第六十七話 アンドロを救出せよ
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エリーダ高原
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さて、夜のエリーダ高原だな。とりあえず、難敵はエルダートレントくらいだからあいつに遭わないようにすればアンドロ救出まで無駄に消耗しないで済むな。
……ところで、今が夜のエリーダ高原って事はアンドロが訪れたのは日中、日が落ちる前。だからエルダートレントに撃墜させられた訳では無い。……だったら何のモンスターにやられたんだろう?
搭乗していたのがヴァッシュにノーマルバレットだとしても撃墜される程追い込まれるようなモンスターはあんまり浮かばないんだよな。無謀にも奥底まで突っ込んだならまだ分かるんだけど、ランクCのタスクでそこまで奥にいく必要は無いからね。
クロードがアンドロのことを考えながらエリーダ高原を注意深く進んで行くと少し進んだ先に明かりがあるのが目に入った。その明かりに対して最初は何とも思わなかった。モンスターが餌を狩るために光に擬態することもあるだろう。そんな事ぐらいにクロードは考えていた。
アンドロ救出のため無用な戦闘は避けよう。……そう思ってその場を離れようとしたその瞬間、クロードはある事に気が付いたのである。クロードが見つけた明かりは生き物による物ではなく、発光する物質によるものであることに気が付いたのだ。つまり分かりやすく言えばその明かりはE・L・Kのヘッドライトであると言う事だ。
……あの光。……恐らくヘッドライトだな。一見すると大きな岩が光っているようにも見えるが、あの明かりがヘッドライトとするならあれはE・L・Kに違いない。そして大きな岩のように見えるE・L・Kを俺は知っている。
俺の予測が合っているならこれは擬態したカエル型のE・L・Kだ。そしてそれはすなわちネミリアの傭兵って事になる。もしかしてアンドロが撃墜されたのはこいつにか? ……ならちょっと詳しく話を聞かないといけないな。
充分に近づいたクロードは違和感しかないその大きな岩に擬態したE・L・K目掛けて【エクスプロージョン】を発動させた。
メテオライフルは赤いオーラを纏うと凄まじい炸裂音が辺りに響いたのである。炸裂音に驚いたかのようにそれは横に大きく跳ねたがそれで回避が間に合うほど【エクスプロージョン】は甘くはない。数発が機体に当たり金属との接触音が虚しく響いた。
「驚いた、完璧な擬態を見破られたのは今日で2度目だ。まったく今日はアンラッキーな日だぜ」
やっぱりネミリアの傭兵か。……どこが完璧な擬態なんだ? 完璧な擬態を名乗るならせめてヘッドライトは消しておこうぜ? ……ちょっと待って、こいつ今2度目って言ったか? やはりアンドロはこいつに撃墜されたのか?
「……2度目と言ったな。つまり日中にも見破られたと?」
「ふん、帝国の騎士様たちには俺の擬態なんてお見通しってことかよ。やっぱり今日はアンラッキーだったと言えるな。だが下っ端とは言えネミリアの傭兵の一員。帝国の騎士に後れを取る訳にはいかねぇなぁ!」
下っ端はそう叫んだかと思うとカエル型E・L・Kの口が開き大砲が姿を現した。クロードの見立て通り擬態していたのはカエル型E・L・Kであり、相手はネミリアの傭兵であった。本来なら好き好んで相手するような相手では無い。
しかし今回は別である。ましてや本人が帝国の騎士に会ったと言っているのだから詳しく話を聞かねばならない。クロードは相手の弱点である大砲の銃身に狙いを定めた。相手の速度はそこまで早くはないため狙いを定めるのはそう難しくは無い。相手の攻撃を避けながら2発程クロードの攻撃は相手の銃口へと吸い込まれていった。
「……中々痛いじゃねぇか。戦闘中にも関わらず狙い澄ましたその攻撃……。その機体は知らねえが操縦しているお前は知っているぞ。最近俺たちネミリアの傭兵を何人か倒しているクロードとか言う騎士じゃないか?」
……へぇ、俺の事を知っているのか。有名になっているのは嬉しいけど、ネミリアの傭兵の間で有名になってもそんなに嬉しくは無いかな。……さて、今までの経験からそろそろ撃墜出来るんじゃないかな?
クロードの狙い澄ました一撃が相手の銃口に吸い込まれていった。戦闘開始から数えて3発目である。相当ダメージを負っているのが銃口から黒煙を吐いていることからもよく分かる。
「……このままだと本日2度目の撃墜になっちまうな。さすがにあのお方の前で2度も撃墜される訳にはいかねぇ。……ふふ、俺は確かに今日アンラッキーだがよ、お前も相当アンラッキーだぜ?」
クロードには目の前の下っ端が何を言いたいのか分からなかった。しかし撃墜間近で撤退させる訳にはいかない。メテオライフルを構えて相手の銃口を狙ったその瞬間上空から何かが降ってきたのである。
「……またお前は負けそうになっているのか。全く世話が焼ける」
「帝国の騎士ごときに2度も負けるなんて知られたら相当怒られるかもね。まあ、黙っておいてやるよ」
読んでくださりありがとうございます。
どうやらネミリアの傭兵が絡んでくるようです。一体何が目的なんでしょうか?




