第八十四話 無駄なあがきなんて無い
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コールバの海
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さて、コールバの海に着いたな。前回コールババームを採取した時には結構奥の方にも行ったと思うから気をつけて進まないとな。それに夜だからモンスターの急襲にも気を付けないとね。……お、これは楽になったな。
クロードはMAPの表示がやや変わっていることに気がついた。今回はコールババームの納品タスクでこの場所を訪れているのでMAPに採取ポイントが表示されているのだ。確認出来る採取ポイントは5ヵ所あり、全て回ればタスク達成に大きく前進しそうである。
……この道から外れている2ヵ所はどうやって行けば良いんだ? 少なくともラマーレでこの場所の採取は難しいと思うんだけど。
クロードが言っている2ヵ所とはMAPのメインの通り道ではない、外れた場所に固まって表示されている2ヵ所の採取ポイントのことである。コールバの海で陸戦用E・L・Kに乗り換えるようなところは知らないため現状クロードが向かえる採取ポイントは残る3ヵ所と言うことになる。
3ヵ所にしろ5ヵ所にしろコールババームが採取出来るなら何でも良いや。今回気にしなくちゃいけないのは体感どれくらいの割合でコールババームを採取出来るか。それが一番大事な事だよ。さて、まずは1ヵ所目だな。
クロードは最も近い採取ポイントに到着していた。採取ポイントからは1〜2個のアイテムが入手可能である。そして内訳はコールババームと湿った丸太である。
運が良ければ一度の採取で複数のコールババームが採取出来るが、逆に運が悪ければ今回のタスクには関係ない湿った丸太がいくつも手に入る可能性もある。クロードは少し祈りながら採取に取りかかった。
《湿った丸太×2を手に入れた》
違うな。……まだ採取出来るな。
《コールババーム×1を手に入れた》
お、採取出来たな。この場所では1個確保出来たか。まあ手に入らないよりはよっぽど良いんだが、タスクの期限のことを思うともっとすぐに複数手に入れたいものだね。それじゃあ次の採取ポイントに向かおうか。
……お、あったあった。これが2ヵ所目の採取ポイントだな。今度はもっと手に入ってくれよ?
《コールババーム×1を手に入れた》
……終わりか。前回採取した時は全く意識せずに採取していたからなぁ。まさか期限付きタスクでこんなに必要になるなんて思わなかったし。もっと頻繁に採取しておくんだったよ。
……さて、それじゃあキングインクに会いに行きますか。
残ったコールババームが採取出来るポイントは3ヵ所。そのうち2ヵ所は行き方が分からないので断念するにしても3ヵ所目には行っておきたい。しかしそこに行くにはキングインクの生息域を通過する必要があるのである。
いつかは倒さねばならぬ敵とは言え、なるべく遭遇したく無いのが本音である。そもそも吹っ飛ばし攻撃によって吹っ飛ばされるのはその強烈な攻撃を避けた後に生じる副産物である。今まで1回も直撃はされていないため直撃した場合どうなるのかクロードにはさっぱり分からない。
それ故に速度が遅いラマーレを操縦して必ず回避しなければいけないのでは無いかという怖さを乗り越えなければならないのだ。クロードはひとつ深呼吸をして覚悟を決めるとキングインクの生息域へと舵を切った。
……やっぱり出て来たなキングインク。夜にこいつに遭遇すると一層おっかなく思えてくるぜ。
現れたキングインクはクロードを正面にして最早見慣れた動きを始めた。振りかぶって放たれるその吹っ飛ばし攻撃をなんとか回避してその後の波に乗りクロードはコールバの海の奥へと進んで行ったのである。
……ふぅ、なんとか今回も回避出来たな。毎回遭遇しては吹っ飛ばし攻撃を回避して奥へと進んでいる訳だが今のところキングインクを倒すって言う想像は欠片も出来ないな。回避すれば吹っ飛ばされるだろうし、……もしかして直撃を食らうのが正解だったりするのか?
だったら嫌だなぁ……。被弾前提の立ち回りは危険すぎるんだよね。そりゃラマーレは一番装甲が厚いから立ち回りとしては正解なのかもしれないけど、どれくらい装甲が削られたか把握する方法は無いんだから知らない間に撃墜になりそうですっごい怖いんだよな。……お、採取ポイント発見。
《コールババーム×1を手に入れた》
良し、良いぞ。……まだ採取出来るな。
《コールババーム×1を手に入れた》
お、2個目だ。運が良かったね。……さて、と。ここからどうしようかな。
運良くコールババームが複数手に入ったと言うのにクロードはどこか浮かない顔である。浮かない顔をしている理由は簡単なことであった。
普段タスクから帰還する時はタスク完了のウィンドウから帰還するのである。しかし今のクロードは完了させたタスクを持っていない。そのためスタラジア帝国へ帰還するにはコールバの海へ入ってきた入り口まで戻る必要がある。
……つまりキングインクの生息域近くをもう一度通る必要があるのだ。クロードが浮かない顔をしているのはこれが理由である。
……前回試みたけど無駄だったんだよなぁ。まああがけるだけあがくか。何かあるかもしれないしね。
クロードはキングインクに気付かれ無いよう器用にラマーレを操縦して崖のギリギリを進んでいた。
前回は普通に気付かれてしまったけれどももっとギリギリを進めば案外なんとかなるのではないか。そんな思いでクロードは出来る限りギリギリ進むことに努めた。そしてあることに気が付いたのである。
……ん? なんだかここだけ妙に水流が強くないか?
読んでくださりありがとうございます。
クロードの気づきは正しいです。コールバの海には何ヵ所かこのような場所があります。さてどうして水流が強くなっているんでしょうかね。




