表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

143/150

第百四十二話 シュガの野望とは


 タスクの目的はシュガの発見及び撃墜だったよな。何で機体にすら乗ってないのか理解出来ないけど撃墜するなら今がチャンスだ。丸腰のシュガを狙うのはさすがに気が引けるから無人の機体を狙って攻撃を仕掛けよう。


「止めておけ。その攻撃は私には効かない」


 今にもクラウンレーザーの発射レバーを握りしめようとしていたクロードはその動きを止めた。シュガのその言葉は正直言って到底信じられるものでは無い。だがその言葉が嘘では無いとも思えるほどに静かな圧があったのだ。少し迷ったクロードは握りしめようとした手を下ろした。


「……ほう、敵の忠告を素直に聞けるんだな。血の気が多いだけのボンクラでは無いようだ。やはり素晴らしい。……クロードと言ったな、君は私と共に世界を支配する気は無いか? 君がいれば私の野望は間違いなく達成される」


「……は?」


 クロードにはシュガが何を言っているのかさっぱり分からなかった。クロードがオリオンの頂まで来た理由は他でもなくシュガの発見及び撃墜である。そのシュガがクロードに会うなり共に世界を支配しようと言って来たのだ。戸惑うのも無理は無い。だが当のシュガは不思議そうな顔をしていた。どうやら真面目に言っていたらしい。


「……ふむ、ただ素直なだけか? ……いや、違うな。そもそもまだ私の野望が何たるかを知らないのだろう。レオの奴が私の野望を最後まで理解したはずが無いからな。君に少し昔話をしてやろう。君があのふ抜けた帝国で騎士になるずっと前、私はそこで騎士になったのだ。話はそこから始まる」


 シュガはいたって真面目な表情である。こちらの攻撃は効かないと言ったがシュガからも攻撃をするつもりは無いようだ。自分を誘ってきた理由も分からないクロードはひとまずシュガの話を聞くことにしたのである。


「当時の騎士隊はおよそ騎士隊とは呼べない代物、ただE・L・Kが扱えるだけの駒でしかなかった。そこで私は騎士の地位向上のためにまず騎士隊の設備を整えた。操縦ではなく整備を専門とする助手の導入、騎士へ個別の格納庫の支給、タスクを円滑に進めるための地形調査。そのどれもがかつて帝国に無く、私が導入させたものだ」


 ……へぇ、シュガによって騎士隊に導入されたものはそれほどまでに多いのか。それじゃあシュガは言ってしまえば今のスタラジア帝国騎士隊の骨組みを作った人になるんだな。……今のところ目の前のこの人物が敵対国家に寝返るのが想像もつかないぞ。何があったんだ?


「……だが、騎士隊の地位はまったくと言っていいほど上がらなかった。結局のところ騎士はあくまでも皇帝の手駒に過ぎない。騎士の地位が皇帝より上に来ることは無いのだと知り私は絶望したのだよ」


 ……それはそうだろうな。騎士隊が皇帝より地位が上になる訳が無い。どう考えても当たり前のことだと思うけど、……それの何が絶望なんだろうか?


「やがて私はクーデターを起こそうとした。私が最強の騎士として皇帝となり騎士隊の地位を上げるためにね。だが結果的にクーデターを起こすことは出来なくなった。私の次に操縦が上手かった騎士がいち早く私がクーデターを起こそうとしていることに気付いたからだ。そしてそいつは私に向かって騎士としてあるまじき姿だと私を激しく非難した。そしてその時私は間違いに気が付いた。帝国で私の野望は叶えられないとね」


 ……ええと、その騎士ってのは多分レオ教官のことだな。確か前にそんな話をしていたはずだ。


しかし、話を聞けばこいつのことが少しは分かると思ったんだが、……さっぱり分からん。結局こいつは何がしたいんだ?


「そこで私は帝国を出ることにした。小さな国ではあったがネミリア王国を拠点とし、最強の騎士隊である傭兵部隊を作り上げた。……さて、君に問おう。この傭兵部隊、君ならどう止める?」


 いきなりの質問にクロードはやや戸惑った。だが答えは特に悩むようなものではない。E・L・Kを駆使する傭兵部隊を止めるには同じくE・L・Kを使えば良い。簡単な話だ。


「……E・L・Kに乗れば良い」


「フハハハハ……。素晴らしい、その通りだ。敵側の騎士隊が力を向上させれば同じく騎士隊で対抗するしかない。つまり騎士隊の地位向上が図られるのだよ。そうして私はただひたすら騎士隊の地位を向上させた。かつての私はクーデターを起こそうとしていた。帝国も警戒するだろう。こうして君がわざわざオリオンの頂まで空戦用E・L・Kに乗ってやって来たのは他でも無い私を止めるため、そうだろう? ならば私の野望が叶うまであと少しだ」


「……どう言う意味だ? 俺がE・L・Kに乗ってやって来るのとお前の野望に何の関係があるって言うんだ」


「私を止めるにはE・L・Kに頼るしかない。……違うかい?」


 シュガのその言葉は静かな圧を放っていた。クロードはシュガに何も言うことが出来ない。いや何も言うことが無いと言った方が正しい。シュガの言う通りシュガを止めるにはE・L・Kに頼るしか無いのだから。


「それこそが騎士隊の地位の向上によって私がもたらしたいものだよ。……さて、君はこの機械が何の機械なのか分かるかい? 知っているはずだ、何せ君は一度これの効果を体験しているはずだからね」



 読んでくださりありがとうございます。

 シュガの野望とはいったい何なんでしょうか? そして謎の機械の正体は何なのでしょうか? どうやらクロードは効果を知っているらしいのですが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ