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選人  作者: あきゅう
1/2

-えりびと-

-速報です

本日未明 長原河川敷で女性の遺体が

発見されました。-


「あ、報道してますね、今回の事件。メディアで放送するって七瀬さんどう思います?私犯人刺激しそうで、いつもヒヤヒヤするんですよ」

そう言って私の部下 <野田真樹> がテレビに食いつく。

「日本のメディアは情報が早いからな。優秀と言うべきか。

犯人が刺激される前にさっさと捕まえるのが俺たちの仕事だ。野田行くぞ」

「はい!」

今回の【長原河川敷】で起きた事故

被害者は女性

長時間水に浸かっていたためか

身体は水分を吸って肥大化し、

髪が抜けていて頭蓋骨の一部が見えていた。おそらく、死後1ヶ月程だろう。

人としての原型があまりなく、ぶよぶよしている。

「七瀬さん 着きました」

「野田、近隣の方に聞き込みをしてこい」

「はい!」

車から降り発見現場まで歩く、

近付くにつれて、慣れない匂いが鼻を刺す。

遺体がなくともそこに匂いは残っているものだ。

「どうだ?まだ新しい発見はないか?」

「はい、遺体は検察官の方で検視しています。現場付近は遺体の身元特定の手がかりになるものと、殺人の可能性があるものは何もありません」

「水に長時間晒されていなかったため、早い段階で個人を特定できるかと…」

「分かった。ありがとう。この後も周辺の調査を頼むよ」

私もこの周辺をしばらく捜査したが、何も見つけることができなかった。

「七瀬さーん!第1発見者の方にお話を伺ってきましたー!」

そう大声で伝える野田の話を聞く。

調査で判明したことは

第一発見者はこの近くに住む50代女性。

早朝のランニング中にみつけたという。

近くには怪しい人影はなく、普段から通る人が少ない道だという。

「野田は引き続き聞き込みをしてくれ、私は検視結果を待つ」

「わかりました!聞き込みしてきます!」

現場のことは野田に任せて大丈夫だろう。

私も急がなくては。

車を走らせる。

「お待ちしてました、七瀬さん。

こちらへ」

遺体が安置された部屋へ向かう。

部屋に着くと、遺体の親族であろう方々も集まっていた。

親族の方々にお辞儀をし、検察に話を聞いた。

検察がゆっくりと調査でわかったことを伝えてくれた。

こちらの遺体は <坂内 渚>さん

22歳女性。DNA鑑定で検査をし、間違いはないとのことだった。

「そして、大事なことが一点、お腹上部に切れ込みがあるんです」

よく見てみると、うっすらと、細い線のようなものがあった。糸で雑に縫われていて…

手を合わせ糸を解くと

《腸》だけが綺麗に抜かれていた。

「…模倣犯なのか?」


10年前、世間を騒がせた

《神野川集落殺人事件》

警察の汚点と言われた事件。

私はその時若造で右も左も分からなかった。

そんな私でも、今までの事件と空気が違うことを感じていた。

悲惨だった。

被害にあった集落の方々は全員《腸》を抜き取られていた。そして、今回と同様切れ込みがあり、糸で縫われていたのだ。


メディアで大々的に報道され、この事件を

知らない人はいない。

それほどまでに有名な事件だ。

犯人の<沼津良吉>は沼津病院の医院長で、

人当たりの良い人物だった。

彼に命を救われた患者も多く、事件解決は

したものの今でも冤罪であると主張する人もいる。

沼津は現在逮捕されており、死刑囚となっているはず…

しかし、とても魅力を感じる人物だったため

憧れがあり、模倣犯がいてもおかしくない。


「うぅ、渚ァ渚ァ…」

ご家族の方が膝をつき、皆で抱き合っている。

事件の一番嫌なところだ。

なぜ、彼らが悲しまなければいけないのだ。

「ありがとう 親族の方のケアを頼むよ」

今の俺には家族に暖かい言葉をかけてあげることはできない。

犯人を見つけ、罪を償わせる。

そう伝え、俺は警察署に向かった。

野田と<沼津良吉>の元に向かおう。

「七瀬さんおかえりなさい。

聞き込み結果の資料です」

「ありがとう」

野田…上流の方まで聞き込みに回ったのか。

上流には病院…幼稚園…小学校

随分と建物が多い。

上流から遺棄したとは考えにくいか?

「上流の方は発見現場と違って住宅街も多く、監視カメラにも何も映っていませんでした」

特に怪しい人物もなし。

「検視は殺人の可能性が高い…

奴の模倣犯ですか…」

「野田には辛いと思うが<沼津良吉>に会いに行こうと思う」

そう口にした瞬間、野田の顔が一瞬強ばった。

「奴はどこまで人の人生を無下にするんだ!」

野田真樹は

神野川集落殺人事件の被害者

<野田彩乃>の弟だ。

彼が15歳の時に姉が殺された。

沼津が逮捕されたのはその3年後。反省の色がなかった。野田からすれば、心底腹が立つ男だろう。

殺してやりたいと言っていたほどだ。

ゆっくり深呼吸し、呼吸を整えて

「俺は大丈夫です。姉さんと同じ被害をだしたくありません」

そう唇を噛み締めて口にする野田はわなわなと震えていた。


刑務所に着くと、刑務官から最近の沼津の様子を話してくれた。

奴は死刑囚だが、それを感じさせないほどの模範囚。

毎日礼拝堂に通い、罪を改めているそうだ。

更生してるとは思えないが…

ひやりとした廊下の奥に

厳重に閉ざされた部屋があった。

「沼津 面会だ」

そう刑務官が言うと、奥からのそのそと

やせ細った白髪まみれの男がでてきた。

「なんだ、若造じゃないか」

ヒョッヒョと細く笑う声が聞こえる

「沼津 聞きたいことがある。答えてくれ」

今回の被害者<坂内渚>の写真を見せる。

「この子が殺された。あんたの手口と一緒なんだよ。模倣犯だと俺達は考えている」

「おいおい、警察が俺に写真なんて見せてもいいのかよ。…ふーん、こいつぁ、俺と一緒だな」

「手助けをしてんのさ」

手助け…?

「お前…!よく、手助けなんて言えたな!姉さん達を殺しておいて!!」

「手助けとはどういうことだ?

お前たちは集団で罪を犯しているのか?!」

「おーいー、罪なんて言葉使うなよ。光栄なことなんだぜ?選ばれたんだからよぉ」

そう言って沼津は奥の方へ消えていった。

「姉さん…」

冷たいコンクリートの壁を殴る。

ドンと鈍い音がした。

「落ち着け、野田の気持ちはとてもよくわかるが、抑えてくれ…」

沼津の上に犯罪を指揮する者がいるのか?

殺害されて光栄なことってなんだ?

選ばれた?誰に?謎が深まった。

組織犯罪を視野に入れて捜査を進めねば。

「野田、1度警察署に帰って状況を整理するぞ」

野田は深呼吸をして怒りを抑えて言った

「…はい」


警察署に戻り、今まででわかったことを整理した。

解決の糸口になるものは見つからず、事件解決は難航していた。

それから2日後

近くの公園で男性が殺害されているのが見つかった。

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