第百四十六話 七色のオーラ
クロードの体感はかなり正確である。チャージ系のスキルは短いながらため時間があり、発動時間も短いながら持続するのだ。そのため矢継ぎ早にスキルを発動させたとしてもスキルを撃ち終わる頃には最初に撃ったスキルのクールタイムが終わっているのである。
分かりやすく言えば3種類のチャージ系のスキルを扱うシュガは3種類のスキルを順番に発動し続けるだけで、ほぼ断続的にスキルを放つことが出来るのだ。その上シュガにはまだ他にもスキルがあり、無理矢理接近するのは得策では無い。
……だがこの戦法はもちろん無敵では無い。強力な分スキルを放ち続けることのデメリットもまた存在するのだ。そのことにクロードが気付いたのは3回目の【フロストチャージ】を回避した時である。
スキルを連続で発動して来るから近づくのがかなり難しい。……けどこれもしかして近づく必要が無いかもしれないな。連続して放たれるスキルは確かに強いんだけど、回避不可能って訳じゃ無い。むしろ一定のリズムで飛んで来るから回避が簡単まである。
それにスキルが発動している間って割と無防備なんだよな。これスキルを回避してから次撃たれる前に【ブレイドショット】を当てることって出来るのかな。……やってみるか。
次に繰り出された【ヒートチャージ】を最小限の動きで回避するとスキル発動中の隙を狙ってクロードは【ブレイドショット】を放った。さすがのシュガもスキルの発動中に攻撃されれば回避は出来ないらしい。斬り上げによって飛ばした斬撃は見事にエミリアーゼに直撃した。
お、【ブレイドショット】を当てることが出来て、……次の攻撃も回避が可能と。これはもしかすると攻撃チャンスなのかもしれないな。ちょっと続けてみるか。
ダメージを稼ぐ方法を思いついたクロードはそれからシュガのスキルを全て回避しつつ【ブレイドショット】の直撃を狙った。これにより最小限の消耗でシュガへのダメージを稼ぐことが可能になったのである。
だがこれで撃墜出来るほどシュガは甘くない。
「なるほど、これ以上の戦闘は不利だな。仕方ない、私のとっておきを食らうが良い。……【プリズムオーラ】!」
お、戦闘パターンが変わるな。【プリズムオーラ】ってどこかで聞いたことがあるような……。いや、気のせいだな。全く見たことないオーラを纏ってやがる。
これ以上同じ戦闘パターンでは不利だと考えたシュガはすぐさま戦闘パターンを大きく変えるようだ。【プリズムオーラ】を発動させたエミリアーゼは七色に輝くオーラを纏ったよのである。クロードが出方をうかがっているといきなりこちらに突撃を仕掛けて来た。
……! ……危なかった。【プリズムオーラ】は多分機体の速度を上げるスキルだな。絶対食らいたくないけど攻撃も上がっている可能性がある。速度に乗った攻撃が何度も叩き込まれれば装甲なんていくらあっても足りないぞ。
いち早く突撃を察知したクロードは全力でその突撃の回避を試みた。回避こそ上手くいったがこれはたまたま反応が良かっただけであり、普段なら確実に突撃による攻撃を食らっていただろう。
突撃の勢いで壁に激突したエミリアーゼは激突なんてしていないとばかりにこちらに振り返った。まだ七色のオーラは纏ったままである。ならば先程の突撃がまた来るに違いない。迎え撃つためにクロードは敢えて回避するのを諦めて速度を捨てた。【アルギュロス】の発動である。
クロードの予想通りシュガは再び突撃を仕掛けて来た。これをクロードは薙ぎ払いで迎え撃った。通常ならば突撃攻撃を薙ぎ払いで迎え撃った場合攻撃が低い方が弾かれるという結果となる。そしてこの場合迎え撃つ側は動かないため機体の速度は関係無い。
つまりシュガが仕掛けて来たとっておきの攻撃を、速度を抜きにした単純な攻撃性能による勝負にクロードは持ち込んだのだ。そしてその結果どちらも弾かれることは無かった。つまり単純な攻撃性能において両者は互角と言う訳だ。
……攻撃に関しては互角ってのが分かったね。どっちの攻撃も相殺されるとは思わなかったな。まあ、これで【アルギュロス】が発動している間は向こうの攻撃を食らわないで済むな。あの厄介な【プリズムオーラ】さえ効果が切れればこっちの流れが来るはず。
……って思ってたんだがな。
シュガが仕掛けて来た突撃をモロに食らってクロードは吹っ飛ばされた。その理由は簡単である。【アルギュロス】の効果が先に切れシュガの突撃を迎え撃てるだけの攻撃性能を失ったからである。こうなると迎え撃つどころではなくあっけなく吹っ飛ばされるのだ。
「ふむ、まだ立てそうだな。私のとっておきを食らってまだ撃墜しないとはね。……いや、むしろ迎え撃って来たことの方が衝撃だったかな。【プリズムオーラ】で攻撃を上げている状態で互角だったのは生まれて初めての経験だよ」
シュガのその言葉を聞きながらクロードはゆっくりと起き上がった。追撃が来ないことがクロードには不思議だったが、なるほどスキルの効果切れらしい。エミリアーゼは通常の状態に戻っていた。
「……思い出した。【プリズムオーラ】はパディンが使っていたあのスキルか!」
読んでくださりありがとうございます。
パターンがはっきりしている相手を対処するにはこちらもパターンを作ることが大事という訳ですね。シュガのとっておきである【プリズムオーラ】をクロードは【アルギュロス】で迎え撃とうとしていましたが効果時間の違いで吹っ飛ばされてしまいました。




