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私は完璧美少女JK諸刃剣だ。
完璧美少女JKとは、成績運動神経容姿性格、とにかく全てが完璧な美少女JKのことを指す。
そして、成績運動神経容姿性格とにかく全てが完璧で美少女であるこの私、諸刃剣は完璧美少女JKを名乗るにふさわしい人物であるということだ。
………………。
っておい!
読者ども、おい!
ひっさしぶりに自己紹介させてもらえてよかったー!なんて思って安堵してたら、なに悟った顔でこっち見てんだ!
やめろ!そんな「にこっ(`<`)」っとアルカイックスマイルをこっちに向けるな!まるで私が些細なすれ違いで家出したは良いが結局行く当てが無くてとぼとぼ家に帰ったら玄関先で待ってた母親に出迎えられた少年少女みたいだろうが!やめろ!若気の至りじゃない!
……ふぅ。なんだかもう普通に自己紹介できなさ過ぎて、逆にそっちの方に安心感を抱き始めている私がいて、それも非常に腹立たしい限りなのだけれど、とにかく私は完璧美少女JK諸刃剣だ。誰が何と言おうと私は完璧美少女JKなんだ。うん。そうなんだ。
そして、例によって私は完璧美少女JKであるが故に、全てのことを完璧にこなさなければならない。何故なら完璧美少女JKだから。所謂完璧美少女JKだから。
それは、そう。
授業中のグループ活動の時なんかでも。
「それじゃさっき教えたのを踏まえて、この二次方程式の五つの問題を……あー、流石にいきなりは厳しいか。じゃあ班で相談し合って解け。制限時間は解答時間含めて15分な。解けなかった班は全員宿題5乗だから。領●展開して無●空処だから。もしくは一枚脱ぐこと。いいな」
六時限目。
授業中。
数学教師らしい振りをしつつ、とても教師が発しているものとは思えないほどえげつないことを棒読みかつ無気力な口調でさらっと言い放った数学教師の神済先生は『班』、つまりは近くの座席の六人で集まってのグループ活動を命じた。
相変わらず数学教師のくせに発言のリスクに関する計算ができない人だ。なんだよ無量●処って。あと一枚脱げって……美人な女教師だから何とか許されてるけど、これが男だったら間違いなく即刻処されているぞ。無量空処されてるぞ。
とかなんとか。
空処ならぬつまらない、空虚なツッコミを心の中でかましつつ、私は中学の給食の時みたいに机と椅子を移動させる。
そして移動させながら、とあることについて考えていた。
先生がさっき命じた、所謂グループ活動というものについてだ。
私は思うのだけど、このグループ活動というもの。
一見すると仲間と協力して問題を解くという、コミュニケーション力も鍛えられつつ、学力も身に着けられる、いかにもハッピーセットのようなものに見える。
が、ほんとのところはどうなのだろう。
私には学力の高い生徒だけが活躍し、学力の低い生徒は置いてけぼり、つまり何もできず黙り込んでしまうだけのもののように思える。
つまりグループとしての解答は出るかもしれないが、それはもともと学力の高い生徒が独力ではじき出した解答であり、グループの話し合いの結果出されたものではないのかということだ。
コミュニケーション力の鍛錬の場となる話し合いは行われず、学力の低い生徒はただ黙しているだけなので、学力の向上もなされていない。
ハッピーセットのように見えてその実はただのアンハッピーセット。
もちろん頭が良い子と仲のいい頭の悪い子が同じグループになれば、その場合は学力の向上が少なからず図れる可能性はあるにはあるが、そんなのは四葉のクローバー。
ほとんどが害を成すだけのただの雑草なら、そんなものはさっさと刈り取ってしまった方がよいのではいだろうか。
以上の理由から授業中でのグループ活動は廃止にするべきで……い、いや!決して私の苦い経験に、クローバーだけに根付いているとか、そういうことでは決してなく!苦い経験が根深く残っているわけでは決してなく!私は完璧美少女JKなんだ!中学時代の初めの頃は頭が悪かったとか、そんな根も葉もない事実は一つもない!
「……何一人で右手団扇ごっこしてるんですか、諸刃さん。さっきから私の肩にばしばし当たって痛いんですが……そんなことしても苦い過去は吹き飛んでいきませんよ?」
机を並び終えて椅子に座り、心中で読者に嘘偽りない誠実な私の過去を説明していると、丁寧な口調ながら割かし辛辣な言葉が割って入ってきて、ようやく私は我に返った。
丈の短い、みずみずしい、生太ももむき出しのスカート。
金髪サイドテールというギャル丸出しの出で立ちのくせに上品な口調に落ち着いた声音。
そして、いいとこのお嬢様を連想させる可愛らしい顔立ち。
そう、このアンバランスな萌え要素を兼ね備えるのは、確か……確か……蝶園――
「あ、ごめん。ギャル委員長。何か言った?ぼーっとして聞いてなかった?」
「諸刃さん諸刃さん!今完全に地の文で名前言いかけましたよね!?完全に苗字まで言ってましたよね!?ねぇ!?まさか諸刃さん!今まで私のことギャル委員長って呼んでたのは、覚えてなかったからじゃないんですか!?忘れてたとか覚えづらいとかじゃなくて、単なる悪ふざけや悪口で、これまでそう呼んですか!?私、何か諸刃さんに嫌われるようなことしましたっけ!?覚えが悪くなるようなことしましたっけ!?」
ぶんぶんと、私のセーラー服の胸倉を掴み揺さぶり、いわれなき怒りを涙目でぶつけてくる蝶園陽華――じゃない。普通に本名言ってしまった――ギャル委員長。
嫌だなぁ。そんなわけないじゃないか。
過去の辛い思い出やコンプレックスを努力して乗り越えようとする健気な委員長。しかも意外にも歌が下手という可愛いらしい弱点もあるって、私以上に完璧でムカつく、なんてこと思っているわけないじゃないか。さっきの音楽の授業での私のモノローグはあくまで作者への文句であり、ギャル委員長自身に憎悪憤怒嫉妬嫌悪なんて抱いているわけないじゃないか。それでギャル委員長、何か『用か』い?
「覚えてるじゃないですか!完全に名前覚えてるじゃないですか!今、完全に私の下の名前の『ようか』の部分だけ強調して発音したじゃないですか!やっぱり単なる悪口じゃないですか!」
見た目ギャルのくせに、すぐに瞳を涙で濡らしてぐすんぐすんと猫のように可愛らしく泣き始めるギャル委員長。うーん。可愛い。そしてやっぱりこういうギャップが死ぬほど憎たらし……じゃなかった、憎さ余って可愛さ100倍。あぶねえつい本音が出るところだった。
「はぁ……まぁいいです。それで、問題の方は大丈夫なんですか?解答が出ないと、一枚脱がなきゃいけないらしいですよ?」
どうやらお尻を揉んでやると我を取り戻すのか、さっきの音楽の授業の時のようにお尻を右手で揉んでやると、私の胸倉を突かんでいたその手で、指先を尻の肉にめり込ませていた私の右手を払いのけ、ため息を吐いて座席に座ってそう問うてくるギャル委員長(揉んだ瞬間、蜂や蠅を払うように手をはねのけられた。まったく、流石ギャル。ツンデレさんだなぁ。それはそうと、なんか私の手、いつの間にか骨外れてるんだけど。何かあったっけ?さっきギャル委員長に手をはねのけられてからこうなってるんだけど。でも、大親友のギャル委員長が、私にそんな酷いことするわけないしなぁ不思議だなぁ)。
最近、二日に一回くらいの頻度で外れるので、もうすっかりこなれてしまった、右手の骨をはめる動作をささっと私は行って、
「脱ぐのはこの後、絵師さんが見開きでギャル委員長のヌードを載せてくれるから良いとして、問題の方はもちろん大丈夫。私は完璧美少女JKなんだから。大船に乗ったつもりでいて」
「二日に一回、骨が外れているのなら、私が全力で嫌がっているっていうのをいい加減、分かってますよね?あと、私のヌードが載せられるっていう、全く大丈夫じゃない問題が発生しているんですが……まぁ、それは一旦置いておくとして、ほんとに大丈夫なんでしょうか……。私、いつの間にか、諸刃さんが大丈夫って言う時は、大抵悲惨な結果に終わるっていう経験則が身に付きつつあるんですが……安易に乗れないですよ。見開きにも大船にも。私の体は乗せられないですよ」
「そんな酷いこと言わないでよ。そんなんだからギャル委員長、この後のツッコミ以降、作中で一切台詞がなくなっちゃうんだよ(新人賞に応募した際の話です。もしかしたら今後出番があるかもしれません)。ま、いっか。それより早いとこ問題解こ。時間もあんまりないことだし」
「よくありません!さりげなくシャーペンをノートに走らせ始めないでください!今とんでもない台詞を口走りましたよね!?え!?嘘ですよね!?私、このツッコミ以降、ほんとに台詞、一切なくなるわけじゃないですよね!?ちょっと!諸刃さん!諸刃さんってば!聞いてください!何無視してるんですか!ちょっと!謝る!謝りますから!台詞ください!完璧美少女JK様!」
学生の本分は勉強なので、授業中は真面目に勉強しなければならない。
そして私は完璧美少女JKなので当然、先生の言う通り、数学の問題を解かなくてはならない。うん。やっぱりそこまで難しくなさそうだ。3分ぐらいあれば余裕だろう。なんか隣で「セリフセリフ」と妖怪みたいに呟いて集中を乱しに来る名前の知ら無い怪物がいるが放っておいていいだろう。ド●ネーターで消されるまでもなく、この回でほんとうに消えてしまうのだから。
そして、大体五分ぐらい経った頃だろうか、
「結構難しくない?」
「やべえ俺、ブラジャー脱がねぇと」
と、そんな風に、みんなあらかた解けたり解けなかったりしたのか、教室中がざわざわし始めた。
うちの班も例外ではなく、元々仲が良かったのか、私たちの班の女子二人も、
「ねーねー。二問目解けたー私わかんなくてさー?」
とか、話し始めている。
うーん。
どうやら最初に先生が言っていたように、そこそこ、この問題は難しかったらしい。効く限りでは脱ぐ班が五割ってとこか。
――しかし、我が班は大丈夫だ。
ふっ。何故大丈夫かって?
当然、私が完璧美少女だからだ!
私さえいればオールオッケーオールマイト!問題という名のヴ●ランは私さえいれば存在し得ない!数学だけに即刻プラスウ●トラで退治してさしあげよう!私が来た!
私は、私がいなければ絵師さんの手によって口絵で脱がされてしまっていたであろう、ギャル委員長ほどではないが、結構いい体をしている、さっきから問題を前にあーだこーだ言っている、私たちの班のJKたちの前へ身を乗り出して、
「ああ、それはこうこうこうだよ。あーやってこうすればこうなるの」
彼女らの間に割って入り、親切丁寧に二問目の解説をしてあげた。
どうだ!この完璧な解説は!
東●ハイスクールの●修先生も裸足で逃げ出す解説だろう!完璧でしょ!
……と、さぞ、突然現れたヒーローに破顔し、感謝感激雨あられだと思っていたのだけど、
「え……あ、うん。ありがと」
私が教えてあげた直後、彼女らの一人が小さく私にお礼を言ってくれただけで、何故だかその後は、先ほどまであれだけ盛り上がっていた二人の会話は止み、マッチングアプリで出会った男女が共通の話題が無くて困っている時の雰囲気みたいになった。
……あれぇ?
笑顔こそ浮かべているものの、突然雨に降られた時みたいな引きつった笑顔になっているような気もするんだけど……い、いやいや、気のせいだよね?
「ねぇ、三問目のこれって……」
と、そんなことを考えている内に、さっきの二人とは別の、残り二人のメンバーも相談し始めた。よ、よし!今度こそ!
「ああ、それはね。これをこうすればいいんだよ。この点は出ないの!ね?できたでしょ?」
ぱぱぱっと今度は私の完璧なノートの途中式も見せてあげつつ、簡潔かつ分かりやすい、完璧に完璧を重ねたような解説をして見せる。どうよどうよ!この私の代●木ゼミナールの荻野●也先生も、机に乗せた足を下ろしてしまうような完璧な解説は!どっかの予備校数学ヤ●ザも指詰め覚悟で逃げ出すほど恐ろしく完璧な解説だろう?これだけやればさぞ彼女たちも喜びひれ伏し庭かけまわる――
「あ……うん。えっと……どうも」
……あれえ?
あっれれぇ?
おかしい。
今度はさっきと違って苦笑いさえ浮かべていない。
私から目を逸らし、二人とも気まずそうに目を伏せてしまっている。
おかしい。
何故だ。
私はグループのために、みんなの服を脱がさないために、解き方含めた完璧な解答を教えてあげていただけなのに。
何だ、このどんよりした空気は。この点はでねぇよお!って言った方が良かったのかな?
というか、他の班からはわいわいと話声が聞こえ、明らかに活気が感じられるのに、何故かうちの班だけお通夜の時の空気みたいな……。
「「「「…………」」」」
「あ……」
瞬間、私が説明してあげた四人の気まずそうな目線が一斉に私を向いたことで、私はやっと理解した。
うーん。
なるほど。
なるほどなるほどなるほど。
流石完璧美少女JKの私。
推理力も完璧だ。
…………。
私のせいかあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
そうだ!
そうだそうだそうだ!
他の班は問題が解けないからこそ、わいわいやれていたのだ。
人狼ゲームと同じだ。
犯人が分からないからこそ、議論が盛り上がる。
ようは問題の難しさが話題の種だったわけだ。
その種を、私は自ら摘んでしまったのだ!
しまった!あれだけグループ活動の害悪性を批判していたくせに、私が一番その害悪に寄与してしまっているじゃないかああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
「「「「…………」」」」
「う……」
四人の何か話せという視線が痛い。
思わず座席ごと後ずさりしてしまう。
どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどうすれば!助けて!どどどどどドーラえ●ん!
わ、話題話題!
誰か、何か、話して!
……あ!
そ、そうだ!
ギャル委員長!
台詞欲しがってたよね!
お願い!何でもいいから話して!いや、話してください!なんならこの章の後の台詞も何個か追加してあげるから!だからお願い!話して!この際名前も覚えてあげるし、呼んであげるから!
救いの手を求め、私は振り返る。
お助けくださいお助けください!蝶園……ちょうえんよ……えーっと……んー!駄目だ!やっぱり名前が思い出せない!とにかくギャル委員長!いや、神様仏様蝶園陽華様ぁ!
――にこっ(`<`)
…………アルカイックスマイルやめろ。
ご一読ありがとうございました。本日の後書きは、新キャラの私、諸刃剣の中学時代からの友人『神戸らの』がお送りします。苗字は『神戸』で、名前が『らの』です。下の名前はこれからのストーリーで露わになる私のキャラに似合ってないので、神戸って呼んでください。それじゃあ、これからも引き続き、『完璧美少女JK、諸刃剣!』をよろしく――
「ってだれですか!あなた!」
「うわ、びっくりした。なんだよいきなり。金髪サイドテールの女。さっさと後書き終わりたかったのに、やめるタイミング見失っちまったじゃねぇか」
「蝶園陽華です!あなたも諸刃さんみたいにあだ名で呼んでこないでください!あと、さっさと後書き終わりたいとか言わないでください!ていうか、今日の後書き、先週に引き続いて私の収録だったと思うんですけど、何であなたがやってるんですか!」
「は?作中でも言ってただろ?これ以降、お前の出番ないって。お前の枠はこれからは私になるんだよ」
「は!?もしかしてあの諸刃さんの台詞、マジだったんですか!そんな!やっと読者の皆さんに、諸刃さんの害悪性を通じて、私の可愛さと健気さが伝わってきた頃合いだったのに!」
「お前もどっかの自称完璧美少女なんたらに似てきたな……。そういうところが出番なくされた原因なんじゃねぇの? まぁ、出番がないって言うのは、あくまで新人賞に応募した時の話だ。もしかしたら今後、お前のストーリーをもっと見たいっていう読者が現れたら、気をよくした作者が作ったりするんじゃねぇの?」
「そっか!あの、褒められるとすぐに調子に乗って仕事でミスするから、職場ではの●太くんって陰口叩かれてるあの作者を、読者様の手によってその気にさせればいいんだ!(え?それ知らないんだけどby作者)」
「そうだ。お前の命運は読者の感想にかかっている」
「分かりました!ではどうか、読者様方!どうか!どうか!よろしくお願いいたします!私の出番を増やすため、あの●び太君をおだててください!私も、何でもしますから!恥ずかしいけど、歌だって歌いますから!読者の皆さん、弱みを克服しようと頑張っている少女って素敵でしょう?それじゃあ、歌わせていただきます!」
「こいつはジャ●アンだったか……」
感想くださいby作者。




