第十三話 立派なツノを求めて
ブランシアが装備しているのはアイアンアックスであり、コックピットもノーマルブレイドのものとは少し変わっている。具体的に言えばスキルを発動させるためのスイッチが無く、十字の操作レバーではなくN字の操作レバーが鎮座されていた。
生えているキノコを食べている草食獣に狙いをつけクロードはレバーを思い切り下に動かした。ブランシアは右手を高々と掲げてアイアンアックスを振りかぶると地面に向かって大きく振り下ろした。……振り下ろされたアイアンアックスは僅かに尻尾をかすめただけでそれに驚いた草食獣は逃げ出そうとしていた。
「……あれ? 狙ったはずなのに全然違うところに振り下ろしちゃったな。斜め操作だとどうなる?」
逃げ出そうとする草食獣にすぐに追いつくと今度は斜め上にレバーを操作した。するとブランシアはアイアンアックスを両手で握りしめるとそのまま斜め上に振り抜いた。今度は狙い通り攻撃が当たったのである。アイアンアックスの攻撃力か元々この草食獣の設定体力が低いのか、草食獣は光を放ちながら消えてしまった。残ったままの光に近づくとウィンドウが表示されたのである。
《新鮮な生肉を手に入れた》
なるほど、討伐したモンスターのドロップアイテムはこうして手に入るんだな。前に手に入れたアイテムの中に腐った肉ってのがあったな。多分この新鮮な生肉とか言う奴が腐ったのがそれなんだろう。今討伐したモンスターが何か確認しておこうか。もしかするとこれもビックホーンなのかもしれないしね。図鑑のモンスターで表示されてるのは1体だけだな。ええと……。
――
スロウピグレット 危険度☆1
ドロップアイテム
新鮮な生肉
???
――
お、こんな感じで表示されるんだな。……スロウピグレットね覚えた覚えた。もう1個のドロップアイテムが気になるところだけどひとまず今回はビックホーンの討伐が先だな。この感じだとビックホーンも楽に倒せそうだし遭遇出来そうなところまで移動しますかね。
クロードはカシオ平原の4個目の橋を渡ってビックホーンを探し始めた。足がやたら速そうなダチョウのようなモンスターや大きなトンボのようなモンスターは見かけたがビックホーンらしきモンスターはすぐには見当たらなかった。無闇に戦闘をしかけて消耗する必要も無いのでクロードは気づかれないよう注意しながらさらに奥へと進んで行った。
「……全然いないじゃん。本当にこの辺でビックホーンに遭遇出来るの?」
「まあ警戒心が強いからね。そう頻繁に遭遇出来るモンスターじゃないから……お! いたんじゃない? あれがビックホーンだよ」
ルピウスの声のトーンが少し上がった。ルピウスが示す先に目を凝らしてみると確かに立派なツノを持ったモンスターがこちらに真っ直ぐ向いているのが見えた。立派なツノ、草食獣という情報から勝手にクロードは鹿のようなモンスターを想像していた。
「こいつは……サイ⁉︎」
クロードから敵意を感じ取ったビックホーンは鼻息荒くその立派なツノをこちらに向けて突進して来た。素早く反応したクロードは難なくその突進を回避した。ビックホーンは突進を途中で止めることなくそのまま近くの大きな木にぶつかった。これで突進が止まるかと思われたが結果は大きな木の方が破壊されたのである。
「すっごい威力……。あれは食らいたくないなぁ」
「この辺りの木がところどころ抉れているのはもちろんビックホーンが突進してしまうからだよ。突進に当たらないように気をつけてね」
マジかよ。そういえばところどころ抉れてるや。まあ動き自体は直線的だから回避はそんなに難しく無いぞ。
ビックホーンが再び突進を仕掛けようとしているので回避の準備を整えた。突進が始まったがすぐに正面から外れると通り過ぎるビックホーン目掛けてアイアンアックスを思い切り振り下ろした。直撃でこそ無いもののダメージは入っているだろう。実際ビックホーンの息がやや荒くなっているように感じられた。
「お、ビックホーンが怒ってるね。さっきより動きが速くなるから気をつけてね」
ルピウスの助言通り先程よりも速い突進がクロードを襲った。速くなることが分かっている突進なら対処はたやすい。先程同様正面から外れると今度は大きく斜め上にアイアンアックスを振り抜いた。突進中に横から衝撃を受けたビックホーンはその場で横転してしまった。
つまり攻撃のチャンスである。クロードは近づくとアイアンアックスを大きく振りかぶって振り下ろした。その攻撃でビックホーンの体力が尽きたのだろう。ビックホーンは光を放ちながら消え去った。ドロップアイテムを示す光は2つ輝いている。
《立派なツノを手に入れた》
《立派なツノを手に入れた》
読んでくださりありがとうございます。
ビックホーンのモチーフはサイだったようです。クロードの予想は見事に外れました。まあそれはともかくタスクが無事達成できそうで良かったですね。
(追記)間違って書いていた箇所を訂正しております、ご了承ください。




