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第四十話 制圧完了……?


 振り下ろされたトライソードはヴァッシュの装甲に多大な影響をもたらした。もう一度食らえば危うく、もう二度食らえば確実に撃墜されるだけのダメージが入ったのである。それだけのダメージを食らいながらもクロードは銃口をパディンに向け続けることだけに集中していたのだ。


 もう一度トライソードを振りかぶったそのタイミングはクロードが黒く輝くスイッチを押し込んでからちょうど2秒後になる。凄まじい炸裂音と共に【エクスプロージョン】が発動し、パディンは一直線上の壁まで吹っ飛んで行った。


 【エクスプロージョン】の全弾直撃はクロードが今出せる全力の攻撃であり、相当な勢いで吹っ飛んで行ったのでダメージはかなり与えた事が分かる。が、同時に撃墜出来ていないためまだ攻撃の必要がある事もまた確かである。


 スキルを多用し、近接攻撃もこなすパディンを相手に持久戦は不利である。であればこちらの射撃を外す訳には行かない。クロードはふぅと息を吐いて落ち着かせると確実に射撃が当たる無防備なタイミング、パディンが倒れてから起き上がろうと体勢を整えているその瞬間を狙って射撃を放った。


「……ふぅ、ようやく撃墜か。長かったぜ」


「すごいよクロード! これでここにいるごろつきは全て撃墜出来た事になるよ」


 見事にパディンを撃墜したクロードへ興奮の混じったルピウスの賞賛が聞こえて来た。しかしパディンとの戦闘が始まってから何一つ声を聞かなかったことはクロードにとってはやや不満である。


「何だかルピウスの声を久しぶりに聞いた気がするなぁ。何で黙っていたんだい? 俺は勝手に助言とか貰えると思っていたんだがよ」


「ごめんよ、君が負けてしまうんじゃ無いかと思っちゃってさ」


 どうやらルピウスはクロードがパディンに撃墜されてしまうと思い込み助言どころでは無かったようである。クロードとしては自分が負けると思われた事が心外であるためルピウスに文句を言おうとしたがさらにルピウスは続けて口を開いたのだ。


「クロード、目の前にいるさっきまで戦っていた相手の名前覚えているかい?」


「……? 我が名はパディンって戦闘前に自分で言っていただろう?」


「そう、あいつの名前はパディン。クロードは知らないかもしれないけど、ネミリア王国の傭兵部隊には3人の幹部がいてね。そのうちの1人はスキルホルダーと恐れられたパディンって名前の奴なんだよ」


 ルピウスのその言葉を聞き先程まで戦っていたパディンの方へ視線を向けた。撃墜され操縦席のみとなったE・L・Kからちょうどパディンが降りて来ていた。敵対国家の幹部と知った今こいつをみすみす逃すことは許されない。クロードは逃げ道を塞ぐためにパディンにじりじりと迫った。


「あんた名前をパディンって言ったな! つまりあんたはネミリア王国傭兵部隊が幹部の1人。……違うかい?」


 ホログラム越しにパディンにも聞こえる大きな声でルピウスは叫んだ。パディンにもそれが聞こえたのだろう、パディンもまたこちらに聞こえるように叫び返したのだ。


「あぁ、そうさ。俺は確かにネミリア傭兵部隊幹部のパディン、まさか帝国の騎士に遅れを取るとは思わなかったぜ」


「……随分と余裕そうだが状況はこちらが優先だよ。あんたらのE・L・Kは全て撃墜したんだ。今から状況をひっくり返すことは出来ない。……悪いけどスタラジア帝国まで連行させてもらうよ」


 ルピウスはパディンをスタラジア帝国に連行するつもりのようだ。そこでクロードは以前ネミリアの傭兵と戦った時のことを思い出していた。特に難しいことはしていない。ただタスクを完了させた時と同じ要領で帝国へ帰るだけである。


 その時と同じやり方で良いかなとクロードは前に進むためにペダルを踏み込んだ。その時追い込まれているはずのパディンが高笑いを始めたのだ。


「……何がおかしい」


「戦闘の時と声が違うってことは今声を出しているのはスタラジア帝国の助手ってところか。読みは鋭いが半分は外れだ」


 ……半分は外れ? どういう意味だ?


 クロードがそう思った瞬間、どこに隠れていたのだろうか2体のE・L・Kが出口方面からやって来たのだ。カブトムシとクワガタに似たそれぞれの機体はクロードにとって初めて見るE・L・Kである。見た事のある機体ならばまだしも2体ともクロードが見た事の無いE・L・Kの登場に戸惑いを隠せなかった。


「お前らぁ! 俺が逃げるまでの間ちょっと相手をしてやれ。そう時間はかからない、お前らも頃合いを見て逃げるんだな」


「待て! 逃す訳にはいかない!」


「おっと、よそ見をしている暇はあるのかい? 随分と舐められたものだよ」


 最も良い成果は新しく現れたこの2体のE・L・Kを最短で撃墜させパディンの逃走を阻む事であった。しかし仮にもここはパディンが拠点としていた場所である。当然逃走経路が確保されていないはずが無い。


 E・L・Kに気を取られている間にいつの間にかパディンの姿は消えており、戦っているE・L・Kもパディンが逃走出来た事を通信か何かで知ったのだろう。蜘蛛の子を散らすように出口へ逃げて行ったのである。


 読んでくださりありがとうございます。

 何とかパディンを撃墜することが出来ました。どうやらパディンはネミリア王国傭兵部隊の幹部だったようです。そんな彼がカリーニャの丘で一体何をしていたのでしょうか? 逃がしてしまったため謎は深まるばかりです。

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