第三十七話 パディンの根城
もし強引に突破しようとした場合罠にかかり電流が流れてしまう。その電流がどれくらいなものでどこまでE・L・Kに影響を与えるかは不明だが、もしE・L・Kが故障し動かなくなった上でどこかのカメラによって察知したごろつきたちが集まって来ればこちらにはなす術が無いだろう。
よってクロードがごろつきを退治するためには設置された柵に従って奥に進む以外の方法が無いと言う訳である。奥にどれだけの数のどんな敵が潜んでいるのか分からない上で進むのは少しばかり覚悟がいる事であった。
「タスクを引き受けた以上何もしないで帰るのはダメだな。どんな敵が待っているか知らんが進むとしますかね」
思っている事を口に出す必要は無い。進むだけの覚悟を決めるために、半ば自分に言い聞かせるように自分を鼓舞してクロードは柵に従って奥へと進んで行ったのであった。
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パディンの根城
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「ようこそ俺たちの根城へ。あんたは俺たちの味方か敵かどっちなんだい?」
やや入り組んで複雑に設置された柵に従って奥へと進んだクロードの視界に飛び込んで来たのは二体のE・L・Kであった。ごろつきがE・L・Kを所持していることは知っていたが数までは把握していない。ここへ来て初めての戦闘が二対一になる事を少し気にしたクロードだがそれ以上に気になることがあった。
「……なぁ、ルピウス。確かネミリアは動物をデフォルメした機体が多いんだっけ?」
「……そう、だね」
クロードの目の前で戦闘を仕掛けようとしているE・L・Kはどう見てもカマキリやカエルに似ていた。カマキリの方は知らないがカエルの方には見覚えがある。つまりこのごろつきはネミリアに関係している可能性が高いのである。
「……答えはまだかい? 俺たち気は長い方じゃ無いんだ。答えるのはさっさとしてもらおうか!」
「それに答える前に、……君たちはネミリアの傭兵なのか? その機体はネミリアのものなんじゃないのか?」
「こっちの質問に答えないのにどうして俺たちがあんたの質問に答えなきゃいけねぇの? ……まあ気になるってんなら教えてやるよ。この機体は俺たちのボスであるパディン様が華麗なる操縦でネミリアから強奪したものだ。だから俺たちはネミリアの傭兵じゃねぇ」
男の高笑いがそこら一面に広がった。クロードとしてはむしろネミリアの傭兵であった方が良かったのかもしれない。彼らの言葉が本当であるならボスであるパディンの実力は少なく見積もってもネミリアの傭兵よりも高い。そして目的はごろつきの制圧であり、1人を撃墜して帰れば良い訳では無い。パディンもまた撃墜する必要があるのだ。
「……あぁ、そしてだ。さっきの質問で俺たちの質問に答える必要は無くなった。俺たちを見てネミリアと結びつけるのならあんたは当然ネミリアの者じゃあ無い。……となるとスタラジア帝国か。……クク、正面から帝国の騎士サマがのこのこやって来るとは思わなかったな。パディン様の手を煩わせるまでも無い、俺たちで充分だ。……さて、帝国の騎士サマには泣いてお帰り頂こうか!」
……やっぱり2人を相手にするんだな。この感じだと結構な連戦になるんじゃない? ならこのごろつきの強さが分からないけどなるべく無傷で倒しておきたいね。あっちはまだ回避しやすいから後回しで良いだろう。まずはこっちのカマキリからだ。
クロードは以前戦ったことのあるカエル型ではなく、カマキリ型のE・L・Kをまずは狙うようだ。カエル型の射線に入らないよう注意しながらメテオライフルでカマキリ型を狙ってレバーを引き下げた。直撃したが怯む事なくこちらへ近づこうと歩みを進めて来た。
カエル型が遠距離の射撃型E・L・Kなのに対して、カマキリ型は完全なる近距離の斬撃型E・L・Kなのである。こちらはメテオライフルを装備したヴァッシュであり、タイプとしては遠距離の射撃型。そのためカエル型の射撃を食らわない事とリロード中にカマキリ型に距離を詰められ無い事に注意すれば少なくともカマキリ型は無傷で撃墜可能なのである。
3発目の通常射撃を直撃させたところでカマキリ型の機体が限界を迎え撃墜となった。もちろんクロードは無傷である。そしてカエル型の弱点はどこなのかをクロードはもう知っているのだ。時々発射される射撃を避けながら的確に狙い澄ました射撃がカエル型の銃口に吸い込まれ計2発の射撃でこちらも撃墜となったのである。
「……強すぎる! こうしちゃいけねぇ、パディン様にすぐ報告だ!」
操縦席のみとなった男2人は一目散に奥へと逃げて行った。2人を追いかけても良いのだがどうせ最終的に1番奥まで行くのである。それに奥にどんな罠が仕掛けられているのか分からないのだ。今急いで追いかける必要は無い。そうクロードは結論づけゆっくり慎重に奥へ奥へと進んで行った。
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クロードは最初の戦闘を無傷で突破しました。まあこの後戦う人とのことを考えるとこれくらいはやってもらわないと困ります。




