第六十六話 早急に救出したまえ
「……騒々しいな。何があった」
「報告であります。……タスクへ出られたアンドロ四等騎士より救難信号が先程門衛に届きました」
……救難信号? 響きはかなりやばそうだけど、……アンドロはどうなったんだ?
「……なるほど、分かった。すぐに手配しよう。報告ご苦労様、下がりたまえ」
レオにそう言われて報告に来た男は静かに教官室を出て行ったのである。後にはレオとクロードだけが残された。
「……あの、救難信号とは何でしょうか?」
「救難信号は、タスク中に撃墜されてしまった場合、撃墜直前に搭乗E・L・Kから出されるものだ。分かりやすく言えば現在アンドロは撃墜されている……と言う訳だ」
レオは淡々と冷静にクロードに説明した。それだけにアンドロが現在撃墜されているという事実がかなりやばい状況であるのでは無いかとクロードには思われたのである。
「……つまりそれはかなりやばい状態って事では無いんでしょうか?」
「いや、それほどマズイ状況では無い。対人トラブルで撃墜されたなら問題だが、モンスターに撃墜されたのならより腕の立つ者が回収しに行けば良いだけの話だ」
……なるほど、確かにそれもそうかもしれないな。誰かが撃墜された時のためのシステムが無い訳無いもんな。……今まで撃墜された事は無かったから撃墜された時のことを一つも知らないんだよね。裏側はこうなっていたんだな。
今まで知る事が無かった撃墜された後の事を知ってクロードは感慨深い思いをしていた。そんなクロードを見たレオは机の上に置いてある紙を一つ掴むとその内容を見下ろしていた。なぜだか少しばかりその表情は硬くなっていた。
「……だが、それほど時間をかけていられないのも事実だ。次の日になってから回収していてアンドロの身が100%安全とは言い難いからな。今すぐに出発出来る階級が同格以上の騎士が回収に向かう事になる。……そこでクロード、君が行かないか?」
おぉ⁈ アンドロの回収に俺が行くのか? ……まあ、見知った仲ではあるし階級も同格以上だから大丈夫だな。タスク帰りではあるけど消耗は無いに等しかったし、行く事に関して問題は一つも無いな。
「……俺で良ければ。行かせてください」
「よし。それならクロード、君にアンドロの回収を任せよう。先程言ったように時間にあまり余裕は無い。当日限りのタスクとなるから注意したまえ。その関係でこのタスクが申請されている間他のタスクの進行も出来ない事も把握しておいてくれ」
……なるほど、他のタスクの進行は出来ないんだな。まあそれはそうだろうな。もしかすると危険な目に遭ってるかもしれないのに悠長に納品とかしている暇はあるはずが無いよね。
「そしてタスクを辞退したい場合はいつでもタスク一覧から破棄してくれて構わない。その場合はこちらがなんとか対処する故に無理はするな。……ここからは単なる私の予想でしか無いが、アンドロが受注したタスク自体はそう難しいものでは無い。撃墜されたと言う事はすなわち何かしらのトラブルに巻き込まれたと言う可能性もある。……充分注意してくれたまえ」
最後に怖い事を言われたな。……まあ、どっちにしたって早く救出しなくちゃならないのは変わらないからね。すぐに格納庫へ戻って出発しようか。
――
格納庫
――
さて、格納庫に戻って来たぞ。出発する前にタスクの詳細を確認しておかないとね。
――
タスク一覧
目には目を牙には牙を
ランク:B
場所:コールバの海
目的:真珠の尖牙×2〜4の納品
依頼者:苛立つ漁師
レアなドロップアイテムが興味深いらしい、納品してくれ。
ランク:B
場所:カシオ平原
目的:ヤンマのお頭×2の納品
依頼者:虫好きな研究員
早急に救出したまえ
ランク:B
場所:エリーダ高原
目的:アンドロの救出
依頼者:レオ教官
条件:当日限り
――
新しく増えたタスクは下の2つだな。虫好きな研究員のタスクはスペシャルタスクの方だな。これは後で達成させるんだが、……納品される物自体はもう手持ちにあるな。楽なタスクで助かったよ。真珠の尖牙と同時に納品を済ませようかな。
そして、問題は一番下のタスクだな。場所はエリーダ高原、アンドロがどこで撃墜されて、今どこにいるのかってのは分からないんだな。まあ、これはエリーダ高原に行けばMAPに表示されるだろうから気にしないでおこうか。
……ランクBか、教官が最後に言っていた予想が気になるところだけど、迷っている暇は無いね、すぐに出発しないとな。
急いでルブール改に乗り込もうとしているクロードを見て慌ててルピウスが駆け寄って来た。ルピウスが何を言おうとしているかは分かっているためクロードはそれに気にも止めない。
「クロード! どこに行くつもりだ? ……急ぎの用事じゃないなら明日にした方が良い」
「いや、急ぎの用事だから今出るんだ。……アンドロから救難信号が出たようだ」
「救難信号……⁈ それにアンドロって言ったら確か君の幼馴染じゃないか」
クロードのその言葉でルピウスは事情を察したようだ。あれこれ説明するのが面倒だと思っていたがすぐに納得してくれるなら助かる。……そう思いながらクロードはルブール改に乗り込み発進準備を整えた。
「……クロードも撃墜されないよう気をつけるんだよ。僕もアンドロを救出するために全力でサポートするから」
……てっきり止められると思っていたんだが、……全力でサポートしてくれるとはね。まったくルピウスは頼りになる助手だよ。そんなルピウスが全力でサポートしてくれるんだ、救出出来ない訳が無いね。……それじゃあ出発するとしようか。いざ、……夜のエリーダ高原へ。
読んでくださりありがとうございます。
ルピウスは頼もしいですね。アンドロ救出への力強い味方です。それではいざ行かん。……夜のエリーダ高原へ。




