第四十四話 陸戦用と海戦用?
「三等騎士ともなると対人戦闘の機会も増えることはもちろん、重要なタスクを任されることも少なくなくなる。いわばそれだけ重要な階級に昇格すると言う事だからな。実際に私のこの目でもその実力を見ておきたいのだよ」
なるほど、確かにタスクの報告だけで実力を全て測ることは出来ないよね。タスクを達成していたとしても割とギリギリで達成しているかもしれないことを教官は心配しているんだろう。……まあ俺はそれほど苦労したタスクは今まで無かったから大丈夫そうだね。
「まあ、君はタスクをして来て帰還した直後だ。無理に今日戦闘訓練を行うことは強制しないさ。整備や操縦のための操作の確認など準備することはかなりあるだろう。戦闘訓練自体はいつでも始められる故に準備が出来たら私に声をかけて来なさい」
どうやら今すぐに始める訳では無さそうである。クロードの都合で開始するかどうかを決められるのだから休息を取って万全の態勢で戦闘訓練に臨むのが一番無難である。こういう時に、もう今すぐ戦闘訓練を始めても大丈夫と言えば戦闘訓練は始まるのだろうか? と少しクロードには好奇心が湧いた。
しかし、レオに声をかけてからやっぱり休息を取るという選択が出来るのか分からない事、パディンの斬撃攻撃でただでさえ低めのヴァッシュの装甲が消耗している事の2点を思い出したクロードは湧いてしまった好奇心を抑え込んで教官室を出て格納庫へ戻ったのであった。
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格納庫
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……さて、戦闘訓練自体は休息を取ってステータスを万全にしてからなんだけど、そのための準備はしておこうか。新しく手に入ったエリュトロの性能も気になるしね。それじゃあサブの格納庫から呼び出すとしますかね。
クロードがエリュトロを呼び出すと目の前のE・L・Kがヴァッシュからエリュトロへと切り替わった。今までのE・L・Kと比較するとかなり低重心で重厚感漂う見た目をしており、赤く染まったその機体は今までのE・L・Kとは変わった路線でのかっこよさを演出していた。またクロードは赤も似合うが、この機体の見た目なら黒く輝いているならばなおさらかっこいいのではないかとも感じていた。
「ルピウス、新しく手に入ったエリュトロが装備出来ない武器パーツはどの系統なんだい?」
「エリュトロなら(剣)、(銃)以外は装備可能だよ」
……うわぁ、銃系統が装備出来ないのか。こういう見た目で射撃系の武器パーツを操っていると似合うと思ったんだけどなぁ。まあ装備出来ないのなら仕方ないね。それに銃系統は無理でも弓系統が装備出来るってことだからそっち方面で装備は考えるとしようか。……ん? (剣)と(銃)以外なら装備出来るって事はこれも装備出来るのか?
「ルピウス、これを装備させてくれるか?」
これというのは最近手に入った武器パーツであるギガントキャノンの事である。先程のルピウスの言葉を踏まえればギガントキャノンの後ろには(砲)と書いてあるため(剣)でも(銃)でも無い。それならばこの見たことの無い系統の武器パーツも装備出来るのではとクロードは思ったのだ。
「任せ……、あぁごめんよ。この武器パーツは装備出来ないんだよ」
「あれ? (剣)でも(銃)でもないよ?」
装備不可能な武器パーツでは無いと思ったがルピウスに装備させるのを断られてしまったのである。クロードはなぜか分からなかった。何しろこの武器パーツがどの設計図から手に入ったものかを覚えていないからである。
「ギガントキャノンは設計図(海)から手に入ったでしょう? 砲系統の武器パーツは海戦用のE・L・K専用だよ」
……そう言えば普通の設計図(海)ってのから手に入ったんだったっけ。……海戦用?
「海戦用のE・L・Kってどういう意味だ?」
「そのままの意味だよ。E・L・Kには戦闘に合わせて3種に大別出来る。今まで使ってきたのは陸戦用のknight、それの他に海戦用のshipに、空戦用のairがあるよ。そしてそれぞれに対応した武器パーツの系統が存在するのさ」
「……つまり、砲系統はその俺が今持っていない海戦用のE・L・Kにしか装備させられないって事だな」
「そう言うことだよ。だからギガントキャノンは海戦用E・L・Kが手に入ったら装備させると良いよ」
なるほどね、海戦用E・L・Kか。それじゃあギガントキャノンを装備させるのはお預けだな。……(砲)って事は大砲をイメージしているんだけど、この目の前のエリュトロにすごく似合いそうなんだけどなぁ。まあ装備出来ないのは仕方ないか。
「それじゃあトレントアローを装備させてくれるか?」
「任せて! ……うん、これで装備出来たよ」
目の前にはトレントアローを装備したエリュトロが現れた。トレントアローはエルダートレントを倒したことで手に入る武器パーツであり、武器パーツにもエルダートレントの面影を少し感じるようになっている。そしてエルダートレントの生命力故であろうか、弓を持つ左手部分にはツルのようなものが巻きついていた。
読んでくださりありがとうございます。
E・L・Kは大きく分けて三種類あります。クロードは今までその一種である陸戦用の機体を使っていただけに過ぎません。まあ一番種類が多いのが陸戦用ではありますが。




