第二十一話 ネミリアの傭兵
「……いかにも俺はネミリアの傭兵だ。と言っても下っ端の下っ端だがな。俺がここで何をしているのかスタラジアに知られる訳にはいかねぇんだな。悪いがスクラップになってもらおうか!」
そう叫び声が聞こえたかと思うとカエルの口の筒が光った。いち早く危険を察知したクロードが射線から外れると次の瞬間砲撃が轟音と共に発射されたのである。クロードとしてはロックファルコンの討伐に邪魔なモンスターを先に片付けようとしていただけである。まさかE・L・K同士の戦闘が始まるとは予想もしていない。
しかし始まってしまった以上、みすみすやられる訳にはいかない。クロードは覚悟を決めてレバーのスイッチを押し込んだ。
バン! バン! バン!
慣れた手つきでテンポ良くノーマルバレットを打ち続けていたのだがどうも手応えがあまり感じられない。装甲が厚いのか放った弾丸が当たっても固い金属音が虚しく響くだけでまるで相手にダメージは無さそうであった。
代わりに向こうから遅い撃ち込まれる砲撃はペースこそ遅いものの当たればかなりのダメージをもらうだろうと言うほどの音を響かせていた。
砲撃に当たる訳にはいかないが回避するにも限界はある。直撃こそ免れたものの着弾時の爆風を多少食らってしまっているのだ。こちらの射撃のダメージが多少なりとも入っているのであれば時間をかければ倒せなくもないが、ごくわずかしか入っていないのであれば回避に失敗して砲撃をもらってしまうか爆風によって装甲を削られ切ってしまうだろう。戦闘開始から数えて4回目のリロードを終え次の射撃に移ろうとしているクロードは相手の弱点はどこか考えていた。
1セット目は特にどこを狙う訳でもなくただ相手に目掛けて射撃をしたのだ。当然その弾丸は当たれども大したダメージにはなって無さそうであった。
2セット目はカエルで言うところの目の部分を狙ったのである。2発ほど外れてしまったが4発相手の目に命中した。しかし壊れることはなくむしろ弾き返されているようであった。
3セット目には相手の腹の部分なのだろうか、金属ではなさそうな白い色合いの部分を狙ったのである。しかし見た目とは裏腹にそこも固い部分なのだろうかやはり弾丸は弾き返されたのだ。
……どこも大したダメージじゃあ無さそうだ。となると残るはあそこしかないな。砲撃を回避しながらあそこを狙い続けるのは難しいが、そこが弱点なら狙うしかない!
放たれた砲撃を確実に回避するとクロードは口から出ている筒の内部目掛けて射撃を開始したのだ。最初の1発こそ外してしまったが2発目が見事に筒の中に吸い込まれた。体感でしか無いがクロードは明らかに相手の動きが遅くなったような気がした。
狙いすまして放った3発目の弾丸が筒に吸い込まれて行くのと相手の砲撃の準備が整ったのか筒が光るのがほぼ同時であった。
轟音が聞こえたが砲撃は発射されず、代わりに黒い煙が筒から立ち昇ってきたのである。恐らく砲撃の弾が筒から発射される途中で爆ぜてしまったのであろう。つまりは自分で砲撃を食らってしまったと言う訳である。
「やったか? ……いや敵はまだE・L・Kのままだ。確か教官が言うには撃墜した時は操縦席のみになってしまうはずだ。まだ動かないのならスキルをぶち込むチャンスだ!」
黒煙を発しながらまだ動かない敵の筒の中に狙いすましてクロードは左上の黄色く光るスイッチを押した。少し長いため時間の後にエレキチャージが発射された。
直前になってようやく体勢を整えたがそれで間に合うはずも無い。エレキチャージが筒に直撃。黒煙が全身に広がったかと思うと爆発音と共にカエル型のE・L・Kが爆ぜ丸見えのコックピットが中から転げ落ちたのである。
「すごいよクロード! ネミリアの傭兵に勝ったぜ」
「……ふぅ、これが撃墜なのか?」
「そうだよ。こうなればE・L・Kは全く機能しない。そのまま放置しても多分モンスターの餌食になるだけ。……だけど、どうしてネミリアの傭兵がこんなところにいたのか知った方が良さそうだ。捕虜として帝国に送還しようか。それにブランシアがさっきの戦闘で大分傷ついて消耗しちゃってるし丁度良かったね」
捕まえて帝国に送還? やり方が分からないんだけどどうすれば良いんだ?
どういう行動をするのかは分かったがそれをするための方法がクロードには分からなかった。とりあえず近づけば良いかなとクロードはペダルを踏み込んだ。
そして充分に近づいたその時、タスクを完了し帝国へ戻る時と同じ光が操縦席だけになったネミリアの傭兵とブランシアの両方を包み込んだ。なるほど、一旦タスクを中断しスタラジア帝国に戻るようである。
読んでくださりありがとうございます。
見事クロードはネミリアの傭兵との戦いに勝つことが出来ました。彼が搭乗していたE・L・Kはカエルをモチーフにした砲撃が得意なE・L・Kです。ネミリアの傭兵たちの多くは動物をモチーフにしたE・L・Kに搭乗しているようです。恐らくこれからも幾度となく戦っていくことになるでしょう。




