第七十八話 回収はお早めに
……俺別に何にもこいつに攻撃してないよな? と言う事は近くに行ったから勝手に寄ってきた感じだろう。全く面倒だな。
目の前にいる大きなヒレをのぞかせているモンスターはヒレのみが外に出ている状態なので全容はさっぱり分からない。体力が低ければ良いが、どれほど低くても手負いのバイトシエルを下回ることは無いだろう。そう判断したクロードは先にバイトシエルを倒してから相手をしようとバイトシエルに接近して行った。
俺の体感が正しければもうすぐバイトシエルは倒せるはず。謎のこいつに邪魔される前にカタをつけたいところだ。……お、倒せたな。ドロップアイテムの回収は後だ。さて、あいつはどこに行った?
バイトシエルを無事に倒したクロードは先程のモンスターの姿を探し始めた。しかしすぐにはその姿は見当たらなかった。通常なら逃げたことも考えられるのだが生息圏に近づいただけで襲いかかって来るような好戦的な性格を考えるとそれは無さそうである。
とは言え見当たらないのなら何もやりようは無いのである。タスクの討伐対象でも無い故にMAPに表示もされないためクロードはそのモンスターを中々探し出せなかった。居場所に気付いたのはかなりの近距離に接近され攻撃を受けてからである。操縦席の後ろから攻撃された衝撃がクロードを襲った。
うぉ! ……後ろだな。ラマーレの視界からして後ろに回られると流石に厳しいな。速度がちょっと不安だが、旋回しないとまた攻撃を食らってしまうや。
なるべく小さな円を描きながら旋回したクロードの目の前にはゆっくりとこちらに方向転換をする先程見たモンスターの姿があった。しかし未だその姿はヒレのみである。
……これもしかしてヒレしか見えないとか無いよな? 全体が飛び出してくれないとちょっと的が小さいよな。……攻撃すれば飛び出すのか? とりあえずはダメージを与えない事には始まらないぞ。
クロードは接近してくる小さな的を狙ってハンドルを回し続けた。接近しているヒレが2、3回ほど静止したタイミングがあったことからダメージは入っていると判断出来る。しかし手ごたえに関してはあまり無いのであった。
……やばいな。手ごたえがあんまり無い。この分だとかなり長期戦になりそうだが、速度が高めのモンスター相手に長期戦は中々厳しいぞ。今のところ攻撃が当たれば静止するみたいだから追いつかれそうでは無いが。……スキルを使うか。
クロードは程良い距離を取りながら【ヒートチャージ】のスイッチを押し込んだ。相手はこちらに向かって直線的に迫って来る。従って直線上に炎熱攻撃を仕掛ける【ヒートチャージ】は相性が良いのである。
放たれた火の玉が迫って来るヒレに直撃するとかなりのダメージになったからであろうか。水面から飛び出して来たのである。それによってクロードは今まで相手をしていたモンスターの全体を知った。
……こいつは、機械なのかモンスターなのかどっちだ? だがこのサイズのE・L・Kは見た事が無いぞ?
飛び出して来たのはサメに似た金属質の見た目のモンスターである。このモンスターは名前をアサルトシャークと言い、海中に落ちている金属ゴミごと獲物を食らい続けた結果自身の体が金属質になったモンスターである。
変わった特徴を数多く持つがその中でも異質であると言えるのは通常攻撃によるダメージをほとんどカットしてしまうものである。クロードが手ごたえを感じなかったのはそれ故だ。
しかしそれはあくまでもデータ上の話であり、対峙しているクロードには知る由も無いのである。従ってクロードはあまり効かないと分かっていたならば絶対にしないであろう通常射撃を撃ち続けていたのである。
飛び出して来て的が大きくなったもののリロードもあり接近を通常射撃のみで凌ぐのは難しい。じりじりと接近を許したクロードはこうして遭遇してから3回目となる手痛い突進攻撃を食らったのであった。
……これ何回目のリロードだ? さすがに硬すぎやしませんかね。 ……飛び出して来たのは【ヒートチャージ】を撃った時だっけ? とりあえずもう1回撃つか。……お? 倒れたか?
通常攻撃をほぼ受けないだけでスキルでのダメージはカットされずそのままであるためスキルを使えばかなり脆い部類のモンスターである。当然2発目の【ヒートチャージ】に耐えられるほどの体力では無いためにアサルトシャークは光となって消え去ったのである。
……ふぅ、難敵だったよ。さすがにラマーレは装甲が高めだからルピウスに警告されるほどはダメージを食らっていないけど、衝撃としては中々のものだったもんな。ドロップアイテムを確認しようか。
《鋭利な背ビレを手に入れた》
ドロップアイテムは1種類か。……ちなみに複数あったりしないよね? もし複数あるならタスクの目的に絡むとちょっと厄介だよな。……あれ? そう言えばバイトシエルのドロップアイテムはどこだ?
読んでくださりありがとうございます。
ドロップアイテムの回収は早めにしないとこういう事態を招きます。まあ、これでもう同じミスはしなくなりますね。……多分。




