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第六十九話 ……女の声?


 クロードはそう言うとスイッチを押し込んだ。砲撃はそう何度も続け様に撃てるものではない。従って砲撃以外の攻撃手段が無い場合はどうにかして相手の攻撃を避けなければならない。


 だが、至近距離で【エクスプロージョン】が発動するまでの2秒間で回避するのは不可能。精々全弾当たらないようにするので精一杯である。


 ……ふぅ、全弾当たったな。なら撃墜出来るのも時間の問題だな。どうやら砲撃以外の攻撃手段は無さそうだけど、不意打ちが怖いからね。それにこっちは遠距離攻撃なんだから距離を取った方が戦いやすいんだよね。


 クロードは【エクスプロージョン】を全弾当て、相手を消耗させてからは一転して、距離を取っての通常射撃に切り替えた。相手も砲撃による遠距離攻撃を狙って来ているがそれを全て回避出来ないクロードでは無い。自慢の砲撃は最初の騙し討ちを含め全て回避され通常射撃で消耗が続いた下っ端の男はたまらず一気に距離を詰めた。


 しかしその判断はもう遅いのである。既に先程の【エクスプロージョン】の発動から1分弱が経過しているのだ。距離を詰めようと前に進んだ男はメテオライフルが赤いオーラを纏ったことを視認して最早回避を諦めたのである。


 2度目となる【エクスプロージョン】をやはり2度目となる全弾受けたクワガタ型のその機体は爆ぜ操縦席が転がり落ちた。つまりは撃墜したと言う訳である。


「……こいつはやべえくらいに強え。こうしちゃいられねぇ! すぐに報告しに行くぞ!」


 撃墜した下っ端は2人とも奥の空間へと走っていったのである。恐らく報告しに行くのは彼らの上司にであろう。アンドロを救出するためには奥へ行く必要があるクロードにとって下っ端がこうして報告しに行くことはどうだって良い事なのである。


 ……夜のエリーダ高原にこんな場所があったとはな。何度か来ているはずだが知らない場所だよ。


 クロードはE・L・Kがギリギリ1体通れるほどの細い道を進んでいた。周囲の景色からするとどこかの壁を掘り進めて出来た地形のようである。もしネミリアの傭兵たちが掘り進めていたとすれば罠の類を警戒しなければならないなと気を引き締めたが特に罠が仕掛けられてはいなかった。やがてクロードは広めの空間に出た。


「……あんたか、アタシの部下をかわいがってくれたってのはよ」


 ……どこから声が? それに……


「……女の声?」


 声のした方角に目を凝らすとゆっくりと大きな何かが近づいて来るようである。近づくにつれてその全貌が徐々に明らかになっていく。夜だから見えづらかったのもあるだろう、こんな姿ならば致し方あるまい。姿を現したのは真っ黒い鎧に身を包んだE・L・Kだったからである。


「……女だから何か変わるのか? 帝国の騎士の考えはよく分からないな」


「勝手にさっきの奴らの上司は男だと思い込んでいたからね。その点については謝るよ。……さて、仲間を返してもらおうか」


「……ふん、せっかく帝国の騎士を捕まえたんだ。返せと言われて返しますとはいかないね。……ただ、あんたも仲間とやらがいるかどうかくらいは知りたいか。それぐらいは教えてやろう!」


 そう言うと武器として持っていたロングソードを下の地面に突きつけた。何かの合図なのだろうか、突然奥の壁に灯りが灯った。


 そのおかげでこの広い空間に何があるのか目で確認する事が出来るようになった。クロードが奥の空間に目を凝らすと騎士の格好をした人が倒れているのが分かった。しかしここからではそれがアンドロであることまでは確認出来なかった。


「……さっさと確認しな」


「……」


「……? どうしてさっさと確認しに行かない? ……あぁ、そうか。騙し討ちなんて言うつまらんものを警戒しているのか。これで安心か?」


 そう言うと女はロングソードを左横の壁に投げ捨てた。先程の下っ端同様騙し討ちを狙っていると思っていたクロードはやや拍子抜けである。隠した武器があるのかもしれないがクロードは女の言う事を信じることにしたのである。


 ……いったい何を考えているのか分からんが確認しに行って良いって事だからな。ありがたく確認させてもらおうか。…………なるほど、確かにこの倒れている人物はアンドロに間違い無い。……だが、なぜアンドロがこんな場所に?


 倒れている人物がアンドロであることを確認したクロードは救出するためにさらにアンドロに近づいた。この広い空間の真ん中を過ぎたその瞬間全く動く素振りすら見せなかった女は先程投げ捨てた武器のところへ駆けた。それを察知したクロードは振り返った。そしてある事に気が付いたのである。


「……これは誘い込まれたのか?」


「なんだ、ようやく気付いたか。でももう遅い、あんたはここから逃げられはしない」


「……なるほど、逃がさないように誘い込まれた訳ね。……一応聞いておきたいんだが、こいつはいったい何をしてこんな目に遭っているんだ?」


「……別に何も? アタシがただ戦いが好きなだけさ。……そいつからは大して強さを感じられなかった。帝国の騎士なんてのはそんなものかと思っていたが。……ふふ、あんたは期待しても良さそうだ。……ネミリア王国、傭兵部隊が幹部ハイブリジ。いざ参る!」


 読んでくださりありがとうございます。

 下っ端たちが言っていた上司と言うのはどうやら女の人だったようです。何者かは分かりませんが操縦している機体からしてただものでは無さそうです。

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