第5話『魔女の起床』
現在、目を覚ました魔女。
──原初の魔女ディアベルスター。
能力はまだ判明していない。
未知数の女だ。
──転移の魔女モルガナイト。
行ったことのある場所へ転移させる能力を持つ。
戦闘では役に立たないが、戦いを有利に進めることの出来る貴重なサポーター。
その能力により、魔王城を占領。
世界を滅ぼす準備は着々と進んでいる。
「魔女って意外と変わってるのね」
リィラが呟いた。
「少し癖があるな。ちゃんとコミュニケーションは取っているか。これから共に戦うんだぞ」
「これからディアと紅茶の時間よ。ウィンこそちゃんと魔女の能力を把握しておいてよね」
リィラは玉座から出て行った。
意外と仲良くやっていけているらしい。
魔女と仲良くなれる機会なんてそうそうない。
悩みの種が一つだけなくなった。
眠りから覚ます魔女を待つ。
誰が先に起きてくるだろうか。
癖の強い奴だけは勘弁して欲しい。
結構疲れるんだ。
玉座の間の扉からノック音がした。
一人目覚めたのだろう。
心して命じた。
「──入れ」
入室を許可した。
陽気な天真爛漫な女が挨拶をする。
「オッス、魔王様。剣撃の魔女ヴァルハラだ」
あまり知的には見えなかった。
華奢なせいもある。
剣が扱えるようにはとても思えなかった。
「よく目覚めてくれた。我が新しい魔王である」
「おぉー新しい魔王様はイケメンなんだな。オイラと子作りしないか?」
「……またの機会にしておこう」
「何だよ魔王様。まさか奥手なのか!?」
こんなに疲れるとは思わなかった。
これほどとは……魔女とは難しいな。
「どんな能力を持っているんだ?」
「剣でズバーッと斬っちゃうぜ!」
「そうか、よく分からなかった。ありがとう」
剣士であるのは、間違いないのだろう。
確かに剣を腰に差していた。
立派な剣だ。
「良い得物だな」
「あぁ……ビンビン丸のことか。オイラの愛用なんだ」
「ビンビン……丸?」
「そうだビンビン丸だ。カッコイイだろ!」
「……そうだな」
ヴァルハラの世界についていけない。
手短に役職を与えて追い返すとしよう。
「君には親衛隊の特攻隊になって貰う。雑魚兵を蹴散らすにはうってつけだ」
「そういうの嫌いじゃないぜ。仰せのままに魔王様」
用が済んだらヴァルハラはさっさと帰った。
いまいち能力が分からないが、剣術でどうにかしてくれるのだろうと信じている。
今後の活躍に期待しよう。
続いて二人目の魔女が扉をノックする。
入室を許可した。
「迷彩の魔女アルスレイルです。ただいま起床しました」
大人しい女だった。
ヴァルハラよりも話しやすいだろう。
「よく目覚めくれた。我が新しい魔王だ」
「魔王様何なりとご命令を」
「アルスレイルの能力を知りたい」
「アルスの能力は……これです」
アルスレイルの姿が消えた。
痕跡も何一つもなく。
透明化の魔法は存在する。
だが、これは違う。
気配や視線を消すことは、魔法では出来ない。
存在そのものが消失している。
隠密作戦や偵察がアルスレイルの武器になるだろう。
「よろしいですか魔王様」
「素晴らしい能力だった」
「ありがとうございます。以前の魔王様は褒めてくれなかったから……」
「無能のことなど忘れろ。今は我が魔王なのだ」
「……好きです魔王様。隠れてご活躍を眺めて良いですか!」
「……何で隠れる必要があるんだ」
俺がいけなかったのか。
おかしくさせてしまったのか。
隠れられたら俺でも分からんぞ。
「君には、親衛隊の偵察隊に任命する。心して励んでくれたまえ」
「──仰せのままに」
アルスレイルは、玉座の間から退出した。
彼女のことは、もう少し丁寧に扱ってやろう。
そう誓うことにした。
三人目の魔女が扉をノックする。
入室を許可した。
「魔王様、ただいま起床しました。氷結の魔女スノウホワイトでございます」
小柄で冷たそうな目つきの女だった。
変な発言はしないだろう。
一番の当たりかもしれない。
「良く目覚めてくれた。我が新しい魔王だ」
「……そうでしたか」
「どんな能力を持っている?」
「凍らせたいものを凍らせます」
「見せていただけないだろうか」
「かしこまりました」
きっとこれも、魔法以上の能力があるのだろう。
期待することにした。
「これでいいですか。玉座の間を凍らせました」
魔法を使った素ぶりもない。
詠唱もしない。
一瞬で凍り漬けにしてしまった。
これだけ速いなら、色々な戦局で実戦投入が可能だろう。
「美しい能力だった」
「お褒め頂き感謝致します」
「君には親衛隊の迎撃隊になって貰う。撃ち漏らした兵の撃退が主な役割だ。心して励んでくれたまえ」
「──仰せのままに」
スムーズに終わった。
皆がこうだと話しが早くて助かるのに。
狂った奴が何人もいてたまるかってんだ。
「あの……魔王様」
「どうした具合でも悪いか」
「結婚の約束のことなんですが……」
「結婚……!?」
「いつ私めと結婚してくれるのでしょう。ずっと待っているのに……」
そんな約束していない。
きっと死んだ魔王との約束だったのだろう。
俺を巻き込まないでいただきたい。
「どうしてですの。魔王様は私めを愛して下さらないのですか。アイシテアイシテアイシテアイシテアイシテアイシテアイシテアイシテアイシテアイシテアイシテアイシテ……」
──駄目だ。
──こいつも狂ってた。
なんならスノウホワイトが一番ヤバい。
説得なんて出来る訳がなかった。
しばらくして、呪文を唱えるのを辞めたスノウホワイトは、名残惜しくとも玉座の間を去った。
四人目の魔女が扉をノックする。
入室を許可した。
「来たデスよ魔王様。時の魔女セオルスリーパーでデス」
「良く目覚めてくれた。我が新しい魔王だ」
「よろしくデス」
語尾のおかしい変な女が来た。
スノウホワイトのせいで精神的に参っている。
この程度なら可愛いものだ。
自分自身に言い聞かせてることにした。
「時の魔女ってことは、時間を操れるのか」
「もちろんデス。止めたい時に好きなだけ時を止めれるデスよ」
「それは頼もしい。是非にも活躍を願うぞ」
「任せろデス。魔王様、目覚めのキスはまだデスか?」
「知るかそんなこと。鏡とやっていろ」
痺れを切らしてつい口に出てしまった。
あまりに恐怖したのか泣き出す始末。
少し反省した方がいいな。
俺の心が狭かった。
「我が悪かった。許してくれ」
「……キスしてくれるデスか?」
「それはしない」
また泣き出した。
面倒だから泣いたままにさせておいて、セオルスリーパーに役職を伝える。
「君には親衛隊の制圧部隊を任命する。心して励むよう努めてくれると助かる」
「──仰せのままに」
泣いたまんまでセオルスリーパーは玉座の間を退出した。
嵐のような女だった。
脳に電気でも打ち込んでああなったのだろう。
いざという時にちゃんと戦えるのだろうか
また、俺の悩みの種が一つ増えた。
これが最後。
五番目の魔女が扉をノックした。
入室を許可する。
「ただいま参りました。魔王様……どうか私を辱めて下さいませんか!」
みんな大体名乗ってた。
開口一番これなのだ。
まともな魔女は、この魔王城に存在しないらしい。
封印を解いたのは間違いだったのか。
答え合わせをしたいけど、その成否は勇者しか知らない。
「名を名乗ったらどうなんだ」
「──死術の魔女エモルファージでございます」
「死術とは興味深いな。死霊術か……」
「わたしに興味があるんですか。だったらもっとわたしを犯してくださーい!」
「そうかそうか君はそういうやつだったのか」
ただの変態だっていうのは良く分かった。
──死霊術か。
魔女であることを考えれば、魔法以上の脅威になるだろう。
無限の不死の兵士か。
悪くない。
「君には親衛隊の前衛部隊を任命する。心して励んでくれたまえ。それと……人前でそんな喋り方をしたら許されるからな」
「──仰せのままにわたしを痛めつけて下さーい!」
黙って玉座の間から追い出した。
スノウホワイトとエモルファージには、極力関わらないようにしておこう。
最悪殺されかねない。
これで全ての魔女が、長い眠りから目を覚めた。
──原初の魔女ディアベルスター。
──転移の魔女モルガナイト。
──剣撃の魔女ヴァルハラ
──迷彩の魔女アルスレイル。
──時の魔女セオルスリーパー。
──氷結の魔女スノウホワイト。
──死術の魔女エモルファージ。
とんでもない女たちだった。
こんな奴らと世界を滅ぼすのか。
失敗しそうな気がしてならない。
だが……戦力は揃った。
魔王軍としては、上出来であろう。
作戦を練ろう。
──誰から殺そうか。
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