表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

この世の果ての美術館

作者: ランドセル太郎

あれはなんだろうか。

暗闇を彷徨っていたら何か見えてきた。

かなり大きな洋館のような見た目をしている。

窓ガラスが全て割れた窓。建物もところどころ崩壊していて、今にも重力によって全壊しそうだ。コロッセオ時代にあるようなひび割れた円柱が2本聳え立ち、私を迎え入れている。

『人間が最後に行き着く場所へようこそ』と書いてある。

この建物は…。


今は西暦2100年。30年前から建築技術が急発展したことにより、未来都市のような建築物が至る所に建てられた。ありえないくらいのLEDで煌めいているビル、AIにより全自動が進んだ飲食店など。昔の小説の言葉を引用すると、サイバーパンクのような世界が広がっていた。

しかし、10年前から戦争が起こってしまった。理由はこの建築技術の急発展にある。この急発展の礎となっているのが半導体産業である。この半導体産業が革命を起こし、ありとあらゆる全てのものを半導体で賄えるとんでもない発明をしてしまった。半導体があるから光量がすごいビルもできた、半導体があるから全自動で何もかもやってくれるAIもできた。

それで仕事を失った人が多かったが、半導体による収入があまりに大きかったため、政府は国民全員に金を定期的に配布し、経済がストップしないような国作りに励んだ。

でも、政府が間違ってしまったことがある。それは、半導体産業を世界で独占しようとしたことだ。我が国が潤ったのは、半導体を購入する国が我が国以外の全ての国だっただめ、輸出が大量に増え円高の傾向になった。

これに不満を持った国が半導体技術を教えてもらおうと我が国に度々やってきたのだが、我が国はそれを高圧的な態度で追い返してしまった。我々に怖いものなどない。この半導体さえあれば例え兵器を投入されても無傷で過ごすことができる。そう思っていたのだが…。

ある日、半導体技術を使って作った兵器が我が国を襲ったのだ。いつ襲われてもいいように、半導体を使ったバリアを張っていたのだが、半導体を使った兵器を使われると予想していなかったため、そのバリアも呆気なく突破された。

なぜ他国が半導体技術を使えたのか。答えは簡単だ。裏切り者がいたからだ。10年前に突発的に起こった襲撃のせいで誰が裏切ったのかなどは全く分かっていない。裏切り者を探すより反撃体制を取ること、国民を守ることが優先なのだ。

我が国は最初に突発されたバリアを半導体技術を持った兵器に対応できるよう組み替えたのだが、他国はそれを凌駕する攻撃力を手に入れていた。我が国の半導体技術こそが最高峰のものだと思っていたが、情報が流出したことより他国の天才たちが回路を組み換え、我が国の半導体技術をも上回る技術を手に入れていた。

そしてあの襲撃から10年経った今、我が国はもう終わりを迎えていた。LEDがついているビルどころか、豆電球を灯すこともできなくなるほど、我が国はもう死んでいた。

そんな状況の中、私は1人で暗闇を歩いていた。そして発見したのがこの建物なのだ。


希望も何もかも無くした人間はどこまでも向かう。『人間が最後に行き着く場所へようこそ』なんて書かれた看板がある建物など入りたくもないが、この際それすらも楽しんで死んで行くのもありだと感じた。

大きな扉を開けると同時に、扉が軋むうるさい音、洋館内に溜まっていた埃が私を襲った。咳をしながら中へ入ると、そこには絵が壁全体に飾ってあった。

1つ1つはかなり小さいが、丁寧に額縁に飾ってある。

描いてあったものは、人間の顔の絵。かなり特徴を捉えていて、まるで写真で撮ったかのような絵だった。

私はこの絵の正体をなんとなく感じ取った。人間が最後に行き着く場所と書いてあったから、もうその最期すらも終えた人たちの絵なんだと。


私はそもそも独り身だった。親をそうそうに無くし、親戚に預かってもらっていたが、関係をうまく築くことができずさっさと家を出て1人暮らしを30年程していた。

しかし、友達は多かった。友達と朝まで飲み明かしたり、中身の無い会話をしたりするのが唯一の楽しみだった。

そんなことを回想しながら私は絵を見回った。絵の中の人は全員無表情でこちらを見ている。いや、無表情に見えるだけで心の中では泣いているかもしれないし叫んでいる人も多くいるだろう。

そんなことを思いながら見ていると、あの時一緒に朝まで飲み明かした友達の絵があった。相変わらず無表情な顔をしていたが、なんとなく、私を睨んでいるような気もした。私と一緒に飲むことが楽しくなかったのか?最期にお前の顔が見れて嬉しかったというのに、薄情な奴め。


私は階段を上がり、2階の絵も見ていた。やはり壁を埋め尽くすほどの人間の顔の絵が飾ってある。

しかし、1つだけ違う点があるとしたら、ロビーに大きな像が建ってあった。顔を見るとそれはどう見ても私の顔だった。しかも笑っている?なぜ私は絵ではないのか。もしかしたら私の絵もあるかもしれないが、こんな多くの絵から見つけ出すことは簡単ではない。

私の顔の特徴をうまく彫った像を中心に、絵が像を見ているような構造をしていた。

私が我が国の中心人物と言わんばかりに…。


私はかれこれ10日間、飲食をしていない。していないのにずっと歩き続きていたから意識が朦朧となっている。そろそろお迎えが来そうだ。

最期に私の人生を振り返ろうか。もしも両親が長生きしているようなら、人生に絶望もせずにしっかり生きていけたのだろうか。親戚と良好な関係を築けていたら安泰な人生を歩めていたのだろうか。友達とはうまくやれていた気がしていたけど、あいつのあの顔を見たら私の思い違いだったのだろうか。

そんなifもう考えても仕方ない。でも、ifのような走馬灯しかでてこないな。私はこの人生で何をしたっけ。そうだ、これだけは清算しておこうと思っていたんだ。


「国民の皆さん、裏切ってしまってすみませんでした」



……ここはこの世の果ての美術館。人間が死んでいく表情を記録して絵として飾っている。戦争に負けて死んだ国の民など誰も笑顔になるはずが無いだろう。

でも例外もいる。それは像になった人間。全部で3体あるが全員笑っている。そして共通点として、とんでもない謀反を起こした人間が像になっている。

この3人は本当にすごいことをしてくれたなぁ。

1人目は明智光秀。織田信成を殺した本能寺の変で有名だね。2人は小早川秀秋。関ヶ原の戦いで西軍から東軍に寝返り、そのまま西軍の頭の石田三成を敗北させたことで有名だね。

3人目は滝沢雄之助。日本が生み出した半導体産業を海外に漏洩させ、日本を滅ぼしたことで有名だね。


滝沢さんが1番いい笑顔してるね!

僕は半導体について知識がありません。

元々サイバーパンクのような世界観が好きだったので、それに繋がるものとして半導体を選びました。

半導体に関する知識を深めたら、いずれもっと詳しいものを書こうと思っています。


最後の語り手は神的存在が喋っていると思って下さい。SA○で言うところの茅○晶彦のような認識で大丈夫です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ