第四十二話 気の進まない報告
ピクトはラッケルのその声に軽く手を挙げて応じていた。クロードも何かリアクションをした方が良いかと思ったがひとまずパーツの珠を見つけるのが先だと、手持ちの陸のパーツの珠を2個取り出したところでようやく顔を上げた。しかしその時には既にラッケルは立ち去った後であった。
「あら? ……まあ、良いか。これをお願いします!」
「パーツの珠が2つだな。……ほれ、【ラピッドキャノン】、【エイミング】じゃ。大事にしろよ」
【エイミング】? また知らないスキルが手に入ったな。言葉的には狙い撃ち的な感じなのかな? まあ、これも後で性能を確認しようか。
パーツの珠を渡した後のクロードには鍛冶屋への用は何も無い。ラッケルがしていたように何かピクトに言ってから出ようと思ったが特に何を言うかは浮かばなかった。仕方なくいつものように軽く挨拶をしてからクロードは鍛冶屋を出たのであった。
――
格納庫
――
さて、格納庫へ戻って来たぞ。報告の前に忘れてしまいそうだから手に入った武器パーツとスキルの性能を確認しておくか。
――
武器パーツ
グランドシェイカー(槌)拡張スロット:なし
攻撃 +30 速度 −20
アイアンアロー(弓)拡張スロット:なし
攻撃 +10 速度 −10
ギガントキャノン(砲)拡張スロット:1
攻撃 +10 装甲 +100
――
おぉ、見たことの無い武器種が2つだな。あ、そう言えば1つは普通の設計図(海)から手に入ったものだったな。(槌)と(砲)どっちがそうなのか分からないけどどっちにしたって早く使ってみたいことには変わりがないな。
アイアンアローは弓をそれ以上に持って無いなら使いたいんだけど、拡張スロットも無いし装備ボーナスもトレントアローより劣っているからね。使うならトレントアローの方になるな。それじゃあ次は【エイミング】の方だな。
――
エイミング
一定時間の長い溜めの後、狙った対象に放たれる追尾する300%の銃撃攻撃
――
……ほう、こちらは色々と気になる事が書いてあるな。追尾する銃撃か、それじゃあ撃ち落とされない限りは絶対に当てられるってことだな。攻撃倍率も【エクスプロージョン】と同じだから強いスキルであることは間違い無さそうだな。
問題は意味深につけられている長い溜めってところだな。【エクスプロージョン】の溜めが約2秒で、これよりは長いとして戦闘で実際使うなら……、5秒以内であって欲しいな。スキルが発動している間は動けないから戦闘中にそれ以上の隙を作りたくは無いんだよね。
さて、それじゃあ教官室へタスクの報告に行きますか。……気は進まないけどね。
「クロード! ちょっと待ってくれ」
タスクの報告をするために格納庫を出ようとしたクロードだったがルピウスに突然止められたのである。クロードが何かルピウスに聞くことはあってもルピウスがこうして止めて来ることはあまり無いので不思議そうにクロードはルピウスの方を見やった。
「今からタスクの報告に行くんだろう? なら僕も一緒に行くよ。パディンに逃げられたのは僕がサポートを怠ったせいでもあるからね。それに1人で行くよりは心強いだろう?」
なるほど、ルピウスはタスクの報告について来てくれるつもりのようだ。確かにクロードは教官室へ行くことに気乗りしていなかったがルピウスもいるとなると少し心が楽になった気がして来たのである。もっともそれはつまりレオに怒られることも確定させてしまっているので気分も落ちているのだが。
――
教官室
――
クロードとルピウスはノックをしてから教官室へと入った。クロードが入って来る事は予想していたのかレオは何も表情を変えなかったのだが、後ろからさらにルピウスまで出て来たので少し困惑したのだろう。片眉だけ少しだけ上がっていた。
「……タスクの報告だな、クロード」
「はい、そうです」
「……確かにタスクは達成している。これはタスク達成の報……」
「その件ですが、教官。報告しなければならない事があるのです」
流れるようにタスク達成の確認をしてレオは報酬を渡そうとしていたがそれを途中で制止したのである。もちろんこのタイミングなのは理由がある。話を途中で切るのは失礼にあたるが、タスク中起こったことを伝える前に報酬をもらう訳にはいかないのだ。現にもう少し後にクロードも制止するつもりであった。
「……報告があるのか。それではまずそれを聞くとしよう」
隣で深呼吸が聞こえた気がした。穏やかでありながら鋭いレオの視線を感じながらゆっくりと意を決したかのようにルピウスが口を開いたのである。
「……タスクの目的はカリーニャの丘におけるごろつきの制圧でした。タスクが達成されていると言うことはカリーニャの丘にはごろつきがいなくなったと言うことになります」
「それはタスクが完了されているのだからタスクをしていない私にも分かる。報告とはそれでは無いだろう。……続けなさい」
読んでくださりありがとうございます。
気は進みませんが報告はしなければなりません。こうした時やや誤魔化した報告をしたくなる気持ちは分かりますが正直に全て報告してしまった方が後々のためになります。耳が痛い話ではありますがね。




