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選人  作者: あきゅう
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選人

「状況はどうだ?」

封鎖テープを潜り遺体発見現場に向かう。

「はい。今回殺害されたのは

<高橋悠太>25歳

坂内渚さん同様腸が抜き取られています」

縫い跡も似たようなものだった。

あまり日が経っていないからか、

水に触れていなかったからか縫い跡がとても痛々しい。

犯人は同一人物とみて、間違いなさそうだ。

殺害された<高橋悠太>はかなり大きい会社を経営していたみたいだ。経営も順調で、社員にも慕われている。他社からも評判が良く、トラブルはなさそうだ。

被害者同士共通点はないか調べるか。

署に戻り2人の情報を照らし合わせた。

坂内渚と高橋悠太の共通点は

・20代前半

・健康体

・友人間でのトラブルはなし

・人当たりの良い性格

・一人暮らし

このぐらいか…?

住んでる場所や出生地も違う。

家族仲も良好。

何を基準にして殺害しているんだ?

おかしいのは、抵抗した痕跡がないこと。たまたまか?

自分からお願いしたのか?

もう少し調査を進めなければ

今度は上流の方で聞き込みをしてみよう。


「すみません。私 刑事部 捜査第1課 七瀬彰人と申します。お話を伺っても?」

最初に日出病院に向かい

医院長<日出清隆>に話を伺った。

健康的で体格のいい医院長だ。

豪快である。

彼は沼津が医院長をしていた時代同じ病院にいた医者である。

学生時代からの仲らしく、なにか手がかりがありそうだ。

写真を見せて開口一番

縫い方についてだった。

どうもそれは、手術で使う縫い方で真皮縫合というものらしい。

「にしても、縫い方がガチャガチャですね。これは医者じゃないと思いますよ。素人でしょうね。」

「今はインターネットでも検索出来ますからね、患者も医者よりインターネットを信じる時代ですよ。」

ガハハと豪快に笑う。

沼津についても聞いてみよう。

新しい発見があるかもしれない。

「日出さんから見て、沼津ってどういう人物でした?」

日出は考えることも無く、スラスラと言った

「彼はとても慈悲深いよ。学生の頃からね。いい相談役でもあったな。

その後あんな事件を起こしたのなんて、考えられないよ。

きっと、彼なりの考えがあって動いたんだろうね。悪事だと思っていないよ。」

淡々と話す日出からは少し怖さを感じた。

「貴重なお時間ありがとうございました」

お礼をし、日出医院を後にした。

特に怪しい点はなかったが、心のどこかでは沼津のことを擁護しているように感じた。

それから幼稚園、小学校と近隣をまわったが解決に近付くような情報はなかった。

あっという間に陽が落ち、あたりは暗くなっていった。

署で書類を整理していると

「七瀬さんそろそろ帰りましょう」

「ここのところ寝ていないですよね?目のクマひどいですよ」

野田に無理やり帰らされた。

しっかり休んでくださいと

ありがたい言葉も受け取った。

あまり切り詰めていても焦るばかりだと自分に言い聞かせ家に向かっていた。

「大丈夫ですか!?」

若い女性の声だ。

私の体を支え、話しかけてくれている。

「すっごいフラフラ…

座っててください!

お水買ってきますから」

彼女に言われるままベンチに座った。

はぁーっと白い息を吐き

街の灯りを見ていた。

もう冬なんだ。

「お待たせしました」

そういって水を差し出す。

「ありがとう…」

隣座っても大丈夫ですか?と彼女は言う。

ヨイショと声を出し、水を飲んだ。

「本当に、大丈夫ですか?」

心配で私の顔を覗き込む。

「ここのところ寝ていなくてね、

大丈夫だ」

ほっとした様で胸を撫で下ろし、

ゆっくりと口を開いた。

「私<このは>っていいます」

急にお声掛けしてすみませんと一言

「あ、七瀬です」

アハハと笑う彼女

少し無愛想だったか…?

彼女の方を見ると

カバンから何かを探している

「あ、よければどうぞ

別に深い意味はないですよ!!」

ハイと渡されたのは十字架…?

「もうすぐクリスマスじゃないですか!

そんな疲れているとダメですよ!

神の御加護がありますようにー!」

両手を合わせて目を瞑る。

見ず知らずの私に心配してくれているのか。

少し、目が潤んできた。

「私そろそろ行きますね!

ゆっくり休んでください」

立ち上がると

良いクリスマスを!と

大きい声でさよならする彼女に

手を振った。

心が救われた気がした。


しばらくして、彼女に再会することができた。

「あれ!七瀬さん。体調はどうですか?」

「久しぶりだね。その節はありがとう。お礼をしたいんだ」

彼女は大丈夫ですよ!と腕を振り拒否していたが、私が押しに押して夜ご飯をご馳走することになった。

「すみません、私がお節介をかいたばかりに、奢ってもらっちゃって…」

テヘッと笑う彼女。

「俺が奢りたいんだ、お節介かな?」

彼女は首を振りながら

いただきます!と美味しそうにご飯を食べてくれた。

彼女の話はとても面白くて時間があっという間に過ぎていった。

「あー!楽しかった!正直七瀬さん最初は怖い人って思ってました。けど、面白い方なんですね」

ニコニコ笑う彼女、つい私もつられて笑ってしまった。

一通り世間話をし、解散の時間がきた。

「じゃぁまたね」と告げる私に

彼女は私の正面に立ち緊張した声で

「今度の日曜

七瀬さんお時間ありますか?」

少し顔を赤らめて言った。

私は二つ返事で答えた。

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