙すために嘘でもいいから私を完璧って言ってよ!お願いらの!」
「そう思われたいんだったらせめて人が嫌がっているあだ名を使うのを控えろ……しかもお前、私の性格と引っ掛けて私の胸をスマートとか言ってた――」
「で、裁縫の件だけど、何作るのが良いと思う?アイデアを求めます」
「完全に無視……いや、完璧に無視しやがった……。ほんと、全く以て完璧美少女JKじゃないくせに、そういうところだけは完璧だよな、お前は……」
何故かきゅうりを齧りながら苦い顔を浮かべるらの。あれ?この冷やし中華のきゅうり、そんなに苦かかったかな?
が、流石は私の友人。どれだけきゅうりが苦くとも、友人の私には甘いのか、
「まぁいいや……で、裁縫で何作ればいいか、だっけっか?うーん」
と、さっきの私の疑問に答えるべく、腕を組んで目を瞑り、眉根を寄せて考えてくれる。もう!ツンデレなんだから!
「あー、コピックとか?」
考えてくれてなかった。
ただただ自分が今欲しい物を言ってきただけだった。
「裁縫で作れるわけないでしょ。ていうか、らのの趣味じゃない、それ。他は?」
「うーん。あ、ブックカバーとかどう?」
「それなら実用的ね。うーん、でも、今はいらないかな。けど、何でブックカバー?」
「私が欲しいから。できれば百合っぽいイラスト付きで頼むわ」
「それ、私のものにならないじゃない!百合のイラストなんて授業中に付けられるわけないでしょ!」
「はぁ……人がせっかく考えてやってのに……礼もねぇとか。なんかちょっと残念だな……」
「何で私が悪い感じになってるの!おかしいでしょ!」
「たしかにお前の頭はおかしいけど、それでもそんなに自虐的にならなくても……」
「私の頭がおかしいって言ったんじゃないの!らのをおかしいって言ったの!あと、私の頭はおかしくない!」
「いや、おかしいだろ」
「むきー!」
テーブルを叩いて抗議する私。
はぁ……。まったく。相変わらず口が鍛冶屋なんだから。
言葉の刃がいちいち鋭すぎる。
私は頬杖を突き、食堂の窓の外を眺めた。
そしてもう一度溜息を吐き、同時に、この私の気持ちを表すのに最適な一文も吐き出すことにする。
「裁縫だけに、これがほんとの、いとおかし」
「お前、それが言いたかっただけだろ」
もちろん、そういう『いと』はなかった。
ご一読、ありがとうございました。神戸らのです。次回も楽しんでいただけると幸いです。
……なんだよ。録音ブースの外からうるせぇな。……何?……完璧な私の出番を奪ってるんだから、もうちょっとちゃんとやれ?完璧って誰のことだよ? は?お前?いや、今もともかく、中学の時なんてお前、滅茶苦茶ナード……うわ、なんだよ、窓ガラス叩くなよ……まだ読者にも言ってない秘密をバラすな?ああ、言ってなかったのか。めんごめんご。
仕方ない。それじゃ、一応真面目にしゃべっとくか。
一個、きちんとした真実を。
諸刃剣はこの作品を作者の妄想とかのたまってましたが、この作品は厳然たる、諸刃剣に起きた現実を文章にしただけの――(以下録音ブースに鼻水涙目で乱入してきたどっかの自称完璧美少女JKの妨害により録音できず)。




