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第1話 いつの間にか朝になっていた

一か月ぶりの新作になります

『ピンポーン! …………ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン!!』


 インターホンの音で目を覚ました俺――伊弉冉いざなみ甚弥とうやはベッドから起き上がり、右手で髪の毛を掻きながらため息をついた。


「今、何時だよ?」


 目覚まし時計を見ると、時刻は7時を過ぎている。


 今日は土曜日で休日だから、ぐっすり眠れると思っていたのに……インターホンを何回も鳴らしてくる害悪野郎のせいで、目が覚めちまったじゃねぇか。


 巨乳の美少女たちとセックスをしている超気持ちいい夢を見ていたのに……あー、夢の続きを見たいよぉー。ちなみに高校二年生である。


『ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン!!』


「マジうっせぇなぁ!」


 俺は額に青筋を浮かべて、ものすごくイライラする。


 だって、そうだろ? 俺のスケジュールが全部狂ってしまったんだぞ、インターホンをしつこく何回も鳴らす害悪野郎のせいで。どうせ、ろくな奴じゃない。


 うちに宅配は来ないだろうし……ポチったりしてないからな。


 俺の両親は海外で仕事をしている。どんな仕事をしているのかと言うと……母さんは外国人旅行者を案内する通訳ガイドで、父さんは外国人に日本語を教える日本語教師だ。


 俺には兄弟がいない……つまり、この家に住んでいるのは俺一人ってわけだ。


「人が超エロくて気持ちいい夢を見てぐっすり寝ているのを知らずに……。さっさと追い払うか……」


 俺は部屋から出て、階段を降り……パジャマ姿で玄関の扉を開けた。


「どちら様で――」

「いとこ様でーす!」

「…………はっ?」


 どうしてここにいるんだよ? まさか、これも夢なのか!? いやいや、これは夢じゃない。現実だ! だとしたら、なんでコイツがここに……!?


 艶のある白髪のショートカットに鈴を張ったような目、目鼻立ちの整った顔をしている高校一年生――いとこの西園寺さいおんじ紅葉くれは


 紅葉とは、正月やクリスマスの日などの行事以外には会わないのだが……何をしに来たんだ? 


「お話がしたくて来ちゃった!」


 紅葉はそう言って口から少しだけ舌を出し、ウインクをする。


「俺は別に、お前と話したくないんだが……」

「まあまあ、そんなこと言いなさんな!」


 紅葉は笑みを浮かべながら、俺の肩をバシバシと叩いてくる。


 ふつーに痛いから叩くのやめてくれませんかねぇ? 

 俺の肩はサンドバックじゃないんだよ。

 そんなに何度も叩いたら、皮膚が赤くなるって!


 俺はため息をつくと、玄関の扉を開ける。


「超追い出したいけど……追い出したら、またインターホンを押すだろうから……仕方ない。さっさと入れ」

「おっ邪魔しまーす!」


☆★☆★


 テーブルの上には麦茶が入っているコップが2つあり、俺たちは対面するように座っている。もちろん、麦茶を用意したのは俺だ。


「俺から一ついいか?」

「何?」

「お前、前に言ってたよなぁ……学校の男子たちからの告白は断ってるって。その後はどうなんだ?」

「どうって?」


 なんで分からないんだよ……。


 俺は麦茶を飲むと、ため息をついた。


「男と付き合っていたりしているのかってことだよ」

「あー、そういう意味ね。誰とも付き合ってないよ」

「どうしてだ? 恋愛に興味がないのか?」

「恋愛に興味はあるし、好きな人はいるよ」

「学校内に……ってことだよな?」


 紅葉は首を横に振り、俺のことを指さした。


「私が誰を好きなのかは教えないよ! 絶対にね!!」


 なんだか、コイツと話していると超疲れるんだよなぁ……。別にもうどうでもよくなった。コイツが誰を好きなのかとか……興味なくしたわ。


「はいはい、そうですか。……んで、何を話しにうちに来たんだ?」


 紅葉は麦茶を一気に飲むと、真剣な表情でこう言った。


「一緒に遊ぼう」

「…………はい?」


 真剣な表情に変わったから、重要なことを言い出すのかと思ったけど……俺の聞き間違いじゃなければ、ふざけたことを言ったぞ。なんだよ、一緒に遊ぼう……って!


 俺の耳が腐っているわけではないよな? 疑ってしまうのだが……自分の耳が正常なのかを。


 俺はコップを手に持ち、入っている麦茶を飲み干す。そして、コップをガコンと強くテーブルに置いた。


「一緒に遊ぼうってなんだよ!? どういう意味だか教えてプリーズ!」

「ゲームとかしようってことだよ!」


 コイツ自身はふざけていないが、俺からしたらコイツは超ふざけてやがる! 一緒にゲームとかをしよう? はあ? 何言ってんだよ、処女が!! って感じだわ。


 だけど、コイツは自分の思い通りにいかないとすぐ泣いたりするからなぁ……マジめんどくせぇ女だよ。顔だけは可愛すぎるがな。それ以外はブスだ!


「あー、アンダースタンド。理解したし、分かりましたよ。一緒にゲームでもするか」


 紅葉は白い歯を見せて、ニコリと笑みを浮かべながら両腕を上げた。


「やったぁ! それじゃあ早速、テレビゲームしよッ!」

「いいぞ~」


 顔は可愛い……いや、可愛すぎるけど……自己中なコイツには敵わねぇ。


 それから俺たちはテレビゲームをし、昼食を一緒に食べて……中断していたテレビゲームを再開し、夕食はデリバリーを頼んで一緒に食べた――。


☆★☆★


「てか、お前……もう帰らないと終電逃すんじゃねぇか?」


 テレビゲームをしながら、俺はそう言った。


 時刻は23時を過ぎようとしている。ここから駅までは徒歩で20分程度、終電は23時50分だ。今ならまだ終電を逃さずに済む。


 すると、テレビゲームをしていた紅葉は手を止めた。


「ん? どうし――」

「私が甚弥の家に来たのは……一緒にゲームをするためじゃないよ」

「えっ……?」

「隠し持ってきたんだ」


 そう言って、紅葉がポケットから取り出したのは……避妊用具、コンドームだった。


 どうしてそんな物を持っているんだ!? なんのために!? 


「そんな物を何に使う気だ!?」

「何って……決まってるじゃん。甚弥とヤるためだよ」

「お前……何を言って……」

「私の好きな人……それは、甚弥だよ。これで分かったでしょ? 私が男子たちからの告白を断り続けている理由が……」

「そういうことか……」


 俺は気づかなかった。紅葉が俺に好意を寄せているなんて……いや、気づかないように紅葉が立ち回っていたのだろう。いつから俺のことを好きなのかは分からないが、今はそんなことを考えている場合じゃない。


 俺は床に押し倒され、口の中に舌を入れられるキスをされた。


「んー、んー!(何考えてるんだ、やめろー!)」

「んー、んー、んー(甚弥と一つになりたい、ただそれだけだよ)」

「んー、んー(とりあえず離れてくれないか?)」

「んー、んー(絶対に離れない。甚弥のことが好きすぎて興奮しているんだから)」

「んー、んー、んー(俺のことがどんだけ好きなんだよ、イカれてるな)」

「んー、んー(そうかもね。私はイカれてる女なのかもしれない)」


☆★☆★


 窓から光が差し込み、スズメがチュンチュンと鳴いている。


「あれ?」


 目を覚ました俺の隣には、裸で寝ている紅葉の姿がある。


 気がつくと、朝になっていたのだった。

【作者からのお願い】


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