第5話: 山岳都市の火花と、血の代償
海の塩風を背に、俺たちの馬車はボロボロになりながら「海岸の灯台」のスタンプをなんとか押した。細山タカシ、俺の「地図予測スキル」が、次の通過ポイント――大陸中央の「山岳都市」を指し示す。そこは、異世界の地図でいう「地球大陸のど真ん中」にそびえる岩だらけの要塞都市。すべてのグループがここで合流する、最初の試練の場だ。
「タカシくん、馬車もう限界だよ! 車輪ガタガタだし、食料も残りわずか……」
鈴木さんが泣きそうな顔で訴える。確かに、ケンジの魔法オイルトラップとクラーケンの襲撃で、馬車は焦げ臭く、車輪はガタつく。佐藤、田中、山本も疲れ切った顔だ。だが、俺は拳を握る。
「ここで諦めたら奴隷だ。山岳都市で食料と修理を調達するぞ。地図予測スキルが言うんだ、都市はでかい市場がある。負けるわけにはいかねえ!」
馬車が岩だらけの山道を登る。ゴツゴツした石が車輪を叩き、馬が疲れた鼻息を漏らす。遠くに、灰色の石壁に囲まれた山岳都市が見える。だが、頭に浮かぶ地図が警告を発する――「他のグループがすでに接近中。妨害に注意」。
「みんな、目を離すな! ケンジのヤツ、絶対なんか仕掛けてくる!」
シーン転換:グループB(ケンジ視点)
「ハハッ! 山岳都市、着いたぜ! ここで一気に差をつけてやる!」
ケンジのグループBは、馬車強化スキルでチューンナップされた銀光る馬車で、山岳都市の門をくぐる。モブの高橋、斎藤、松本、中村は、ケンジのチャラい自信に引っ張られ、テンション高めだ。都市の市場は人でごった返し、屋台から肉の焼ける香りが漂う。
「ケンジ、食料買うか? それとも馬車のパーツ?」
高橋の問いに、ケンジはニヤリ。「両方だ! けど、まずは妨害の準備。タカシとユウキの馬車、都市で足止めしてやるぜ」
ケンジは市場の裏路地で、怪しげな魔法使いに接触。金貨を握らせ、毒入りの食料を仕入れる。「これを他のグループの馬車に混ぜてやれば、腹壊して動けねえだろ!」
斎藤がドン引き。「お前、めっちゃ悪役じゃん……」
「妨害何でもありだろ? 勝てばいいんだよ!」
ケンジの馬車が市場を抜け、石碑の通過ポイントへ向かう。だが、背後から別の馬車――ショウタのグループDが猛スピードで接近。ケンジの目が光る。「お、ショウタのヤツ、来たか。いいぜ、毒食料で潰す!」
シーン転換:グループD(ショウタ視点)
「全員、黙れ。敵が動いてる」
ショウタのグループDは、妨害耐性スキルで山道の落石やモンスターを軽々回避し、山岳都市に到着。モブの石川、佐々木、山田、吉田は、ショウタの無表情な指揮にビビりつつ従う。都市の門をくぐると、喧騒と匂いが押し寄せる。市場の活気は、まるで中世のフェスティバルだ。
「ショウタ、食料と水、馬の餌が必要だ。どうする?」
佐々木の問いに、ショウタは冷たく答える。「市場で調達。だが、敵の妨害を警戒しろ。ケンジの気配がする」
その言葉通り、市場の屋台で怪しい動き。ケンジのモブ・中村が、こっそり食料に毒を混ぜる姿をショウタが目撃。妨害耐性スキルが、毒の気配を警告する。「石川、そいつを捕まえろ」
石川が中村を羽交い締めにするが、騒ぎに気づいたケンジが馬車で突っ込んでくる。「ショウタ、邪魔すんなよ! 毒くらいくらえ!」
ショウタのバリアが展開し、ケンジの馬車を弾く。市場がパニックに陥る中、ショウタは冷静に石碑へ向かう。「スタンプ優先。妨害は後で返す」
シーン転換:グループC(ユウキ視点)
「みんな、落ち着いて! 市場の混乱を利用して、食料と情報を確保するよ!」
ユウキのグループCは、食料生成スキルで最低限の補給を確保しつつ、山岳都市に到着。モブの岡本、林、加藤、藤田は、ユウキの頭脳に全幅の信頼だ。市場の混乱――ケンジとショウタの衝突――を遠くで見ながら、ユウキは眼鏡を光らせる。
「ケンジの毒食料、ショウタが防いだみたいだね。けど、市場の商人、便乗して値上げしてる。金貨20枚でパン1個だってさ」
「20枚!? ぼったくりすぎる!」
岡本が叫ぶが、ユウキは冷静。「俺のスキルで食料はある。商人から情報だけ買うよ。次のルートの危険を教えてもらう」
商人に金貨を渡すと、情報が手に入る。「次の通過ポイントは砂漠のオアシス。ドラゴンの巣があるから気をつけな。ま、王様たちがドラゴンけしかけて、観戦楽しんでるけどな」
「王様の野郎、ほんと最低だな……」
ユウキのグループが石碑へ向かうが、道でタカシの馬車と鉢合わせ。ユウキは一瞬迷うが、笑顔で手を振る。「タカシ、久しぶり! 同盟しない?」
クライマックス:激戦の石碑
山岳都市の中心、石碑広場で、4グループの馬車が一斉に集結。通過ポイントのルール上、全員がスタンプを押さなきゃならない。だが、ここで妨害がエスカレート!
ケンジのグループBが、毒食料をタカシの馬車に投げ込む。ショウタのバリアが毒を防ぐが、混乱に乗じてケンジの馬車がタカシの馬車に体当たり! ガシャン! と車輪が砕け、タカシのモブ・田中が荷台から転落。
「田中!」
俺が叫ぶが、田中は足を折って動けない。「タカシ、行け! スタンプ押してくれ!」
その瞬間、王様たちの観戦スクリーンが空に浮かぶ。太った王様がワインを振り回し、大爆笑。「おお、馬車クラッシュ! モブの犠牲! 最高のドラマだ!」
ユウキのグループCが、食料生成スキルで即席の治療食を田中に渡すが、ケンジが再び妨害。魔法の煙幕弾を投げ、広場が真っ白に。ショウタのバリアが煙を防ぐが、視界ゼロの中、タカシは地図予測スキルで石碑へ突進。
「佐藤、鈴木さん、山本! 馬車守れ! 俺がスタンプ押す!」
だが、ケンジのモブ・松本が、隠し持った短剣でタカシに襲いかかる。間一髪、ショウタのバリアがタカシを救う。「ショウタ、助かった!」
「礼はいい。押せ」
タカシが石碑にスタンプを押すと、魔法陣が光る。だが、田中の怪我と馬車の損壊で、俺たちの状況は最悪だ。王様たちの笑い声が響く中、俺は叫ぶ。
「この理不尽なレース、絶対勝ってやる! ケンジ、お前も王様も、覚えてろ!」
(つづく)