第二十二話 お手柄だよ
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教官室
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撃墜したネミリアの傭兵を門衛に引き渡したクロードは報告のためにレオの元へ訪れていた。もちろんルピウスも一緒にである。部屋の中では相変わらずレオが厳しい顔をしながら座っていた。そんなレオに構わず階級昇格のためのタスク中に起こった出来事をルピウスが詳細に説明を始めた。
「討伐対象であるロックファルコンを発見しましたがそれと同時にクロードが不審な大岩を発見しました。そこでその大岩を調べたところそれがE・L・Kが擬態していたものと言うのに加えてネミリアの傭兵であることが判明し、交戦となりましたがクロードが見事に傭兵を撃墜しました。タスクを続行しても良かったのですが、タスクを続ける事よりもこの事態を伝達する事の方が重要と考えタスクを一旦中断して報告に戻って参りました」
「うむ、報告大変ご苦労だった。既に大まかなところは門衛から伝達されている。そして君たちの報告とその後の調査で詳細は明らかになっていく事だろう」
「あの……、ネミリアの傭兵がなぜエリーダ高原にいたんでしょうか? そもそも彼らは一体?」
「ネミリア王国はここスタラジア帝国からエリーダ高原を越えさらにその先のコールバの海を越えたところにある王国だ。スタラジア帝国からすると敵対関係に当たる国でね。そしてネミリアの傭兵は王国直轄の我々騎士団と同じ立ち位置の戦闘部隊なんだよ」
なるほど、要するに敵だな。それは分かったんだがなんでそのネミリアの傭兵はエリーダ高原にいたんだ? 奴は確か知られるわけにはいかないって言っていたような……
「ネミリアがどういう目的で傭兵を潜入させていたかはまだ分からない。もちろん詳細が明らかになれば君たちにも伝達がされるだろう。……クロード!」
「はい!」
ネミリアの傭兵について説明していたレオが突然クロードを呼ぶとクロードの方に顔を向けた。突然のことにやや驚いたクロードだったが威勢よく返事を返した。するとレオは厳しそうな表情のまま口を開いた。
「……お手柄だ。カードキーを私に渡してもらえるかな?」
「? ……どうぞ」
クロードにはレオが何をしようとしているのか分からずややぎこちなくカードキーをレオに手渡した。元の位置に戻ろうと振り返るとルピウスが直立不動の体勢で敬礼をしていた。
ますます意味が分からないクロードであったが以前ルピウスにならって敬礼をした時上手くいった事を思い出しクロードもそれにならって敬礼をしたのである。カードキーを受け取り何やら作業をしようとしていたレオは2人の敬礼に気付き苦笑いを浮かべていた。
「……少し気が早いな。まあ良い。突然の交戦であったとは言えネミリアの傭兵を撃墜するのはかなりの腕前である証拠だろう。ロックファルコンを討伐していなくとも四等騎士に相応しいのは明白である」
ここまで言ってレオは言葉を一度止めると苦笑いではなくにこりとした笑顔を浮かべてクロードから受け取ったカードキーに何やら操作をするとカードキーに情報の編集が行われ表示されている階級が五等騎士から四等騎士へ変更されたのである。
「……よって二等騎士レオの名においてクロードの四等騎士昇格タスクの完了を認める。これからは四等騎士として一層タスクに励むが良い」
《四等騎士に昇格した!》
《ヴァッシュが使えるようになった》
おぉ! タスクを達成した事になって四等騎士に昇格したぞ。これによってヴァッシュが使えるようになったんだな。……表示からするとヴァッシュは多分E・L・Kなんだろうけど、一体どんなE・L・Kなんだろうか。
ウィンドウの表示を見ながらクロードは少し困惑していた。レオには何に困惑しているのか分かったのだろう。四等騎士と新しく表示されているクロードのカードキーを手渡すと続けて口を開いた。
「四等騎士になった者には全員新型のE・L・Kであるヴァッシュを進呈している。ヴァッシュは射撃に秀でたE・L・Kだ。銃系統や弓系統の武器パーツを装備させるとかなりの活躍をしてくれるだろう。強力な武器パーツがあれば是非装備させると良い。……説明は以上だ。さて、どのタスクを申請するんだ?」
なるほど、射撃が得意なE・L・Kなんだな。射撃って言うと今ならノーマルバレットしか持ってないや。……あ! そう言えば設計図をピクトさんに預けてあるんだったな。そこでいい射撃武器パーツが手に入ったらすぐにヴァッシュに装備させようか。それじゃあすぐ達成出来そうなタスクを中心に選んでここで申請して、鍛冶屋に行こうかな。……お、タスクが結構増えているな。
当たり前だが階級が四等騎士に昇格した事により受けられるタスクの最高ランクがCまで上げられている。従ってホログラムに表示されるタスクの量もまた増えているのである。
読んでくださりありがとうございます。
という事でクロードは四等騎士に昇格することが出来ました。この調子でどんどん階級を上げていきたいものです。




