EP.5 無双
藤凪魔空が扱うのは『魔法』。『能力』と同じように魔力を使い発動する。
『魔法』は炎・水・風・雷・氷の5種類だ。そしてそのうち2種類を扱うのがセオリーだ。『魔法』は、実質的に二つの『能力』を使えるメリットかある反面、その威力は専門的な『能力』に劣る。......のだが。
「......あいつ今3種類使ってないか?」開いた口が塞がらない。そんな奴ほとんど聞かんぞ。
水魔法、氷魔法、雷魔法。氷が道を作り、そこに雷が満ちる。そして極限まで圧縮された水がそれらを......超速で、発射した。
音が置いていかれるほどの速さで放たれたエネルギーの塊は、かの不可壊な的に、着弾する。
轟音。爆発。離れている俺にまで押し寄せる衝撃。的は......
跡形もなく、消えていた。
「ええぇ......うっそだろぉ......」
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「ふぅ。こんなもんか。」あたしは呟く。及第点かな。的はぶっ壊せたし。
ただまあ、もうちょっといけたかな〜、なんて考える。
5種類の同時使用ができれば、もっと威力を上げられる、訳だから。
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......想像以上に、実力者揃いなのだろうか。レジスタンスというのは。彼女の砲撃で静かになったこの場所で、俺は考える。彼女ですら第5位である。この上に4人も格上がいるなど信じられない。だいぶ恐ろしい想像をしてしまった。
そういえば、大空は何位なのだろうか。結構強そうだとは感じているが、詳細は知らない。あとで聞いてみるか。
「......っと。考えていたら本人の出番か。」俺が並んでいる列の先、先頭に大空がいる。お手並み拝見だな。「よっ!おつかれ翠!」と俺に声をかける者が一人。
「藤凪か。お疲れ様。凄かったな、お前の『魔法』。」「そうだろ〜!すげぇだろ〜!......まあ、この先もあるんだがな!はっはは〜!」
やけにテンションが高い。いやそれよりも何だよ先って。もしかして4、いや5種類の『魔法』が使えるのか?バケモンじゃんやだこっわ。そんなことを考えていると。
「次、大空翔子。」「はい。」大空は淡々と準備を始める。
大空と俺の試験は教師との模擬戦。ちなみに相手は学校最強と名高い、『身体強化する能力』を使う教師である。彼は現状ほとんど動いていない。そう、攻撃するどころか移動もしない。バケモンばっかじゃねぇかオイ。......準備が終わったようだ。
「用意、始めっ!」教師の合図。そして大空が、動き出す。
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わたしは『能力』を使う。体がふっと軽くなり、宙に浮遊する。
私の『能力』は『浮遊』。普通ならぷかぷか浮くだけ、だが。わたしの鍛え上げた素の身体能力と合わさると......本領を、発揮する。
地面を思いっきり蹴る。爆発音が、轟く。音すらも置いていく速さで、教師に向かい突き進む。
「んなっ!」驚いた声が聞こえる。防御姿勢を取る教師。
だが私は止まらない。わたしの全力を込めた突撃は、有り余るエネルギーを教師にぶっ放す。
パンチがうまく入り、教師を吹き飛ばした。周りから驚嘆の声が聞こえる。
「本気で、やってやるわよ。」ふわふわと浮きながら自分に喝を入れる。今度は空気を蹴る。蹴ってダメージを与え、また空気を蹴ってダメージを与える。それを超速で繰り返し、教師に反応もさせずに攻撃し続ける。
これは......もはや蹂躙だろう。
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「ナァニコレ」この光景に、俺は理解ができずにいた。
えだってあいつ空気蹴ってるよ?それにサラッと音速で動いてるし意味わからんのだけど。バケモノしかいないって。
「おー、やってんねぇ翔子。」藤凪の反応的に......あれいつも通りなのかなこっわ。
「なあ、藤凪。あいつはレジスタンスの何番目だ?」少し震え声で尋ねる。「ああ、あいつは......
2nd、だ」