第4話『原初の魔女』
──魔王として君臨するには、どうするか。
二人で魔王軍を名乗るのは無理がある。
優秀な配下が欲しい。
少なく見積もっても実力者が七人程。
気は乗らないが、思い出すことにした。
勇者パーティと冒険したことを思い出す。
たしか、過去に魔女を封印したことがあったはず……。
あまりの凶悪さ。
凶暴さに加えて、見た目は人間と見分けもつかない。
全ての魔女を祠に集めて勇者が封印した。
なんの為に封印していたんだっけか。
忘れてしまったようだ。
リィラにも相談することにした。
「魔女の封印を解こうと思う」
「封印を解くとどうなるのよ」
「魔女の瘴気が溢れ出るはずだ。また魔物が生まれる世界になるだろう」
「……それで?」
「封印を解いた魔女どもを俺の配下にする」
「そんなこと出来るの?」
「出来なきゃ実力で分からせるさ」
合意と取って良いらしい。
これより、目的地を魔女の祠に決定した。
これから魔王として生きていく。
魔女の封印を解くのは、大事な仕事だ。
新しい目標が出来た。
何だか気分が良い。
これまで、生きながらにして死んでいたから。
生きる亡霊。
なんだか、リィラに救われたような気がする。
「ねぇ……魔王様。魔女の祠ってどこにあるのよ」
「まだ魔王になった訳じゃない。これからなるんだよ。確か……人が寄りつかない土地に封印していた気がする」
地図を指差した。
それなりに距離があったから、リィラが若干拗ねている。
それでも行かねばならない。
勇者は必要だから封印していたんだろ。
そうでなければ討伐していたはずだから。
リィラと長い道のりを歩くことにした。
「もう一週間よ。まだ着かないわけ?」
「そろそろ目的地だ。祠に入るんだからしっかりと準備をしておけよ」
なだめているうちに魔女の祠へ辿り着く。
封印しているとはいえ、邪悪な気配が伝わってきた。
それは、リィラにも感じ取れるものだった。
常人なら恐怖のあまり逃げ出すだろう。
だが、俺とリィラは違う。
二人とも壊れているからだ。
こんな状況で変に感動してしまった。
行動は早い方が良い。
祠の神殿に向かうことにした。
「祠の中って以外と鉱石が光って明るいのね」
「そういう場所を選んだんだ」
「何の意味があるのよ」
「ここの鉱石には浄化の力がある」
「封印するならうってつけってことね」
「あぁ……。話しは後にしよう。ここが神殿だ」
結晶に七体の魔女が封印されている。
呪符が張られ、鎖で縛り上げられていた。
魔女どもの解呪に取り掛かろうと思う。
鎖を風魔法で断ち切った。
呪符を一枚の取り残しがないよう剥がしきる。
儀式の下準備は終わった。
残るは、封印紋に魔力を流すだけ。
ありったけの魔力を注ぎ込んだ。
結晶が割れる。
魔女の瘴気も溢れ出る。
封印が解除された時、戦闘になるかもしれない。
七体を相手に出来るだろうか。
不安しかなかった。
だけど、その不安はすぐに解消することになる。
完全に封印が解けた。
「──わたしたちを目覚めさせたのはあなた?」
「あぁ……そうだ」
見覚えがあった。
──原初の魔女ディアベルスター。
魔女としての始まりの女。
こいつから、のちに六人の魔女が生まれることになる。
他の魔女も次第に目を覚ますだろう。
「魔王様はどこですか?」
「──魔王は我が討ち取った」
「あなたが……!?」
「そうだ。よって……我がこの世界の魔王となる」
「そうでしたか。貴方様が新しい魔王様なのですね。なんて洗練された魔力でしょう。惚れてしまいそうです」
「……そうか良かったな」
「私たち魔女は魔王様の忠実なるしもべ。なんなりと命じてください」
「そのつもりだ。心して任務を遂行しろ」
「仰せのままに魔王様。ところで隣にいる小娘な何者ですの?」
「彼女はリィラ。役職は側近だ。君には親衛隊の部隊長になって貰う。しっかり励んでくれ」
「まぁ……魔王様の伴侶は何人いてもよろしいですからね。その役職、有り難く頂戴致します」
「追って他の魔女六人にも役職を命じる。後の話しは魔王城に着いてからだ」
戦闘にはならなかった。
最初から好印象。
惚れたとはなんだ。
そんな感情は持ち合わせていない。
話しが早くて助かるが、次は拠点だ。
魔王城までかなりの距離がある。
時間を無駄にしたら、新しく生まれた魔物。
その他、魔獣の相手をしなければならなくなる。
それはリィラにとっても、負担をかけるだろう。
「心配ありませんよ魔王様。たった今、転移の魔女が目を覚ましました」
「──転移の魔女?」
「魔女の能力ですよ。モルガナイトが魔王城まで送って下さいます」
歩かなくても目的地にいけるのか。
ソイツは助かる。
今後の作戦にも自然に組み込めるだろう。
最高の戦力だ。
「おはようございます魔王様……」
「寝起きで申し訳ない。ここで話すのも面倒だから魔王城まで転移させてもらえないか?」
「お易いごようですよまおーさま」
転移の魔女が能力を使った。
一瞬で魔王城に魔女七人。
俺とリィラを転移させた。
「──玉座の間じゃないか」
魔王と決戦した場所。
ここで勇者は死んだ。
今では、俺が玉座に腰掛ける。
むず痒くて、不思議な気分だった。
「お初にお目にかかります。転移の魔女モルガナイトです。ご用の時は何なりとお申し付けてください」
「急な働きで申し訳なかった。君には親衛隊のサポーターを任命する。心して励むがいい」
「──魔王様の仰せのままに」
残りの五人は、まだ呑気に眠っていた。
今は別に忙しい訳でもない。
全員が揃ったら作戦を練ろう。
如何に人間を皆殺しにして、世界を滅ぼすか。
メンバーは揃った。
魔王軍としての初陣の時を待つだけとなった。
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