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第1章 転生悪役令嬢、フラグだらけの学園に立つ

まぶしい朝の光が、まぶたをやわらかく照らした。

 重いまぶたを持ち上げると、そこには見覚えのない天井——いや、豪華すぎる天井があった。 繊細な金の装飾、透けるようなレースの天蓋。 寝具はふかふかの羽毛布団で、バラの香りがほのかに漂う。


「……え? ここ、どこ?」


 寝ぼけた声を出した瞬間、隣のドレッサーにかかった大きな鏡が目に入った。 そこに映るのは、淡い金髪にパールピンクの瞳をした少女。 

——誰!? いや、まって。見覚え、ある。

「これ、フェリシア・ド・ヴァルステアじゃん……!」

 自分の口から出た名前に、背筋がゾクッとした。 乙女ゲーム『光の王子と七つの運命』で断罪される悪役令嬢。 推し王子をいじめて最悪のエンディングを迎える、悲劇のラスボス。


 前世の私は、ただのOL。 仕事帰りにコンビニスイーツを片手にゲームしてただけなのに。 まさか、自分が推しの恋路を邪魔する側に転生するなんて、誰が予想した!?

「ちょ、ちょっと待って……破滅イベント、いつだっけ」

 ベッドから転げ落ちそうになりながら、記憶を必死にたどる。 そう——卒業パーティ。 学園での恋愛騒動の果てに、フェリシアは断罪される。

「……あと一年! 一年で破滅フラグ確定!」

 心臓がバクバク鳴る。 けれど、まだ間に合う。 ゲームの筋書きを知っているなら、回避できるはず。

「よし……破滅回避、開始!」




 気合を入れ、私は学園へと向かった。

 ヴァルステア家の馬車で登場した瞬間、ざわめく視線が集まる。 貴族社会の学園では名家の令嬢であるフェリシアはどうしても目立つ。 でも今日の私は“悪役”ではなく“善良モード”。 学園のみんなと仲良くしてみせる!

 私は深呼吸し、完璧な貴族スマイルを浮かべて教室の扉を開いた。

「おはようございます、皆さま!」

 ……と同時に。

「きゃっ!」

 階段の方から小さな悲鳴が聞こえた。振り向くと、金髪の少女がバランスを崩して落ちかけている。

 ——あれ、庶民出身のミリア!?

 反射的に駆け出した私は、スカートの裾を掴みながらその腕を引き寄せた。

「だ、大丈夫!? しっかりつかまって!」

 ぎりぎりで彼女を抱きとめ、二人して階段の上に座り込む。 ミリアは目をぱちぱちさせたあと、涙ぐみながら頭を下げた。

「す、すみません……助けてくださって……!」

 ああ、優しい子だ。 私は思わず彼女の手を握り返し、微笑んだ。

「気にしないで。ケガがなくてよかったわ」

 そのとき——背後に影が落ちた。 見上げると、光の中に一人の青年が立っていた。 金色の髪、深い青の瞳、凛々しい顔立ち。制服の襟には王家の紋章。


 リヒャルト・フォン・アーデルハイト殿下。 この学園の王子にして、ゲームの攻略対象。……そして、前世の私の推し。

「ヴァルステア嬢、君が……彼女を助けたのか?」

 声が低くて心臓に悪い。 けれど、うまく返さないと誤解される——!

「い、いじめてなんかないですっ! ちがっ、助けたんです! いじめたくて助けたんじゃなくて……いや、そういう話ではなくて……!」

 ポンコツ全開の言い訳に、ミリアが慌てて首を振る。

「違うんです、殿下! 本当に助けてくださいました!」

 リヒャルト殿下の瞳が少し柔らかくなる。 そして静かに微笑み、私の手を取って、指先に唇を寄せた。

「そうか……誤解していたかもしれないな。 君の瞳は、優しい色をしている」

 ……え。 なにそれ、恋愛ルート確定ボイスですか。 断罪回避どころか、恋愛フラグ立っちゃったじゃないの!?

 私の頭の中では、警報が鳴り響いた。 ピコンピコンピコンッ(※フラグ乱立警報)。

「ま、まずい……これ、想定外のルート入ってる!」

 破滅回避計画、初日で早くも波乱の幕開け。 悪役令嬢フェリシア・ド・ヴァルステアの奮闘は、まだ始まったばかり——!


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